『沖縄からの便り vol.11』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の風を皮切りとし、2018年から始めている「沖縄の建築士有志で省エネ基準や住宅の温熱環境についての勉強会」についてご紹介いただきました。

※「おきなわ省エネがわかる勉強会」

「冷房期の平均日射熱取得率をηACAC値についてひたすら手計算で学び、考えている地域は全国でも沖縄だけではないでしょうか。」

松田さんによれば、沖縄でも手計算で学ぶのは、この勉強会だけなのではないか、とのこと。

詳しい内容はこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.11

沖縄からの便りvol.11


皆さん、今年の夏いかがお過ごしでしょうか。

2019年 沖縄の夏の海

最近多発している台風の影響もあるのか、外の風を強く感じます。

先日試しに風速計で測ってみたところ、事務所のある建物の前で13.3メートルを記録しました。(2019/8/8)台風9号が近くを通り過ぎるときでした。

Wind Alertの測定画面

日陰には、温度が下がる上に、涼しい風を呼び込むことができる効果があるそうです。なければ強い日差しを浴びて一瞬で日焼けしますね。

観光客の方は、薄着や水着を着て夏の日差しを浴びて日焼けを楽しんでいますが、地元では男性も割と日焼け止めを塗ったり、白いタオルを巻いたりして熱や日差しから身を守っています。

この考えは、建物も同じかもしれません。

 

2018年から沖縄の建築士有志で省エネ基準や住宅の温熱環境についての勉強会を始めています。

冷房期の平均日射熱取得率をηACAC値についてひたすら手計算で学び、考えている地域は全国でも沖縄だけではないでしょうか。

(沖縄でも手計算で学ぶのは、この勉強会だけだと思います。)

※「おきなわ省エネがわかる勉強会」

庇はどのくらい出せば有効なのか。出せば出すほど有効なのか。

庇の直下に開口があるのと、垂れ壁があるのはどの程度差異があるのか。

この建物では、どの位置の開口部に設けたら一番効果が高いのか、実際の建物や各々が設計した住宅で検証していきます。

※この建物では、南向きの窓には垂れ壁なしで長さ1350mmを採用しました。

他にも断熱材は、どの種類でどの厚みが最適なのだろうか。

厚み30mm、種類は

効果だけでなく、シロアリや台風の影響の受けにくい構造など、敷地の条件から考えながら選択するなど想像力や新たな発想力も必要です。

さらに日射遮蔽をいかに安価で高い効果を発揮するものは、どの手法だろうか。
少々高くてもLLC(ライフサイクルコスト)を考えるとどうなるのだろうか。
疑問はどんどん出てきます。

8地域以外では、省エネ基準においてやはりUA値の基準の方が厳しく、ηAC値はUA値をクリアすれば容易にクリアできる状況だと思います。

UA値の基準がない8地域では適正なηAC値はどれくらいか、地域の建築士達の中でも、見直していく時期が来ていると思います。これまでNPOが蓄積してきた住環境の計測データも役に立ちそうです。

この勉強会でわかってきたことの一つは、

ηAC値クリアのためには、
・遮熱塗料や白く塗る必要はない。(効果を数値として算入できない。)
・軒は出す必要がない。(窓に当たる庇の効果は算入できるが、軒の効果の計算式がない。これは通常、壁に断熱材を充填するので軒の効果はそこまで見込めないが、壁に断熱材を使用しない8地域でこそ軒の日射遮蔽効果がある。)
・花ブロックや植栽は設置しても計算に反映しない。
ということです。

コストを上げずにただ単に効率的にηAC値を下げるには、県外から移入した木材で木造にし、窓を最小に壁体内に断熱材を充填することで簡単にクリアできます。
(もちろん、これらの木造に特に否定的な気持ちはありません。ひとつの解だとも思います。)

ただ、本当に基準値を満たすだけで沖縄らしい涼しい家ができるのでしょうか。

先人からの知見をもとに発展させてきた建築士の技術は一体何だったのだろうか。唯一、地産地消できるRC造を採用する意味はあるのでしょうか。

沖縄における気候風土に適した住宅づくりの取組み

ηAC値をクリアしたところで、アマハジに軒がなければ、風は入ってきません。そもそも通風経路となる窓がなければ、室内に通風を効果的に呼びこむことすらできません。

壁への日射遮蔽は、シロアリが大好きな断熱材を使用するのではなく、軒を出す、花ブロックを建てる、植栽をすることで行うのが、沖縄の気候風土を考えると正しい気がします。

※これまでの建てられた沖縄における環境共生住宅における外皮基準値

台風が来ても揺れにくい、津波が来ても流されない防災型のRC造をエコな住宅として評価していくという課題もあります。
現況との差異が大きいηAC値基準が設定される中(現在は3,2)沖縄での省エネ住宅をミスリードしていく危険性が否めない状況です。

現在、サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応住宅型)では、木造のみを評価していますが、RC造、混構造は、気候風土に適応していない構造なのでしょうか。
沖縄県は、これまでも優遇事業(低炭素住宅・長期優良住宅・ZEH)が、独特な気候な為、なかなか反映しにくい現況がありました。

北から始まった省エネ基準があるならば、南から始まる省エネ基準もあっていいという声が上がってきています。
灼熱の島だけに、8地域の省エネ基準をめぐる討論も熱いです。
(先日の国土交通省と沖縄建築関係団体との意見交換会では、開始前に団扇が配られました。笑)

2030年、2050年、と省エネをめぐる目標を目指しながら、沖縄らしい建築が途絶えることなく続くように地域の建築士として、学んできたこと感じてきたことを素直に伝え続けたいと思います。

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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編
・vol.11 2019年夏編

神戸からの便りvol.1『里山上津台の家』が届きました。


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田さんからの冬の便りが届きました。
今回ご紹介いただいたのは、豊田さんが設計された、神戸里山住宅博の街区に建つ「里山上津台の家」についてです。

「建築関係者は、神戸里山住宅博(以下、里山住宅博)という言葉を耳にした方も多いかと思います。工務店と職方が造る木の家をテーマに2016年6月に神戸市北区にグランドオープンしました。街区には建築協定と設計ルールが定められ、斜面の里山は住人の共有地になるという面白い試みです。」

続きはこちらからどうぞ
神戸からの便りvol.1『里山上津台の家』

LDKから中庭を見る。

神戸からの便りvol.1『里山上津台の家』


 

トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田と申します。2019年の冬の便りは、神戸里山住宅博の街区に建つ「里山上津台の家」を紹介いたします。

建築関係者は、神戸里山住宅博(以下、里山住宅博)という言葉を耳にした方も多いかと思います。工務店と職方が造る木の家をテーマに2016年6月に神戸市北区にグランドオープンしました。街区には建築協定と設計ルールが定められ、斜面の里山は住人の共有地になるという面白い試みです。

神戸里山住宅博の様子。正面に見えるのは堀部安嗣氏が設計したヴァンガードハウス。

私が設計した里山上津台の家の住まい手は、里山住宅博の街区に興味があり、里山住宅博オープン後に出展工務店さんを色々回られて、最終的に私の事務所に土壁の家を建ててほしいと依頼がありました。

LDKから中庭を見る。

この家の冬のテーマは、3つありました。
1、 共働きの家族のために不在時でもお陽さまを取り込めるようにする。
2、 エアコン一台で居室のみ暖房する。
3、 寝室の温湿度を安定させる。

断熱性能をQ値1.9w/m2K程度まで高めるのは当たり前として、今回特に重視したのは、住まい手の生活スタイルと生涯設計でした。

1、共働きの家族にあったお陽さまの取り込み方

この家が中庭型になっている主な要因は共働きの家族への配慮からです。共働きの場合、平日の日中は不在となるため、南面に窓を設けてもカーテン等で閉じている家族が大半ですが、中庭型にすると、不在時でもカーテン等を閉じなくてもよい状況をつくりだすことができます。中庭に面する和室の屋根は、日射を取り込むため切妻にし、LDKの窓は幅4m高さ2.7mの木製建具としました。中庭の入口は、木格子戸を設けたので不在時に中庭に入られる心配もありません。

平屋中庭型を上空から見る。

和室の屋根を折り曲げ、LDKへ日射を取り込む。

和室は、直射日光が入ると畳が不揃いに焼けてしまうので、採光と通風換気のために南面軒下に窓を設けました。中庭は、和室の北窓から眺めることができます。

和室は土に囲まれた空間。

滞在時間が少ない和室は、直射日光が入りにくいように設計したため、サンルームに取り込んだ熱を和室へ送ることができるように温度センサー付きの換気扇を設けました。サンルームの温度があがると、自動で和室へ熱が送られ、湿度が上がると、湿度センサー付きの換気扇で外部に排出します。住まい手は、就寝前に洗濯物を干す習慣があり、センサーを組み合わせた熱湿気移動を考慮しました。冬の使用感は、和室に入った時も暖かさを感じるようで、思いのほか好評。設計した私も少し驚きでした。

2、エアコン一台で居室のみ暖房する

里山住宅博では、いくつかの工務店さんがエアコン1台で暖冷房する方法を提案され実践されていました。床下エアコンもあれば、ダクトで配管する方法もありさまざまです。ただ、私が提案する土壁の家は、床下エアコンで基礎コンクリートに蓄熱したあと、さらに土壁で蓄熱させるのは、さすがに無理があるだろうと思い、LDKと寝室2室の中心にエアコンを設けそれぞれの部屋を区画暖房する方法を提案しました。結果として、平屋、かつ、LDKと寝室の配置計画がとてもうまくいったと思っています。
休日の日中は、寝室の戸を閉めてLDKのみ暖房し、就寝時は、寝室の戸を少しあけLDKの間仕切スクリーンをおろして暖房します。現在、スクリーンは、まだ未実装なので、今は、LDKの天井扇を使って、寝室へ熱を回しているようです。住まい手自身が考え、自分たちに適した住まい方を実践されていることがとても重要だと感じました。

天井に埋め込んだエアコン。右手の天井スリットは区画用スクリーン取り付け箇所。

3、寝室の温湿度を安定させる

仕事で疲れ、仕事着のままベッドに横たわりいつの間にか寝てしまったという経験は誰もがあることだと思います。起きたら、体が冷え切りぞくっとすることも。やはり人間は就寝しているときが、一番気をつけないといけない時間だと感じています。
共働きの場合、6時に起床し8時に出勤、19時に帰宅し24時に就寝する生活スタイルを踏まえると、LDK等の滞在時間は7時間で、寝室は6時間となり、寝室への配慮を行うのは妥当な判断だと思います。このことから、寝室には土壁を最優先で採用していただくよう提案しています。もちろん、土を塗っただけでは低温で室温が安定してしまう可能性があり、集熱と断熱と蓄熱を考慮して設計する必要があります。

寝室は、住まい手自ら土塗り。

里山上津台の家は、2018年3月に竣工してから、初めての冬を迎えました。冬を約一ヶ月間過ごしてみて、従前の生活から変化はあったのか、また、床暖房はあったほうがよかったか住まい手に聞いてみたところ、
「床暖房の必要性は感じません。伝熱性が低い無垢材では、素足でも冷たいと感じることは余りありません。あと、頭痛が激減しました。冬場に肌の乾燥による痒みが激減しました。」
との回答でした。

「もう一回家を建てるとすると、今ぐらいの断熱性能にするのか、それともさらに断熱性能をあげるのかどちらでしょうか」という質問には、
「今の断熱性能で十分だと思います」
との回答でした。

ほっと一安心するとともに、性能を明確にすることの大切さを知った住まいづくりでした。

玄関アプローチ

竣工後、8機のデータロガーで温湿度を測定中です。住まい手の感想とデータがどういった相関関係にあるのか調査分析していきたいと思います。

室温と共に、土壁と断熱材間の温湿度測定中。

*
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豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都造形芸術大学大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など左官職を生かした家づくりを行っている。

「南禅寺の家」では、(財)建築環境・省エネルギー機構主催「第5回サスティナブル住宅賞」において「国土交通大臣賞〔新築部門〕」の他、第9回木の建築賞 木の住宅賞、第7回地域住宅計画賞 地域住宅計画奨励賞も受賞している。

★同じ著者の他の記事を読む
京都からの便りvol.1『南禅寺の家 夏の便り』
京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
京都からの便りvol.4『南禅寺の家 冬の便り』
奈良からの便りvol.1『ならやまの家 夏の便り』
奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』
・神戸からの便りVol.1

里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』が届きました。


神奈川県藤野の里山長屋からいつもお便りを送ってくれている山田貴宏さんから、特別編として『陸前高田市 施設「ペチカ」』についてご紹介いただきました。

「秋の気配が深まってきた10月中旬、岩手県陸前高田市にある、「ペチカ」を訪問しました。2017年のはじめごろから当方で設計を担当し、その年の暮れに竣工を迎えた木造二階建ての建物です。(本文より)」

続きはこちらからどうぞ
里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』

ペチカ外観

 

里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』


秋の気配が深まってきた10月中旬、岩手県陸前高田市にある、「ペチカ」を訪問しました。2017年のはじめごろから当方で設計を担当し、その年の暮れに竣工を迎えた木造二階建ての建物です。

ペチカ外観

地元の建設会社さん(長谷川建設)の、住宅を想定したショールームとして整備し、かつ、町に開かれた拠点となるカフェとしても機能するようにしています。カフェに加えて、「まちライブラリー」の機能も備え、人々の交流拠点となっています。施設の技術的なご要望としては、環境配慮型の建物としてその技術をこれから住まいの建設を検討しているお客様にお見せするショールーム的な場所としたい、ということでした。が、環境に配慮した住環境、というのは何もハード技術だけで成立するものではありません。地域の中で、住人の方々がコミュニケーションを持ち、お互い有機的で健康的な結びつきを育むことも、エコロジカルな暮らしに通じるものだと考えています。

ペチカ内観/まちライブラリーとしての機能も併せ持つ

※関連リンク(外部サイト):ペチカ カフェ&ライブラリー
※関連リンク(外部サイト):まちライブラリー/場を作り、そこに皆が本を持ち寄ることで、本をきっかけとして人と人のつながりを生み出す仕組み。

昨今、高断熱高気密の議論ばかりが環境配慮型の建築の俎上に上がっています。それはそれで大変重要な基礎技術ですが、本来、環境とは、総体的なものであり、一つの技術だけに特化して成立するものではありません。環境技術はもちろんのことですが、暮らし方、地域の素材、地域の技術、職人さんなども環境建築を構成する大切な要素だと思います。環境に配慮した建築を作ることは、小さな循環の中で多様な地域資源を重層的に使うことが必要になります。そうだとすると、地域で建築を作ることは、地域の環境関係資本を結びつけるハブ役になることが期待されるわけです。このプロジェクトは、まだ、震災からの復興途上のまちで、これからのあるべき住環境と地域との関係を表現しよう、ということを目指しました。

さて、そうは言っても、そのベースとなる環境技術は、このショールームを訪問した方に、わかりやすくその技術を説明出来ることがまずは大事です。
この建物では、環境技術として、以下の要素の取組みを整えました。
・ダイレクトゲインによる太陽熱利用
・土間、壁、レンガ壁など、蓄熱容量を増やすことで安定的な室内温熱環境を形成
・輻射式冷暖房設備による穏やかな室内温熱環境制御
・夏の遮熱装置として外付けブラインド
・地元の素材による建築
・自然素材による内外装

ペチカ外観(夜間)/南側は積極的に日射を取り込めるように、ガラス面を多用している

敷地はそれほど大きなものではなく、約60坪。道路は北側に接道しているので、駐車場とのバランスで、最大限南側に空地をとるようにプランニングに配慮しました。南側隣地の建物の屋根の上を通り越して、冬場でも太陽のダイレクトゲインが得られるように、南側のファサードは積極的に日射を取り込めるように、ガラス面を多用しています。南側の空間は小さいながらも土間空間として、また、直接日射が当たる壁面も左官土を塗り、熱容量をかせぐようにしています。

直射日射が当たる壁面には左官土を塗ったり、タイルを貼り、熱容量をかせぐように工夫している

敷地が狭いゆえ、床面積を優先すると、庇が十分確保できないような状況もあり、この南側のガラスファサードには夏場対策として、日射が当たりやすい1階部分は全面的に外付けブラインドを設置しました。まだまだ廉価に導入できる仕掛けではありませんが、日射取得量が大きく違ってくるので、大変有効であると考えます。筆者は最近スイスに視察に行きましたが、かの地では、すでにほとんどの建物で外付けブラインが当たり前のように設置されています。数年前に訪れた北欧でもそうでした。断熱議論が盛んな日本ですが、これがひと段落すると今度は窓面の性能に話題は移るはずで、そうすると、断熱ブラインド、遮熱外付けブラインドにも改めて注目が集まることと思います。

夏の遮熱装置として外付けブラインドを設置した

今回は、エアコンに頼らない冷暖房を心がけました。夏は本来、比較的冷房時間が少なくても過ごせる気候環境ですので、輻射型の冷房は緩やかに室温を下げておける、体に負担間の少ない状況を作れる、ということで採用をしました。今回はPS冷暖房の設備を採用しています。1階の階段脇に空間の間仕切りを兼ねて1パネル、二階の吹き抜けと執務空間を緩やかに仕切る場所に1パネル設置。いずれも部屋の真ん中に設置することで、輻射が満遍なく周囲に行き届くような配置としています。

ペチカの煙道とPSの冷暖房設備

それに加えて、今回採用したのが「ペチカ」です。まさしくこの施設の名前の由来でもあります。輻射パネル装置と機能としては重複する部分がありますが、地域の地産地消エネルギーである、木質エネルギー型の暖房装置を採用しよう、ということでペチカが選ばれました。(長谷川建設ではペレットストーブ普及の取組みもされています。)

ペチカ、というのは、薪ストーブなどの焚口と組み合わせ、排気をレンガ積みのパネル型の煙道の中を通す仕組みです。レンガのパネルが排気で温まることでそこからの輻射暖房効果を期待します。かつてロシアなどの寒冷地で普及したものです。これもやはり部屋の中央に配置するプランニングとして、この施設の象徴的なしつらいとすることができました。ペチカ周りにはやはりレンガの蓄熱壁をさらにもうけ、ダイレクトゲインを期待する蓄熱材としても機能します。

ペチカ周りにはレンガの蓄熱床をさらにもうけ、ダイレクトゲインを期待する蓄熱材としても機能させている

構造、内外装材の木材は地元の杉、ヒノキ、松を採用。ご多聞にもれず、地産地消の家づくりを目指しました。

さて、昨年の冬に竣工し、やがて二回目の冬を迎えようとしているわけですが、最近訪問したおりに、使い心地について、オーナーさんにいろいろとお話を伺いました。秋が深まってきている季節ですので、その時の外部の気温は夕方で12、3度ぐらい。コートが必要なくらい肌寒い状況です。室内は20度を少し切るぐらいの温度。内部は全体的に柔らかく適温な印象で、温度の感覚を忘れるぐらい過不足ない状況でした。おそらくこうした状況を「快適」というのだと思います。

残念ながら本命のペチカはまだ今シーズンは稼働していない、ということでしたが、パネル輻射暖房は継続的に動かしているとのこと。設定温度を聞いてみると20度で稼働している、ということで、パネル表面を触っても温かくともなんともありません。(体温が36度近辺だから当たり前)しかしながら、20度であっても輻射型の発熱体が部屋の中心にあり、それがいつも部屋の温熱環境を下支えしている、という感覚は改めて持つことができました。

陸前高田は東北地方にあり、冬はそこそこ寒冷な状況になり、しかしながら太陽日射量は太陽側特有でしっかりとあることから、今回のプロジェクトではペチカ/輻射パネル暖房と土間蓄熱によるダイレクトゲインというパッシブデザインの組み合わせを採用するに至りました。地域の木質エネルギーを活用する、という点でも一つのとっかかりになるのではないか、と感じます。

冷暖房技術を中心に紹介をさせていただきましたが、こうした温熱感の快適な空間を体験出来る場所を作ったことと、それがコミュニティの一つの結節点として機能するような場としていることが重要だと思っています。健全なコミュニティを築く取組みと、自然エネルギーを利用した良好な温熱環境を実現している空間が一致しているのが良いのではないでしょうか。
今後もこうした総体的な環境配慮型の建築づくりの普及が望まれます。

kinei_yamada山田貴宏(やまだ たかひろ)

早稲田大学建築学科都市環境工学修了。清水建設、長谷川敬アトリエを経て、現在ビオフォルム環境デザイン室主宰。主に国産材と自然素材を中心とした、地産地消でかつ伝統的な木の家造りを中心とした建築/環境設計を行う。パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりをめざす。建物とそれを取り巻く自然/コミュニティまで含めた幅広い環境と場づくりがテーマ。
著書:「畑ついているエコアパートをつくろう」(自然食通信社 共著)、「里山長屋をたのしむ」(学芸出版社)

◇里山長屋からの便り バックナンバー
・里山長屋からの便りvol.1『夏編』
・里山長屋からの便りvol.2『冬編』
・里山長屋からの便りvol.3『住まいの温熱環境を科学的に理解する時代』
里山長屋からの便りvol.4『あたたかな住まいのなかから考えた』
・里山長屋からの便りVol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」について』

『沖縄からの便り vol.10』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

気象庁の発表(2018年7月23日)によると、今年の猛暑は日本全国に渡っています。
7月中旬以降、東日本と西日本では、太平洋高気圧に覆われて、晴れて気温のかなり高い日が続いていますし、7月中旬の平均気温は、関東甲信地方は平年差+4.1℃、東海地方は+3.6℃、近畿地方は+3.4℃、中国地方は+3.1℃と1961年の統計開始以来、7月中旬としては最も高くなったそうです。

しかし松田さんからの便りには、
「沖縄には、意外にも猛暑日はほとんどありません。また快晴日も一年に8日程度しかありません。
もちろん紫外線は最強なので、日向には居てもたっても居られません。
しかし日陰に来るとグッと温度が下がり、涼風を受けこのままハンモックにでも揺られながら、お昼寝ができそうです。」

とあります。

ビーチの日陰でお昼寝をしている赤ちゃん

そんな今年の状況から、風や緑を生かした沖縄の住まいづくりについて、ご提案いただいています。
続きはこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.10

沖縄からの便りvol.10


 

避暑地の沖縄

セミが朝からシャンシャンジージーと競うように鳴いています。夏がやってきました!今年は、青い蝶をよく見かけました。7月なのにトンボが真夏の空を仰いでいます。何かを知らせているのでしょうか。

全国各地のニュースで「猛暑日」「熱中症」が毎日のように報道され、どうしてこんなに命が奪われるのかと心を痛めながら観ています。

このままだと、どうやら沖縄は避暑地になるようです。

環境省地球環境局提供 2100年あすの予報 より

沖縄には、意外にも猛暑日はほとんどありません。また快晴日も一年に8日程度しかありません。

もちろん紫外線は最強なので、日向には居てもたっても居られません。
しかし日陰に来るとグッと温度が下がり、涼風を受けこのままハンモックにでも揺られながら、お昼寝ができそうです。

ビーチの日陰でお昼寝をしている赤ちゃん

以前の「ベトナムからの便りvol.2 “暑い夏の風物詩”」に、
“外出時間は早朝と夕方以降に限ります。日中暑い時は外に出ないのが基本。
それでも昼時に外で過ごす場合、日陰で休み体力温存を心がけるのが最良策といえます。”
とありました。

まさに沖縄でも同じです。暑い日は昼間、外を出歩きません。犬すら歩きません。どうしても歩くときは影を伝って歩くか、日傘をさします。運動公園でウォーキングする人が増えるのも、夕方から夜にかけてです。

ビーチで、サンサンの日差しを浴びて泳いでいるのは、長袖のラッシュガードを着せられたパワーを抑えきれない子供たちか、非日常的な南国の太陽を楽しむ観光客の方です。
どちらかというと、地元の人はビーチでは日影でバーベキューを楽しみます。
そして、やっぱり海で泳ぎたいなら、朝か夕方です。水着やビキニで泳ぎたいならば、日焼け止めが必須、しかも短時間が限度です。

ほとんどの人が長袖かTシャツ着用している地元のビーチ

 

風と共に生きる文化

沖縄で家を建てる時に重要視すべきことは、まず防災です。
当たり前のことですが、強い台風が来ます。台風時に耐えられること、命を守れること。これが一番大切です。
そして、その次が風の有効利用・日射遮蔽と続いていきます。
「風はいつも吹いているとは限らない。」
いえいえ、海に囲まれた沖縄では3.5m/s以上の風は流れている割合が8割にも上がります。

風速の時間割合(%)

庇に期待するもう一つの効果

とはいえ、那覇市の密集市街地では、なかなか風を取り込む事が困難な場合もあります。
ここで、強い日差しを遮る「庇」の出番です。
実は、庇を設ける事で風を取り込む事ができるのです。

風土に根ざした家づくり手引書より抜粋 発行:沖縄県土木建築部住宅課

袖壁も有効です。ウィンドキャッチャーとしての庇は、特に大きく出さずとも効果的です。設計者は、この有能な庇を多用せずには勿体ないですね。

風のシミュレーションは、今のところ一般人には難解です。
シミュレーションソフトも高価で、個人の設計事務所が気軽に購入することはできません。
もし、身近な存在のソフトが開発されれば、沖縄県の設計者が全国で一番影響があるかもしれません。

そんな中、楽しい流体シミュレーションアプリを教えていただきました。
手描きなので、図面をそのまま再現は難しいですが、無料なのでiphoneやipadをお持ちの方は、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

wind tunnelアプリで見つけた袖壁の効果

未来の沖縄を考えよう

先日、日差しが柔らかくなってきた夕方、散歩がてらに街中のサーモグラフィを撮影してきました。
熱いのは道路です。そして屋根面です。つまりは日差しを直接受ける水平面です。

那覇市内 国際通り付近

サーモグラフィを見てみるとよくわかります。赤いところ、白くなっているところが一番熱いところです。

あるRC造のアパート

エアコンの室外機の位置まで教えてくれます。
エアコンを使うことは、熱中症予防にも欠かせません。でも、このままだと地域を熱くする負のループになってしまいます。

そんな中、一際青く(涼しく)なっている家を見つけました。

地球温暖化対策のモデル建築?

100年後200年後の沖縄が、今より熱くならないためにはどうしていけばいいのだろう。キンキンに冷えた泡盛入りレモンサワーを飲みながら、ひとり考えにふけた夜になりました。

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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編

2017年秋~2018年冬編・第3弾『岐阜からの便り』が届きました


写真3:断熱区画から外して、通りには繊細な建具を残した例

岐阜の辻さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の松田さん、京都の豊田さんに続き、『気候風土適応住宅』について書いていただきました。
伝統的な住まいならではのたたずまいを残しつつ、法律で定められた基準をどうクリアしていくのか、ご本人が設計した住宅を例にご意見をいただいております。

詳しくはこちらからご覧ください。

岐阜からの便り vol.3『気候風土適応住宅』

岐阜からの便り vol.3 気候風土適応住宅


建築物省エネルギー法で求められる建築性能として、①外皮基準(断熱と日射遮蔽)と②一次エネルギー消費量基準の2つがあり、2020年を目途に新築においてクリアすることが求められています。

この基準の目的を考えてみると、①外皮基準は、健康を守るために定められています。冬期においては部屋間の温度差を軽減してヒートショックや低体温症のリスクを減らすこと、夏期においては熱中症のリスクを減らすことを念頭に決められています。一方、②一次エネルギー消費量基準は、通常の新築住宅よりは少ないエネルギーで暮らせることとしています。

つまり、省エネ法の目標は、省エネ性が高くて暖かい家ではなく、最低限の健康と省エネを確保することです。ですが、これが適合義務化されると、建築することが難しくなる住まいも出てきます。

例えば、中も外も土壁真壁の家で、断熱材が入れられない住宅です。

私の住む岐阜県では、まだまだ土壁の家が多くつくられ、地域によってはそれが独自の街の風景を作ってきました。

写真1:土壁で防耐火性能を向上させたうだつのあがる街並み(美濃市)

土壁は工期がかかり、コストも高額になりがちなため、近年ではあまり使われなくなり、せっこうボードなどで仕上げる家が増えています。ですが、防火、防音、蓄熱といった土壁の良さもありますし、古民家の修復の際にもこれらの素材や技術力が必要になってきます。
写真2は、森林文化アカデミーの自力建設で土壁施工をしている写真です。ここでは、竹小舞から荒壁の材料まで学生が探してきて、土壁の職人さんから、それぞれの特徴や、施工方法、伝統的な組み方などの指導の下、施工を行いました。最後は、砂漆喰で仕上げましたがこちらの指導は別の職人さんです。
このように、それに関連する様々な職種や素材業者などの活用により、地場産業に活力を与え、伝統の技術や素材を継承し、文化材修復の際にも活かされており、伝統的な工法がなくなるというのは様々な損失が生まれてしまいます。

写真2:職人さん指導のもと、いぶした竹で小舞を編み、荒土を塗っている学生

そこで、「気候風土適応住宅」という、①外皮基準(断熱、日射熱遮蔽)の適合義務を外すルートができました。②一次エネルギー基準は高効率な設備を入れることで比較的対応しやすいため、除外ルートはありません。
では、気候風土適応住宅とは、何でしょうか。言い換えれば「地域の特徴を活かした住まい」といえると思います。
まさに、これから、各地の建築に携わる実務者が考えていかなければならない住まいです。

ですが、間違ってはいけないのは、最初から除外ルートを検討するのではなく、まずは基準に適合したうえで、気候風土を活かした住まいがつくれないかを考えるべきです。最初に述べたように、外皮基準は健康を守る最低限の基準であるからです。

ですので、気候風土適応住宅ルートは、日常的に使用しない建物(茶室など)で線の細い躯体で仕上げたい場合や、地域の町並みの統一性から高性能サッシや枠の太い高性能建具ではなく繊細な建具で町並みに開きたい場合、昔からの地域の伝統の両面真壁の土壁の場合など、①外皮基準を満たすことが困難な場合の選択肢が増えたと考えるべきです。

私の携わった改修事例を挙げてみます。
省エネ法では、建物全体で温熱性能を考えることになっていますが、その場合、町並みに面するファサードや、庭園に面する外壁も断熱強化の必要が出てきます。もちろん断熱サッシを使用すれば解決ですが、伝統的なつくりになじまないこともあります。
その解決の考え方の一つが、断熱区画(ゾーニング断熱)を用いて、生活区間の温熱性能はしっかり確保する方法です。
図1は、重要伝統的建造物群保存地区に隣接する建物で、コストの制約と、伝統的な街並みに面する通りの景観を配慮して、通り部分を断熱区画から外し、奥にある生活空間を断熱区画して、健康性を確保しつつ、通り部分は外皮性能を満たさない状況で改修を行った事例です。
図1のオレンジ色に塗られた部分に生活ゾーン(LDKと寝室、水廻り、それをつなぐ廊下)を計画し、このゾーンを囲うように間仕切り壁を含めて断熱施工しました。

図1:改修時のゾーニング(オレンジ色の部分が温熱性能を高めたゾーン)

写真3は街並み面する縁側ですが、断熱区画から外したため、当初設置された繊細な建具を残すことができ、生活空間の暖かさを確保しつつも、改修後も変わらない街並みの佇まいを残すことができました。

写真3:断熱区画から外して、通りには繊細な建具を残した例

改修前の断熱性能は熱損失係数Q値で6.97W/㎡Kでした。(Q値とは換気熱損失も含み、温度差1℃あたり、床面積1㎡あたりから逃げる熱の速さを示す値。数値が大きいほど熱が逃げやすいことを示しています。)現在の断熱基準の目安はQ値2.7W/㎡Kですので、2倍以上熱が逃げやすく、特に冬期には寒さの原因になっていました。
改修後の断熱性能Q値は3.27W/㎡Kとなりました。省エネ基準は満たしていませんが、これは無断熱ゾーンも含んだ建物全体の性能です。断熱ゾーン内の区画で計算すると、Q値2.65W/㎡Kとなり、健康を考えた際に最低限の性能である省エネ基準程度に向上していることがわかります。

このような区画断熱性能という考え方は、通常の省エネ基準ルートにはなじみませんが、気候風土適応住宅ルートを活用することで実現できます。今回の例は改修事例でしたが、もちろん新築にも応用できる考え方です。
気候風土適応住宅ルート(外皮基準適用除外)を選択した場合でも、住まい手の暮らしを考えて設計者がしっかりと適切な性能を検討すべきで、設計の可能性を拡げることにつながります。

160812_tsuji辻 充孝(つじ みつたか)
岐阜県立森林文化アカデミー准教授
Ms建築設計事務所を経て現職。共著に「木の家リフォームを勉強する本」「省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル」。2013年~環境共生住宅パッシブデザイン効果検討委員、2014年 岐阜県人口問題研究会「空き家等活用部会」議長、2015年 カミノハウスにて地域住宅賞奨励賞受賞(建築研究所主催)。一級建築士。

■岐阜からの便り バックナンバー
・岐阜からの便りVol.1 岐阜南部の夏の暮らし
・岐阜からの便りVol.2 岐阜南部の冬の暮らし
・岐阜からの便りVol.3 気候風土適用住宅

2017年秋~2018年冬編・第2弾『京都からの便り』が届きました


写真1:箱木千年家。茅葺き屋根に、壁は土壁

京都の豊田さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の松田さんに引き続き、『気候風土適応住宅』について書いていただいたのですが、豊田さんの専門分野でもある「土壁」を切り口に、また違った視点での内容になっています。

詳しくはこちらからご覧ください。

京都からの便り『土壁と気候風土適応住宅』

京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田と申します。今年の便りは、土壁と気候風土適応住宅について少し触れてみたいと思います。

まずは、この建物ご存知でしょうか?そう、神戸市北区に建つ箱木千年家です。

写真1:箱木千年家。茅葺き屋根に、壁は土壁

民家好きや土壁好きとしては、たまらない建物なのですが、この箱木千年家と同等の住宅を新しく別の土地に建てたいと思っても、昨今のエネルギー施策もあり、新たに建てることができなくなる可能性がありました。

実は、この問題は、箱木千年家だけはなく、我が国で作られてきた伝統的な建物にも該当し、特に、土壁だけでできた建物は、非常に厳しい立ち位置にありました。土壁は、熱伝導率が0.69w/m・K程度であるため、土壁だけで平成28年の省エネルギー基準(壁:熱貫流率0.53W/㎡・K)をクリアしようと思うと、1150mm厚程度の土壁にしないといけないことになり、土だけで性能を確保するのは非現実的でした。

図1:土壁の厚みを厚くした場合の熱貫流率の比較

内外真壁の土壁は、土を厚く塗って90mm程度にしたとしても、熱貫流率は3.0W/㎡・K程度で、ペアガラスの窓と同じぐらいの性能です。

図2:内外真壁の土壁と窓の熱貫流率の比較

そんな中、昨年の3月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が国交省から所管行政庁へ周知されたことから、気候風土適応住宅の認定(以下、「気候風土認定」とする)を取得すれば、昔ながらの土壁の家も省エネルギー基準をクリアできる道が示されました。

簡単に説明すると、「外皮性能は向上させなくても大丈夫だけど、エネルギーの基準は守りましょう!」という申請ルートが新たにできたわけです。

図3:外皮性能3つと、一次エネルギー消費量を評価する

気候風土認定を取得することで、外皮基準は適用されず、一次エネルギー消費量基準は緩和されることになり、ほっと胸をなでおろしたいところですが、そうは問屋が卸しません。

気候風土認定を取るためには、一般的な住宅と同様に、必ず、外皮性能と一次エネルギー消費量の計算をする必要があります。計算が苦手な方や職人さんには、なかなかのハードルですが、この計算を行うだけで、これまで通りの住宅をつくれる可能性があるのですから、なんとかしてやり遂げるしかありません。

図4:UA=9.0W/㎡Kの場合のエネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適応住宅版)の結果

外皮性能の計算は、通常のルール通り計算を行いますが、一次エネルギー消費量は「エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適応住宅版)」(以下、「気候風土適応住宅版」とする)を使用し計算を行います。

気候風土適応住宅版は、外皮性能がどんなに悪くても、暖房エネルギー基準値が設計値に近くなるようなプログラムになっています。(「居室のみを暖房する」の場合)また、暖房を「採用しない」に設定すれば、基準値=設計値となり一次エネルギー消費性能がクリアしやすくなります。これら暖房基準値の緩和が気候風土適応住宅版の最大の特徴となっています。

さて、計算さえできればあとは、所管行政庁がきめる策定ルールに適合させるだけですが、ここが一番のハードルかもしれません。現段階で、策定ルールが決まり運用しつつあるのは、1~2の所管行政庁だけだと聞きます。残りの所管行政庁は、動いているところもありますが、まだ何も決まっていないところが大半のようです。

所管行政庁が、気候風土認定の判断をするにあたり、図5が示されていますが、中でも、土壁は、「外皮基準に適合させることが困難と想定される要素の例」として、1)土塗壁(外壁両側を真壁としたもの、2)外壁片側を真壁としたもの、3)土蔵造りのもの)の3種が挙げられています。

図5:気候風土適応住宅の判断にあたっての考え方(上)と外皮基準に適合させることが困難と想定される要素の例(下)
出典:所管行政庁が地域の気候及び風土に応じた住宅であることにより外皮基準に適合させることが困難であると認める際の判断について(技術的助言)国住建環第65号、平成28年3月31日より

 

ここで、気候風土認定の判断にあたり、一例をあげてみたいと思います。

この建物は、私が設計をした住宅です。木小舞土壁、聚楽、瓦、国産材、木製建具、畳、障子戸など伝統的な素材をたくさん使っていますが、外壁は大壁で、基礎は一般的なコンクリートベタ基礎です。はたして、この住宅は、気候風土認定を取得できるのでしょうか?

写真2、南禅寺の家

もし、「建物全てが伝統構法で作られている」、または、「石場建て」が必須といったルールになると、この建物は気候風土認定を取得できません。土壁は使っていますが、外部を大壁にしているので、断熱材の充填は可能です。もし、外部が大壁で断熱材が充填できそうな住宅は、気候風土認定を取得できないというルールになると、先程と同様に認定を取得できません。こういったように、0か100かによって、この策定ルールが決められてしまうと、せっかくの気候風土認定も活かされないで終わってしまう可能性があります。

そんな中、私は、熊本の古川保さんが提案されている配点方式の気候風土認定にとても興味を持ちました。気候風土要素をリスト化し配点化することで「内外真壁の土壁があれば+○○点、瓦があれば+○○点、計○○点以上であれば気候風土認定取得」とでき、地域の気候風土要素のバランスを保つことができると感じました。かつ、私案ですが、CASBEE伝統やCASBEE気候風土住宅といった行政でも使いやすいCASBEE評価ツールを新たにつくり、所管行政庁で配点を決めて運用するという案もあるのかと思いました。CASBEE京都のように、CASBEE○○といった所管行政庁独自基準のCASBEEをつくるのも良さそうです。

図6:CASBEE伝統やCASBEE気候風土住宅の案

省エネルギー基準が義務化になると言われている2020年まであと2年。気候風土適応住宅版が完成したことで、伝統的な建物や地域にこれまで根付いてきた住宅は、これまで通り建築することができそうです。あとは、特定行政庁の策定ルール次第。今年は、色々な動きがありそうです。

*
toyoda_1 豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都造形芸術大学大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など左官職を生かした家づくりを行っている。

「南禅寺の家」では、(財)建築環境・省エネルギー機構主催「第5回サスティナブル住宅賞」において「国土交通大臣賞〔新築部門〕」の他、第9回木の建築賞 木の住宅賞、第7回地域住宅計画賞 地域住宅計画奨励賞も受賞している。

★同じ著者の他の記事を読む
京都からの便りvol.1『南禅寺の家 夏の便り』
京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
京都からの便りvol.4『南禅寺の家 冬の便り』
奈良からの便りvol.1『ならやまの家 夏の便り』
奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
・京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』

新連載スタート「沖縄からの便りvol.9」が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。
今回は今年の秋に多発した台風の被害から、沖縄の気候風土に合った住宅について、
さまざまなデータ検証と共に詳しく述べています。

沖縄県庁からの景色

詳しくはこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.9

沖縄からの便りvol.9


台風22号が去ったあたりから、一気に半袖だと肌寒くなって来ました。
ついに沖縄でも、そろそろ夏モードを切り替える時季になっています。
前回の台風は久しぶりに直撃したような気がしました。

我が家では、アパート前にあった3階建の高さまである木が倒れ込んでいました。また近所のバルコニーに設置してあった木製ルーバーが落下していました。幸いけが人もなかったのですが、木がもたらしてくれた大きな影や木漏れ日、爽やかな風を失ってしまった事はショックでした。

台風22号で倒れた木

以前お話ししたように沖縄はRC造が既存ストックの9割を占めています。確かに台風からは守ってくれるありがたい構造ですが、実際快適性はどうなのでしょうか。また、省エネ性はどうなっているでしょうか。

平成28年9月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が公表されました。そのガイドラインを読んで「あ、沖縄だ!」と感じた箇所がありました。
地域の気候及び風土に応じた住宅に特徴付けられる要素の例の表があり、その中に伝統木造の要素に混じって「屋根通気ブロック」「花ブロック」と記載されていたからです。

表1:地域の気候及び風土に応じた住宅に特徴付けられる要素の例/「気候風土適応住宅ガイドライン」より

少なくとも、伝統木造だけじゃなくRC造であっても沖縄らしい住宅として気候風土適応住として認定できる可能性があると思いました。

沖縄県では、今年の3月から先月の10月まで「沖縄らしい気候風土適応住宅形成事業」が行われました。
その事業では既存の住宅に関する調査や省エネ基準適合状況の調査を行ったのち、「沖縄らしい気候風土適応住宅認定基準」(案)の策定を行う内容でした。
実態調査を行えば行うほど、沖縄の一般的な住宅は外皮の基準である平均日射熱取得率の基準値達成が困難である事がわかりました。

断熱性能を示すといわれているU値、これは沖縄県の8地域だけは基準の規定はありません。

外皮平均熱還流率の基準値/建築物省エネ法における基準値をNPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

冬の断熱の重要性はそこまで感じられないので、納得できます。
もう1つの日射遮蔽性能を示すηAC値の基準は、全国で一番数値の高い3.2とされています。

 

冷房期の平均日射熱取得率の基準値/建築物省エネ法における基準値をNPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

数値は低いほど厳しいので全国で一番沖縄県の日射遮蔽性能基準が緩い規定となっています。ちょっと不思議です。
そして、この一番緩いはずの基準値であるはずが達成困難な状況でした。
RC造、混構造、一部現代木造含む20件の一般住宅を計算したところ、平均は5.3になり全ての住宅が未達成という結果になりました。(因みに基準はありませんがU値の平均値は2.57でした。)

この基準値は、各地域の施工技術やコストなど様々な要素を勘案しながら決めていったそうですが、もしかすると再度この根拠を掘り下げてみることも必要かもしれません。

沖縄県内住宅における省エネ基準達成状況/NPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

現在、各部位のη値の計算には、日射遮蔽効果がある日射反射(白色塗料など)や通気(通気ブロック、屋根付きバルコニー)などの効果は算入されていません。
その他に屋上緑化や壁面緑化による蒸散作用、赤瓦(素焼き)の蒸散作用や屋上砂利敷きなどの効果も算入されていません。花ブロックも同様です。また隣戸や屋敷林、植栽による日射遮蔽効果も算入できません。

今後沖縄での日射遮蔽技術について、効果を数値化しひとつ1つしっかり評価していけなければならないという課題があります。
もちろん美しい赤瓦屋根の伝統木造住宅も沖縄らしい気候風土適応住宅だと思います。

しかし同様にRC造も、強い日差しにも耐え、熱を遮る工夫、台風から身を守る堅牢さ、外部の平均風速5mを生かした軒や大開口という大切な気候風土に適応した要素があります。
大型台風が来ても大きな被害には至らず、命を守ってくれる安心感、半世紀という時代を通して地元建築士が培ってきた仕様や工法は、次世代にも受け継いでいけたらと思います。

沖縄県庁からの景色

DSC_0749

「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編

福島からの便り vol.4 春間近の飯野町を訪れる -いいの「虹の家」-


 

二月も終わりに、福島市の南東に位置する飯野町を訪ねました。

2008年より福島市に編入された飯野町は阿武隈高地の丘陵地に在り、美しい山並みを望めます。また、町の中心部はかつて養蚕業で栄えた屋敷の塀や蔵の街並みが残り、その佇まいや裏路地には飯野町らしい趣が残っています。

漆喰の蔵と塀のある路地-震災で傷んでいます・・・

漆喰の蔵と塀のある路地-震災で傷んでいます・・・

訪問したこの日は、ひな祭りのイベントの「飯野つるし雛まつり」が開催されていました。
これは、町興しの為に町の商工会がはじめたイベントで、今年で節目の10年目を迎えました。
学習センターや商店街の各店舗で、町民が思い思いにこしらえた人形を吊るし、町内外から人々が訪れ、眺めたり写真を撮ったり、買い物や食事を楽しんでいました。

商店街の様子

商店街の様子

吊るし雛

つるし雛

“いいの「虹の家」”

今回の福島からの便りでは、町の中心の表通りから1本南側に入ったところに、2014年に建設した“いいの「虹の家」”の冬の住まい方について取材をさせて頂きました。
建て主さんは、ご夫婦と中学生のお子さんふたりの4人家族です。

外観

外観

敷地は奥行きが約8m、間口が25mと東西に非常に細長く、三方は高低差約1.5mの石垣に囲まれています。北側は敷地と同レベルで小道が走り、飯野町特有の裏路地の景観が見られます。

外観(北側)と裏路地

外観(北側)と裏路地

建物は、西側の2階建ての棟に寝室・風呂・家事室・子供部屋等を集約してプライバシーを保ち、東側の1階建ての棟にはLDKと客間等を設け、交友関係の広い施主さんの集いの場となっています。

いいの「虹の家」平面図

いいの「虹の家」平面図

その二つの棟を繋げる中二階の回廊が風洞の役目も担い、東側の棟にある薪ストーブの暖気がその回廊を抜け、西側の棟の2階の隅々まで温めてくれます。

いいの「虹の家」立体構成

いいの「虹の家」立体構成

冬の住まい方

取材をさせて頂いたこの日は、小春日和となり穏やかな一日でしたが、朝は-6℃まで冷え込んだそうで、春間近といえども朝晩はまだまだ寒く、天気が傾けばこれからも雪が降ることもあります。その外気が-6℃の時に室内は17℃を保っていたそうで、外出したら寒くてびっくり、車のフロントガラスが凍結していて更にびっくりだったそうです。

断熱材は昨年の冬編で紹介した“かわまた「結の家」”と同じく、調湿性と蓄熱性に優れ、薪ストーブと相性の良い「ウッドファイバー」を採用しています。
さらに内装仕上げについては一般的な珪藻土より細孔が小さい珪藻土(MPパウダー)を塗り、その優れた調湿機能により暑さ寒さを和らげます。
そのおかげで、薪ストーブから最も離れている2階の寝室まで適度な温度を保ち、朝の支度の1時間程度はリビングのエアコンを補助暖房として使用するが、常時は薪ストーブのみで暖房をまかなっているそうです。夏場もエアコンは使用しないとのことで、光熱費は以前の借家の時よりもかなり低く押さえられているそうです。以前は灯油だけで月20,000円を超えていたのが、現在は電気代が高くても約18,000円、その他に32,000円/梱包の薪をひと冬に1~2個程度購入するだけです。ちなみに、熱源は電気(オール電化)と薪ストーブのみで、薪は入手の仕方で購入しなかった年もあるそうです。

軒下の野積みの薪置き場-石垣の上なので排水が良好

軒下の野積みの薪置き場-石垣の上なので排水が良好

冬の調湿

一方で薪ストーブが暖かな室温を保ってくれるために、徐々に室内の湿気が無くなって乾燥が進み、薪ストーブのあるリビングでは湿度が40%を下回り乾燥状態になることがあります。やや温度の下がる2階では約50%とリビングよりも湿度が高めです。これは、相対湿度の特性でしょう。

リビングの薪ストーブ-鍋に水を張って調湿するも・・・

リビングの薪ストーブ-鍋に水を張って調湿するも・・・

高校受験を控えるお子さんがいることもあり、特に調湿には気を配っているそうで、湿度が低い時はMPパウダーの壁面に霧吹きを広範囲に吹き付け、常に40%以上を保つようにしているそうです。おかげでこの冬は子供達が風邪にかかることもなく、“いいの「虹の家」” に暮らし始めてから3度目の冬となるが、家族の風邪が顕著に減少しているとのことでした。

霧吹きで シュ シュ シュ♪

霧吹きで シュ シュ シュ♪

また、浴室のある2階は入浴時に加湿され、就寝時には寝室の湿度が60%程度まで上がり、程よく眠りに就くそうです。脱衣室の欄間をわざと開放した効果もありそうです。
また、脱衣所には換気扇はあえて取り付けませんでした。

脱衣室-上部は開放、湿気が拡散します。

脱衣室-上部は開放、湿気が拡散します。

薪ストーブの特性を生かすように適した断熱材や仕上げ材の選択、適した間取りの工夫をすれば暖かな室内環境を得ることができ、かつ光熱費を抑えることができます。
その一方で、いかに適度な湿度を保てるようにできるかが、「冬場」の設計の重要な課題です。

回廊/風洞-風の通り道

回廊/風洞-風の通り道

つるし雛のお顔紹介

吊るし雛のお顔紹介

つるし雛のお顔紹介

saitohirofumi@kkj齋藤史博(さいとう ふみひろ)

1973年福島県福島市に生まれる
1997年に新潟大学工学部建設学科卒業後、組織事務所を経て2006年に「さいとう建築工房」を設立。
無理をしない、素直な家づくりを目指して地元福島で頑張っています。
2013年に“かわまた「結の家」”にて、第6回JIA東北住宅大賞2012「優秀賞」、第8回木の建築賞「木の建築賞」を受賞。

■バックナンバー
福島からの便り Vol.1
福島からの便り Vol.2
福島からの便り Vol.3

2017年冬編第8弾 福島から冬の便りが届きました


福島の斉藤さんから、冬の便りが届きました。

いいの”虹の家”外観

”いいの「虹の家」”外観

今回は斉藤さんが設計された”いいの「虹の家」”での冬の暮らしの他、つるし雛で賑わう飯野町の様子もご紹介いただいています。

詳しくはこちらからご覧ください。
■ 福島からの便り Vol.4 春間近の飯野町を訪れる -いいの「虹の家」-

北海道からの便り vol.8


 

冬の北海道からお届けします。

今シーズンは、予想外の展開で冬に慣れているはずの北海道人もいささか翻弄されたスタートとなりました。ここ数年は、クリスマスに雪がなかった年もあったような、お正月に雨が降った年もあったような、温暖化を肌で感じることが多かったように思うのですが、まだ紅葉の木々残る11月の初めに突然の大雪で、これはさすがに先制パンチ!
まだ暖かさ残る時期ですから、重い雪に雪かきも重労働でしたし、(数日で溶けてしまうのに〜。)なにより、積雪で狭くなった道を譲り合いながら車で行き来するので、街じゅう大渋滞で時間が読めず、みなさん大変な思いをされたことと思います。いつもは車で30分の道のりが、1時間半かかりました。往復3時間って、どんだけ出張なのかとおもいますが、10km先の現場だったりして。本当にげっそりしてしまいます。

11/6 の朝 重たい雪に玄関先のノムラモミジがかわいそうなことに 折れてしまった枝もありました

11/6 の朝
重たい雪に玄関先のノムラモミジがかわいそうなことに
折れてしまった枝もありました

なんて、愚痴も半分で書き進めながら、ふと、以前にもこんなことを書いた覚えがあると、バックナンバー遡ると、2014年の冬にも似たようなこと書いてました。
http://chiiki.kkj.or.jp/2014winter_info/140109hokkaido/
よって、驚きの冬のスタートは3年ぶりといったところだったのですね。

12/23 の朝 再び雪かきにげっそり 今年に入って鳥取の方でも豪雪がありましたね。大変さお察しします。

12/23 の朝
再び雪かきにげっそり
今年に入って鳥取の方でも豪雪がありましたね。大変さお察しします。

ちょっと、しつこくなりました(笑)しつこく書きたいくらい、大変でした。
そんな中でも、冬を楽しみたいなと。なんだか不思議とそんな風に思うのですが、寒いからこそできる楽しみもあります。最近はすっかり出不精になり、ウインタースポーツもご無沙汰なのですが、友人がこんな素敵なアイスキャンドルを作っていると、教えてくれました。

水風船でつくるアイスキャンドル 水風船を二つ繋げてぶら下げることで、風船同士が触れ合った部分は凍らず、 ちょうど中にキャンドルが入る入り口が自然にできるそう。 凍らせている間は、気温が下がるのが楽しみ。

水風船でつくるアイスキャンドル
水風船を二つ繋げてぶら下げることで、風船同士が触れ合った部分は凍らず、
ちょうど中にキャンドルが入る入り口が自然にできるそう。
凍らせている間は、気温が下がるのが楽しみ。

こんな楽しみを謳歌できるのも、暖かい部屋に守られて、自然と美しい外の環境に意識を向けられるからだとつくづく感じます。日々生活している空間が冷え冷えしていたら、外に意識を向けるどころか、家にじっと篭りたくなりますよね。
とても尊敬している荒谷先生の書籍*1で、こんな一節があります。
「暖房や冷房とは、家の中に閉じこもるためのものではなく、大きな変化を敵視する感情を取り除き、それに親しむ生活を作り出すためのものです。」
ここでの大きな変化とは、自然の特徴であり、季節変動や地域ごとに異なる生活を導く豊かさであり、暑さの中の木陰や、寒さの中での焚き火の快適さや心地よさはそういう変化の環境の中にある。ということなのだと。
そう考えると、とかく断熱気密の技術や性能の話ばかりに陥りがちですが、断熱や気密は地域ごとの生活文化を育むための重要な要素の一つなのだと気付かされます。数字に振り回されることなく、地域らしい暮らしや文化に目を向けながら設計していきたいものです。

そんなこんなで、大雪に翻弄されながらも(それも楽しめるようになりたいですね〜。)待ちに待った2月になりました。なんでこんなに2月が待ち遠しかったかというと、1年ほど前から、*2下川町のエコハウス美桑で、一番寒い(すなわち、一番環境性能を肌で感じられる)2月になにかやりたいねぇ。とお話をいただいていたからなのです。そしてなんと、東大の前先生(エコハウスをずっと実測してくださっていて、吹雪の中サーモカメラで撮影しながら町中をご一緒させていただいたことも。)と、最南端の宮古島のエコハウスを設計された伊志嶺さん(エコハウスの設計レビューでご一緒させていただいた以来!)も来てくださるとのこと。
伊志嶺さんとマイナス30℃の下川でハグするのを夢見ていたわけです。

いよいよ、下川で再会する日がやってきました。
極寒の2月!のはずが、まさかのプラス気温……!残念!でしたが、学びや気づき多き貴重な時間をいただき、企画してくださったソトダン21*3のメンバーの皆さまには本当に感謝、感謝なのでした。

2/11~14まで、美幌〜下川〜札幌と行われたセミナーの案内 私は12日の下川から参加させていただきました。

2/11~14まで、美幌〜下川〜札幌と行われたセミナーの案内
私は12日の下川から参加させていただきました。

下川町エコハウス美桑での懇親会から参加させていただき、前先生にはエコハウスを最新のPMV計で測定、分析いただきました。本当は極寒での一番厳しい条件下での測定になるはずでしたが、驚くほど気温が高く、またぜひ極寒での測定の機会を得たいと思っているところです。

エコハウスでの測定と懇親会の模様。

エコハウスでの測定と懇親会の模様。

測定の結果は瞬時にまとめ、分析されて14日のセミナーで披露されました。全国20地域のエコハウスをずっと測定してきたからこそ得られた事柄を振り返りながら、また新たな見解が見えてきたそう。進化を感じたお話でした。エコハウスの事業は終了したのですが、前先生のひとりエコハウス測定はずっと続いていて、当初できなかったことが可能になったり、また建築環境を捉える考え方も少しづつ変わってきたとのこと。たくさん移動時間をかけて、短い滞在時間でいかに適切に素早く情報を採取して分析するか、手法も進化してきていますね。

翌日、下川町に新しく誕生したまちおこしセンターコモレビにて勉強会。伊志嶺さんの沖縄、宮古島の環境の読み解きに感動。幾重もの自然に守られる島の環境とくらし、それに寄り添う建築のあり方にさらに気づきをいただきました。前先生の新しい建築環境のシュミレーションのプレゼンに目からウロコなことがたくさんあり、大変良い機会でした。

2/14の札幌でのセミナーでは、さらに一歩進んだ切り口での測定結果の分析と、そこから得られた結果から、今後深めていくべき方向性を示唆してくださったと思います。温熱環境は数値目標をクリアするのが目的ではなく、使う人、暮らす人が快適に過ごすためにあるもの。
そのためにたくさんの測定結果をどう分析して活かすかがカギということで、前先生のリアルタイムの温冷感測定は今ある環境がどんな状況で、どんなことをしたらそこが快適になるのか、たくさん測定してわかってきたのは、「くるぶしで感じる温度」が重要とのこと。一番良いのは毎日食べても飽きないご飯のような環境なのではないか。という言葉が印象に残っています。

2/14札幌でのセミナーの様子

2/14札幌でのセミナーの様子

本当は、セミナーの中で「今作るならこんなエコハウスにしたい」と言うお話をするはずだったのですが、すっかりしそびれてしまい、この紙面を借りて少し触れたいと思います。
2010年にできた環境共生型モデル住宅ですが、当時は「自立循環型住宅」を目指す。ということでした。合わせて、環境省のプロジェクトの素晴らしかったところは、環境に配慮された建築はそれぞれの地域性を生かした建築であるべきというところだと思っています。今は、自立循環がさらに進んでZEHを目指す。というところに焦点が当てられていますが、地域性を生かすという視点がすっかり抜け落ちてしまっているように感じます。どんな地域でも、Ua値をクリアして太陽光パネルをつければOKよ。と言われていうようで、いささか乱暴に感じますし、腑に落ちません。
これから私が目指したいのは、個別の住宅が自立を目指すということから進化して、1軒の住宅ができることで、エネルギーやお金が地域を循環するような地域循環住宅です。地域環境は1軒の住宅だけで成り立つわけではありません。つながりあって、支え合って、みんなが幸せでないと、自分も幸せではないのではないか。ともやもや考えていたところ、南幌町で始まったこんなプロジェクトに参加させていただくことになりました。

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジの概要

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジの概要

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジの概要
http://www.kita-smile.jp/housing_nanporo

きた住まいるヴィレッジは、一般的な住宅展示場とはちょっと違います。建築家と工務店がタッグを組んで、南幌らしい暮らしができる、みんなの手に届くいえを作ります。それぞれが相乗効果を生んで、心豊かな住宅地として育っていきます。できれば参加メンバーが協力しあって、統一感あるランドスケープデザインを組み込んだり、エネルギーの共有ができればいいなと考えています。それを通じて、将来の住人の方々が、健やかなコミュニティを育むきっかけにしたいです。
まだまだ、参加事業者さんを募集中です。一緒にそんな志を形にできる仲間が増えることを心から願っています。

*1 住まいから 寒さ・暑さを取り除く
採暖から[暖房]、冷暴から[冷忘]へ 荒谷 登 著 彰国社 刊
建築や暮らしに関わる全ての方にご一読いただきたい1冊です。

*2 21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業
2010年、全国20箇所に22軒のエコハウスが建設された。
http://www.env.go.jp/policy/ecohouse/about/index.html

*3 ソトダン21
より省エネで永く健康に暮らせる住まいを提供したいという、強い信念を持ち、
常に熱心に学びを重ねながら、北海道の住まいを追求するビルダー集団
http://www.sotodan21.com/

130731_sakurai櫻井 百子(さくらい ももこ)

1973年北海道旭川市生まれ。北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て2008年アトリエmomo設立。子育てしながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。

[北海道からの便り バックナンバー]
・北海道からの便り vol.1
・北海道からの便り vol.2
・北海道からの便り vol.3
・北海道からの便り vol.4
・北海道からの便り vol.5
・北海道からの便り vol.6
・北海道からの便り vol.7
・北海道からの便り vol.8

2017年冬編第7弾 北海道から冬の便りが届きました


北海道の櫻井さんから、4度目となる冬の便りが届きました。
今冬の北海道はまだ紅葉の木々残る11月の初めに突然の大雪があり、雪に慣れているはずの道民でも大変苦労したそうです。

今回は、櫻井さんが携わっているプロジェクト「エコハウス考in下川(美幌〜下川〜札幌と行われたセミナーで、櫻井さんは下川から参加されたそう。)」や、「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」についてご紹介いただいています。

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジの概要

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジの概要

詳しくはこちらからどうぞ

北海道からの便り Vol.8

2017年冬編第6弾 長野から冬の便りが届きました


長野県阿智村在住の中島さんから、冬の便りが届きました。

平成29年1月 玄関先からの風景

平成29年1月 玄関先からの風景

現在は阿智村の山合いにある借家で暮らしている中島さん。
借家ならではの規制もありつつ、山村ならではのエネルギー源を模索しているところだそう。

『湯や暖房に使用するエネルギー源についても、少々考えている事があります。前述の通り、気密性ゼロのほぼ無断熱仕様である我が家では、冬期の暖房・給湯に用いられるエネルギー使用量がかなりのものになっています。そこで燃料の一部を別の燃料に置き換えられないか模索しているところです。
前回の夏の便りを読んで頂いた方は、思い当たる部分があるかも知れませんが、我が家の敷地内には、伐っても伐っても減らない密集した竹林があり、この竹こそが灯油やガスに代わる無償のエネルギー源として最有力なのです。』

詳しくは本文をご覧ください。

阿智村からの便り Vol.2

阿智村からの便り vol.2


信州の南端、長野県下伊那郡阿智村で一軒の空き家を借り、暮らし始めて5年。今回は、この地での晩秋から少し厳しい冬の暮らしについてお話したいと思います。

前回、夏の便りでご紹介したように、元空き家である我が家は、省エネ性能や耐震性能は全く期待できず、雨と風を凌ぐ事で精一杯な感じの建物になっています。
それ故、冬の寒さがダイレクトに伝わってくるのはもちろん、日中は、屋外のほうが過ごしやすい、なんて日もあるくらいです。

では、そんな少し厳しい冬の時期、どのように室内の温熱環境を向上させ、暮らしやすさを実現しているのか。結論から言えば、今のところ屋外から伝わってくる寒さを軽減するような、特別な工夫や手法は用いていません。

冬期間の室内環境を考えた時、この建物の最大の問題点が断熱性能と気密性能の低さにあることは疑いようもない事実ですが、それらのマイナス要素を排除するために、借家である建物自体に手を加えることは非常に困難なのです。
仮に、住まい手が自由に建物をイジることが出来、原状復帰を求められないとしても、元空き家の場合、最低限の暮らしをするために既にある程度の改修を行っている事がほとんどです。電気や機械設備の改修に床材の張り替え。照明器具の交換に建具の取替え。とても断熱改修工事にまでコストを掛けられないというのが実情です。

改修前の空き家と解体中の倉庫

改修前の空き家と解体中の倉庫

そんな我が家の冬の暮らし。

現在使用している暖房装置と言えば開放型の石油ストーブを数台。これに、就寝時は布団の中に湯たんぽを忍ばせる。更に、エネルギー消費を少しでも削減するために、家族はなるべく一つの部屋に集結し、暖房する面積を小さくする。
全てが昭和の時代から変わっていない冬の暮らし。まるで時間が止まっているかのような感覚さえありますが、それはそれでそんなに悪くないとも思えるのです。

それでも、この空き家での冬の暮らしが、もう少し楽になれば良いのになあ、と日々あれこれと妄想しているのも事実です。

そんな妄想の一つが別棟の建築です。別棟と言っても小屋のような小さな建物。昨今、小屋の魅力が様々なメディアで取り上げられ、雑誌の特集記事でも目にすることがあります。そんな小屋こそが、農村の元空き家で暮らす移住者にとって最適なオプションであると考えています。

多くの場合、農村の空き家は敷地が広く、小屋を配置するスペースに困りません。基本的には母屋を生活の拠点とし、小屋は母屋のサテライト的なスペース。仕事場であり、寝室でもある。来客時にはゲストルームとしても利用出来そうです。
小屋の安全性については検討の余地がありますが、現状の母屋より安全性を高める事は比較的容易なのではないか、と想像しています。また、気密性はそこそこに断熱性は必要十分なレベルを確保すれば、厳冬期でも比較的楽に過ごす事が出来ると思われます。更に、重要なのはデザイン性。シンプルながらきちんとデザインされた小屋は、住まい手の生活の質を大きく向上させる要素になります。

全国の多くの山村が限界集落化の危機に直面し、移住定住対策が必須の情勢になっています。我が村でも移住定住希望者に「村での暮らしの魅力」を感じてもらえるよう、WEBやチラシ等を用いて必死にアピールしているみたいですが、なかなか思ったようにはいかないようです。
もしかすると、「空き家+小屋」の暮らしが、移住定住対策の一つのヒントになりのではないかと密かに考えています。

また、給湯や暖房に使用するエネルギー源についても、少々考えている事があります。前述の通り、気密性ゼロのほぼ無断熱仕様である我が家では、冬期の暖房・給湯に用いられるエネルギー使用量がかなりのものになっています。そこで燃料の一部を別の燃料に置き換えられないか模索しているところです。
前回の夏の便りを読んで頂いた方は、思い当たる部分があるかも知れませんが、我が家の敷地内には、伐っても伐っても減らない密集した竹林があり、この竹こそが灯油やガスに代わる無償のエネルギー源として最有力なのです。

伐採して枝葉を落とした竹の山

伐採して枝葉を落とした竹の山

竹や竹を粉砕したチップを燃料とするボイラーについては、大学や企業、自治体等において幅広く研究され実用化されているものの、ボイラーの設置費用や、竹を燃料とする際の不具合、さらに供給体制の未確立等が大きなハードルとなって、一般に広く利用されるには程遠い状況であります。しかし、多少の不便はあっても、あくまで灯油やガスの使用率を減らし、その分を補完する程度の使用であれば無理なく導入できる出来るのではないか、と考えています。
なお、竹を粉砕する自走式チッパーシュレッダーは村が保有しており、村民は安価な使用料金と燃料費の負担のみで使うことが出来ます。(ただし、機器回送用に2トントラックの手配が必要)

荒廃竹林の整備

荒廃竹林の整備

竹チップストーブのイメージ

竹チップストーブのイメージ

村保有のチッパーシュレッダー

村保有のチッパーシュレッダー

地域を見回すと、あちこちに荒廃した放置竹林が存在し、もはや手のつけようもない状態に近づいています。全国的にこのような状況は見られますが、当地域では特に顕著だと思われます。放置竹林は、周囲の田畑や住宅地にまで範囲を拡大することで、景観を悪化させたり、風の流れを止めるだけでなく、降雪時には折れ曲がった竹による道路の通行止め等も起きています。

雪の重みで倒れた竹林

雪の重みで倒れた竹林

道路をふさぐ折れた竹

道路をふさぐ折れた竹

このような放置竹林を減らしていく事は今後の取組みとし、まずは自宅の竹林整備を計画的に行い、竹林から搬出される竹をチッパーシュレッダーにて裁断。チップ化した竹を燃料とした補助暖房を導入したいと考えています。

南信州は新年を迎え、ひっそりと静かな時間が流れています。今回触れた小屋にしても竹チップにしても、まだ妄想段階のため、今回の便りでは具体的なご報告が出来ませんが、機会があれば続報としてお伝え出来ればと考えております。

平成29年1月 玄関先からの風景

平成29年1月 玄関先からの風景

阿智村からの便り 特派員

nakajima_recent中島隆之

1975年1月神奈川県横須賀市生まれ
1997年北海道東海大学芸術工学部建築学科卒業。
設計事務所、造園会社等勤務の後、2009年横須賀市にてアトリエタムロ開設。
現在は長野県下伊那郡阿智村に移転し、主に住宅や店舗の庭づくりを行っています。

■バックナンバー
阿智村からの便り Vol.1

2017年冬編第5弾 岐阜から冬の便りが届きました


岐阜県立森林文化アカデミーの辻さんから、冬の便りが届きました。

『1月に入り、かなり冷え込んできました。夏の便りで気象グラフを紹介しましたが、名古屋にくらべて2℃ほど寒く、1月下旬から2月末にかけて、明け方に氷点下になる日も増え、雪も年に数回降ります。

雪のちらつく日の我が家

雪のちらつく日の我が家

ですが、冬ならではの楽しみがあります。そうです、日向ぼっこと薪ストーブです。
外が寒いときこそ、この暖かさが心地いいのです。』

辻さん宅の「冬ならではの暖かさ」とは?
詳しくはこちらをご覧ください。

■ 岐阜からの便りVol.2 岐阜南部の冬の暮らし

岐阜からの便り vol.2 岐阜南部の冬の暮らし


1月に入り、かなり冷え込んできました。夏の便りで気象グラフを紹介しましたが、名古屋にくらべて2℃ほど寒く、1月下旬から2月末にかけて、明け方に氷点下になる日も増え、雪も年に数回降ります。

雪のちらつく日の我が家

雪のちらつく日の我が家

ですが、冬ならではの楽しみがあります。そうです、日向ぼっこと薪ストーブです。
外が寒いときこそ、この暖かさが心地いいのです。

冬の日中の室内/南の大きな窓から太陽が降り注ぎ、暖かい。

冬の日中の室内/南の大きな窓から太陽が降り注ぎ、暖かい。

上の写真は、冬の日中の室内の様子です。南の大きな窓から太陽が降り注ぎ、いかにも暖かそうですよね。よく見ていただくと、冬場は無用の長物になる網戸も外しています。(これで日射取得は1.5倍ほどに向上)
我が家の断熱仕様は、実験住宅の意味合いも兼ねて、普段の設計では採用しない構成です。実は窓改修を行わずアルミサッシのシングルガラスのままです。
最近よく使うのは、高性能なLow-Eペアガラスです。Low-Eガラスは、金属膜を蒸着し、断熱や遮熱性を高めたガラスですが、その分日射取得も下がってしまいます。日射取得型でも70%弱程度の日射取得です。その分最も単純なシングルガラスは日射を90%程度取り込めます。ですが、シングルガラスには大きな弱点があります。断熱性能が極端に低いことです。(Low-Eペアの4倍ほど熱が逃げやすい)

そこで、我が家では断熱性能の向上のため、空気層が2層あるダブルハニカムスクリーンを設置しています。この断熱スクリーンを下ろすと、ちょうどLew-Eペア程度の断熱性能になります。つまり、日中は最大限日射熱を取り込み、夜間は付属物で断熱強化を行います。これは、日中に人がいてコントロールできることが条件になります。写真は2層ハニカムスクリーンですが、いろいろな位置で止めることもでき、視線遮蔽も考えながらうまく日差しを取り込むことができます。

我が家のハニカムサーモ

我が家のハニカムサーモ

この良さそうなハニカムスクリーンにも弱点があります。それは、熱は通しにくいのですが、湿気は簡単に通してしまうことです。つまり、スクリーンとガラス間が、かなり冷え込み、ここに湿気が入ることで、窓の結露が激しくなります。
石油ストーブやガスファンヒーター等の燃焼によって出る排気ガスは非常に多くの水蒸気を含んでいます。一晩で2リットルくらい出ることもあります。これでは、窓付近の結露が一層激しくなります。

そのため、窓の結露対策も兼ねて、我が家の暖房設備は、薪ストーブを基本にしています。

我が家の薪ストーブ(左)と、そのサーモ画像(右)

我が家の薪ストーブ(左)と、そのサーモ画像(右)

薪ストーブの良さは、煙突で排気しますので室内に余分な水蒸気を出さないこと、本体が熱くなる放射型の暖房設備であることが挙げられます。
上の写真はサーモ画像ですが、本体は300℃近く発熱し、周辺の壁や床を暖めます。サーモ画像の黄色で約30℃、青色でも20℃程度です。人の体感温度は、空気温度だけでなくこれら壁や床などの表面温度も感じ取っています。一般的に、体感温度=(室温+表面温度)÷2で計算しますので、表面温度が暖かければ室温は多少低くても心地よく感じます。

では我が家の冬の暮らし(良く晴れた日の2日間)の室温変化を見てみます。

我が家の冬の暮らし(良く晴れた日の2日間)の室温変化

我が家の冬の暮らし(良く晴れた日の2日間)の室温変化

明け方の外気温(青)は-2.3℃と非常に寒い日ですが、縁側(緑)は、シングルガラスの取り込みによって、日中に30℃近く上がることもあります。明け方、非常に下がっているのは、冷たさの実験用に縁側床を無断熱にしていた時期の測定結果のためで、現在は断熱を入れています。
居間(赤)は明け方8.3℃まで下がっていますが、日中は15以上になり、夕方以降に薪ストーブを着火しているのがわかります。夜間も薪ストーブをつけていますが、18℃程度で調整しています。これは、壁などの表面温度が暖かいため、室温は18℃を超えると暑すぎるからです。

室温18℃、湿度40%の場合の結露が始まる温度は3℃程度です。シングルガラスの窓でも、そこまでひどい結露は発生しません。もし、28℃40%で暮らしていると、12℃でも結露してしまいますので、窓はびっしょり濡れていることになります。

室内の様子

室内の様子

薪ストーブ1台で家全体に暖気がいくように室内はほぼ一室空間です。天井には夏にも活躍した天井扇があり、逆回転させることで、気流をほとんど感じることなく暖気を循環します。

我が家の薪ストック

我が家の薪ストック

薪ストーブの難点は、一般的に薪の確保でしょう。我が家も薪ストックが多くあります。性能はハニカムスクリーンを考慮するとちょうど省エネ基準程度ですが、断熱性能を向上させていくと薪の消費量もそこまで多くありません。
家の中が暖かいと、体も暖まっていて、薪の補充に外に取りに行くのも苦痛は感じず、サウナから外に出た気持ちいい感じです。

薪ストーブで焼いたピザ。

薪ストーブで焼いたピザ。

さらに、薪ストーブ調理定番のピザも、当然トライしています。今回は、自家製の天然酵母のパン生地にこれも自家製トマトソースとベーコンを乗せています。

このように、楽しみながらエネルギーを抑えた暮らしが実現できます。

160812_tsuji辻 充孝(つじ みつたか)
岐阜県立森林文化アカデミー准教授
Ms建築設計事務所を経て現職。共著に「木の家リフォームを勉強する本」「省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル」。2013年~環境共生住宅パッシブデザイン効果検討委員、2014年 岐阜県人口問題研究会「空き家等活用部会」議長、2015年 カミノハウスにて地域住宅賞奨励賞受賞(建築研究所主催)。一級建築士。

■岐阜からの便り バックナンバー
・岐阜からの便りVol.1 岐阜南部の夏の暮らし

奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』


 

トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田です。今回は、夏の便りで紹介した「ならやまの家」の冬の様子を紹介したいと思います。
ならやまの家の概要は、夏編をご覧ください。

ならやまの家は、土壁でできた家です。ただ、昔ながらの伝統的な土壁というと、柱と土壁の間から空が見えるような、隙間風が多いとても寒い家をイメージしそうですが、そんなことはありません。土壁の背面には100mmの羊毛断熱材を充填し、冬でも最低室温10度を下回らない家を住まい手と一緒につくりました。

南面の窓を大きく確保し、冬の日射取得量を増やしている。

南面の窓を大きく確保し、冬の日射取得量を増やしている。

写真だけを見て「天井も高いし、窓も大きいし、寒いだろうな」と思ったら実は大間違いです。ならやまの家は、昨年の最も寒い日で、朝方の太陽が上った際の屋外と室内の温度差は13度もあり、朝起きたら外の気温と同じだった一昔の土壁の家ではないのです。
天井が3~4m程度あるLDKは、床と天井の温度を測ると、自然温度差で1.5度程度でした。断熱性能をあげてあげれば、上下の温度差も小さくできるわけです。

日射を取得することで、室内の土壁に蓄熱させている。

日射を取得することで、室内の土壁に蓄熱させている。

南面の大開口は、室内側の断熱ブラインドを開け閉めすることで隣家の視線や熱の損失を防いでいます。目線だけを隠して、上下を開けたり、下半分を開けたり、すべてを閉じたりと。窓が小さくなればなるほど、断熱性能はあげやすいのですが、冬の日射熱取得を効果的に利用しにくくなります。太陽の自然エネルギーをたくさん取り入れたいのであれば、できるかぎり窓を大きくとって、日中は、たくさんの熱を取り込み、夕方以降は、窓の断熱ブラインドでその熱を逃さないように閉じるのが大切です。日々の生活を楽しめる住まい手であったからこそ、この家ができあがったのです。

断熱ブラインドは、視線を遮り、窓から熱が逃げないようにするための装置。

断熱ブラインドは、視線を遮り、窓から熱が逃げないようにするための装置。

住まい手のご協力もあり、入浴時の血圧も測定してもらいました。入浴前に血圧を測り、服を脱いだ時、洗い場に入った時、入浴した時、洗い場にでた時といった具合に服を着るまで、動作ごとに血圧を測り続けてもらいました。さらに比較しやすいように、入居前の古い家(旧住宅)と、新しくなった家(新住宅)とそれぞれで測定。お手間なのに、本当に感謝です。

血圧計をお風呂場に持ち込み測定。

血圧計をお風呂場に持ち込み測定。

変化があったのは、浴槽から洗い場に出た瞬間、旧住宅は、血圧が20mmHgぐらい跳ね上がったのですが、新住宅では、その跳ね上がりが緩やかでした。やはり、寒さを感じた際に血圧があがるというのは、たしかなようで、実際に20mmHgという数値がわかっただけでも大きな収穫でした。

さて、土壁の背面に断熱材を充填した場合、家ができあがってから日々の水蒸気が土壁背面に蓄積し、木が腐るようなイメージを持たれている方が実は多いのです。そういうこともあり、土壁と羊毛断熱材間に温湿度計をセットし、水蒸気が本当に溜まってしまうのか計測をしました。さらには、今回は、住まい手が部屋で加湿器を使っていたということもわかり、その変化について分析をしてみました。

土壁と羊毛断熱材間にセットした温湿度計。

土壁と羊毛断熱材間にセットした温湿度計。

結果は、加湿器をかけても土壁と断熱材間のセンサーは安定した値を示し、水蒸気量が異常に上昇することもありませんでした。

加湿器を使った部屋の容積絶対湿度グラフ

加湿器を使った部屋の容積絶対湿度グラフ

加湿器をかけることで、室内の水蒸気量は上昇しますが、土壁と断熱材間のセンサーは反応せず。設置位置や仕上げ材の種類によっても変わるので、一概にこの結果がすべてとは言えませんが、冬期3ヶ月間のグラフを見ても、マイナス要素は見受けられませんでした。心配な方は、ぜひ実測をオススメします。

最後にエネルギー消費量の結果の分析です。住まい手から、1年分の光熱費・使用量、ソーラーの発電量と売電量を教えていただきました。結果は、66.32GJの消費に対し、太陽光発電の創エネ66.27GJでした。差し引くと、実質0.04GJの消費(99.9%削減)となり、ほぼゼロエネです(笑
H28年基準 基準値109.60GJ/年、設計値70.20GJ/年、実績値(水除く)66.32GJ/年ですので、実績値が設計値を少し下回る結果になりました。

エネルギー基準値と設計値、実績値の比較

エネルギー基準値と設計値、実績値の比較

住まい手の中には、「私は昔ながらの土壁の家でいいよ。暑さ寒さも我慢するし。薪ストーブで暖をとって、エネルギーも少なく過ごすよ。」という方も中にはいらっしゃいます。そういった方に、限られた予算を切り崩して、Q値1.0W/㎡Kの高性能な家を提供して意味がありません。設計者は、設計をするのですから、住まい手の希望する温度域に設計できる設計力を身に着けておくことが重要です。土壁に断熱材を入れるも入れないも実は自由で、入れないなら入れないなりの省エネ設計をしてあげればいいのです。数値を競うのではなく、Q値1.0W/㎡Kや2.0 W/㎡K、2.7 W/㎡K、10.0 W/㎡Kなど幅広い設計ができる設計者が今、住まい手から望まれているような気がします。

断熱効果予測を示すと、住まい手も把握しやすい

断熱効果予測を示すと、住まい手も把握しやすい

*
toyoda_1豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都造形芸術大学大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など左官職を生かした家づくりを行っている。

「南禅寺の家」では、(財)建築環境・省エネルギー機構主催「第5回サスティナブル住宅賞」において「国土交通大臣賞〔新築部門〕」の他、第9回木の建築賞 木の住宅賞、第7回地域住宅計画賞 地域住宅計画奨励賞も受賞している。

★同じ著者の他の記事を読む
京都からの便りvol.1『南禅寺の家 夏の便り』
京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
京都からの便りvol.4『南禅寺の家 冬の便り』
奈良からの便りvol.1『ならやまの家 夏の便り』
・奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』

2017年冬編第4弾 ならやまの家から冬の便りが届きました


ならやまの家の設計者・豊田保之さんから、冬の便りが届きました。

南面の窓を大きく確保し、冬の日射取得量を増やしている。

南面の窓を大きく確保し、冬の日射取得量を増やしている。

「ならやまの家は、土壁でできた家です。ただ、昔ながらの伝統的な土壁というと、柱と土壁の間から空が見えるような、隙間風が多いとても寒い家をイメージしそうですが、そんなことはありません。土壁の背面には100mmの羊毛断熱材を充填し、冬でも最低室温10度を下回らない家を住まい手と一緒につくりました。」

夏の便りでは、「土壁と自然素材のゼロエネルギーハウス」である「ならやまの家」の基本性能をご紹介いただきました。
今回は冬でも最低室温10度を下回らないというならやまの家の冬の暮らし方をご紹介いただいています。

詳しくはこちらからどうぞ。

■ならやまの家 冬の便り

富山からの便り vol.5


皆さんこんにちは。平成29年も穏やかに明けました。
雪国である富山でも雪の無い正月を迎えました。
晴れた日には空気が澄み、どこにいても東の方向に立山連峰が聳えています。

平成29年も穏やかに明けました

平成29年も穏やかに明けました

自分の子供の頃、昭和30年代には例年12月に降った雪が根雪となり、大人達は雪の始末に大変苦労していたのを思い出します。だいぶ経ちましたが、昭和38年の38豪雪、そして56豪雪、59豪雪の時には平地でも2メートルを超える積雪があり、日常生活がマヒするなど大混乱がありました。

建物が倒壊したり、軒先や樋が壊れたりしたこと。屋根の雪下ろしなどで死者や負傷者が出たことなどから雪の克服は当時の富山県政の大きな課題でした。雪に強いまちづくりを標榜し様々な施策が講じられたものです。住宅対策では2メートルの積雪に耐えられる「載雪型住宅」や、屋根の雪を融かす「融雪型住宅」、そして「自然落雪型住宅」の3タイプの技術開発が全国に先駆けて進められ、県独自の融資制度などで普及が図られました。

ところが近年本当に雪が少なくなりました。温暖化が確実に進んでいることを実感せずにはいられません。おりしも富山気象台の統計が発表されましたが、2016年の平均気温は富山市では平年より1.1度高い15.2度であり、統計開始以来最も高かったとのことです。また、地元紙(北日本新聞)の孫引きになりますが、米海洋大気局のデータによれば世界の平均気温は20世紀の平均値と比べると2016年には0.94度上昇しているとのことです。このままいくとどうなるのかと不安な気持ちにさせられます。

 

1月中旬になり漸く雪が降りました「雪つり」がきれいです

1月中旬になり漸く雪が降りました「雪つり」がきれいです

一月の中旬を迎え、新潟県の魚沼地方などでの豪雪が報道されていますが、当地での今朝(1月14日)の積雪は10センチメートルほどです。漸く冬らしくなったような気がしています。近所の庭木の「雪つり」に雪がかかりとてもきれいなことでした。とは言うものの雪が降ると外出がとても大変です。歩くのに苦労し、自転車も使えません。自動車は危険が伴います。

一晩でこんなに積もりました(拙宅庭)

一晩でこんなに積もりました(拙宅庭)

こんなときにありがたいと思えるのが公共交通です。富山市では平成18年4月にそれまでJR西日本が運営していた富山港線を引継ぎ、第3セクターの富山ライトレール株式会社が運行するLRT(※1)が富山駅北と岩瀬浜7.6キロメートルを路面電車が走るようになりました。

※1:LRT=ライトレールトランジット/Light rail transit の略。
大部分を専用軌道として部分的に道路上(併用軌道)を1両ないし数両編成の列車が電気運転によって走行する、誰でも容易に利用できる交通システム。

「奥田中学校前」のLRT 地下水で融雪します

「奥田中学校前」のLRT 地下水で融雪します

低床式2両編成でデザインされた車両、統一された様式の停留場、樹脂固定軌道方式などの新技術で近くにに来るまで気がつかないほどの静かさ、そしてなによりも駅の増設による利便性の拡大、大幅な増便と平時でも15分間隔の運行により利用者が随分増えました。富山市の資料によれば平日の1日あたりの利用者数はJR時代(H17)の2,266人から開業後(H18)には4,893人(約2.2倍)に増加し、その後も4,800人で推移しているとのことです。

北陸新幹線が開通し更に利用者が増えたとの報道もありますが、現在富山駅を南北に通り抜けるようにする工事が進んでおり、これが繋がると更に便利になるものと期待されています。幸い富山市では旧市街地にある路面電車が存続し、近年中心市街地を循環する環状線も復活したことから数年後の接続が富山駅から北側の市民にとっては大いに待たれるところです。

新幹線駅舎に乗り入れる路面電車(南側)

新幹線駅舎に乗り入れる路面電車(南側)

富山市など地方都市では自動車利用前提の拡散型の市街地が高齢化の進捗や人口の減少を考える上で大きな課題となっています。誰もが自動車を使えなくても安心して暮らせる街に改善いくことは喫緊の課題と思われます。自動車利用者が減ることで排気ガスの発生が抑えられます。深刻化する環境対策としても効果は大きいものと思われます。

全国的に話題となった富山市のLRTですが、近くに住む者として一層の発展は嬉しくそして頼もしいものです。沿線地域の雰囲気は随分良くなりました。一昔前まで富山駅の北側は駅裏的評価だったように思います。今後一層人口が減っていく中でもこの周辺に住む人が増えることで様々な効果が期待できます。そのためは沿線の住宅・宅地の流通を活性化させる一層の工夫も必要になることでしょう。

LRT「富山駅北」駅 数年後には南側と接続される

LRT「富山駅北」駅 数年後には南側と接続される

公共交通機関の利用を通じ街がコンパクトになっていくこと。その分自動車利用が減っていくこと。そして、新しく建替えられる住宅が環境に共生するものになっていくこと。更に願わくはLRTの電源の全てが水力や風力、地熱など自然エネルギーによるものとなっていくことを心から期待したいと思っています。

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川﨑政善(かわさき まさよし)

1947年富山県生まれ。1970年芝浦工業大学建築学科卒業。日本住宅公団を経て1974年富山県庁へ。以来一貫して建築住宅行政に従事。2006年富山県住宅供給公社常務理事を経て、富山県建築設計監理協同組合相談役(2015年3月退任)。

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