『沖縄からの便り vol.13』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

2021年10月7日にkkj会員向けのオンライン見学会でご紹介いただいた「花ブロックの家」の日射遮蔽方法について、改めて詳しく紹介していただいています。

「先日設計を行った住宅を案内しているときに、こんな質問をされました。

どうして住宅の北東面の外壁は花ブロックで日射遮蔽を行っているのに南東面や南西面の壁面にはしないのですか。」

那覇・各季節晴天日の日射量

その答えを知りたい方は、松田さんの記事をご覧ください。

沖縄からの便り vol.13

沖縄からの便りvol.13


だんだんと風が涼しくなってきました。
沖縄にもやっと夏の終わりを感じはじめました。

皆さん、今年はどんな夏をお過ごしでしたか。

沖縄では緊急事態宣言が4カ月も続き、思うように外出も出来ませんでしたが、
私は娘の自由研究を理由に沖縄県内の天然ビーチ巡りをしました。

google mapで砂浜を探す

国頭村辺土名ビーチ

名護市東江ビーチ

今年も台風被害があまりなかった印象で、農作物や住まい手にとっては、良いことなのですが、海の中では、サンゴの白化現象が進むようです。
沖縄のサンゴは台風が来ると、海水温が下がり、ストレスを減らすことができるそうです。

気候変動の影響で、海水温度は上昇を続け、今年の平均海水温度29.9度になりました。サンゴが白化していく温度は30度なので、29.9度と言う海水温は、ほぼ限界の状態です。

2100年には世界中のサンゴが死滅する可能性があるという、科学者の言葉も現実化してきました。地球温暖化はもう止められない。そんな現実を海から目の当たりにしました。

2100年那覇空港の滑走路は半分近く水没と予想 https://www.climatecentral.org/

母として娘に、美しい沖縄を残していけるのか。
娘は娘の子供に、美しい沖縄を残していけるのか。

建築士として、私に今何ができるのか。
海を眺めながら、そんなことを考えていました。

先日設計を行った住宅を案内しているときに、こんな質問をされました。

どうして住宅の北東面の外壁は花ブロックで日射遮蔽を行っているのに南東面や南西面の壁面にはしないのですか。

花ブロックの家 立面図

理由は2つあります。
1つめは
方角的に南西面のほうが北西面より日射量が少ないからです。

那覇・各季節晴天日の日射量

沖縄の夏期の日射量はほとんど南面からは受けません。
東京と比べると半分程度になります。
圧倒的に1番多いのは水平面で、その次に東西面が日射を受けます。
実は南西面よりも北西面の方が日射量は大きいです。

2つめは、日射遮蔽方法として耐候性のある白色塗料を採用しているからです。

白色塗料を施行した外壁面の温度は約30度になります。塗料を塗っていないコンクリートの壁に比べ約15度も違いがあります。

サーモカメラによる表面温度の違い

実際に手を動かして計算してみると、どこの日射性能を高めると効果があるのかがよくわかります。

南西面の外壁は白色塗料で低減される。
北東面の大開口は花ブロックで低減される。
南西面の窓には簾を設ける。ランドリー部分は西日を利用して洗濯を乾かす。

確かに敷地に余裕があれば、もっとコストに余裕があれば全周囲に花ブロックを設置できたかもしれません。
でも常に予算を考え、使い勝手を考え、バランスをとってその場所に相応しいものを取捨選択していくのが建築士の役目です。

建築士は、施主の要望に常に100%応えるのが理想ですが、ここは80%、ここは20%と判断することで、建物全体の施主の満足度を上げていきます。
つまり常に白黒はっきりさせるのではなく、グレーゾーンを攻めていきます。

同じように
断熱をすれば室内に熱が入ってこない=断熱しなければ熱が入ってくる
という考えではなく、断熱できない場合の対処法を用意する。という選択肢を増やすことが望ましいと考えています。

日射遮蔽性能は熱を入れない。
断熱性能は熱を逃さない。

一見同じような性能で、どちらかを高めればどちらも効果が上がりそうですが、

日射遮蔽性能には、日射の条件が大きく関わってきます。
方位や建物の周囲の条件も重要な要件です。

例えば、隣地に高層建築物があり影になるところは、
そこから日射は入ることはほぼ有りません。
隣地に建物がなくなってしまうと話が変わるので、
建築物省エネ法では認められていませんが、
建築士の判断としては敷地を読んで計画を行えると思います。

外部ルーバーをつける
和障子を設置する
庇や軒を設ける

といった建築物省エネ法では認められている手法でなくても、

白色塗料で反射させる
ガラスに何かしらシートを貼る。
遮光カーテンをつけ、昼でも外出時は閉める。
すだれをつける。
緑化をする。
雨水を溜めて打ち水をする。

等、たくさんの選択肢があります。

大切なのは、いかにエネルギーを減らすことなのだから、熱的に効果があると明らかである場合、どんどん採用していいと思っています。

なるべく設備を使わないで過ごせる住宅が増えていけば、沖縄県の住宅に使うエネルギーは今後削減されていくかと思います。

地方別の世帯当たりの年間エネルギー消費量

地方別の世帯当たりの年間 CO2 排出量

(出典:環境省より https://www.env.go.jp/press/files/jp/114774
(エネルギー量は少なくても、原子力発電のない沖縄ではCO2排出量は多い)

沖縄県には約9割を超える鉄筋コンクリート造のストックがあります。
今後これらの省エネ改修工事について真剣に取り組んでいかなければいけません。

その際より多くの省エネ手法による選択肢を用意していければ、より経済的に合理的に省エネを進めていけます。

敷地を読み、建築条件を捉えて、コスト、施工条件を検証する。
我々建築士の力の見せどころです。
美しい未来を子供達に残せるように、身を引き締めて取り組んでいきたいです。

糸満市 潮崎ビーチ

DSC_0749

「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年から2019年まで特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事を務めた。一級建築士。2020年、松田まり子建築設計事務所設立。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編
・vol.11 2019年夏編
・vol.12 2020年秋編
・vol.13 2021年秋編

名古屋からの便りが届きました


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田さんからの冬の便りが届きました。

「今回のお便りは、名古屋市の有松という伝統的な建物が残る地域に建てた住まいを紹介します。この住まいは、有松の町並みに寄与したいという住まい手の思いから、「有松再生プロジェクト」と名付けました。」

伝統的な街並みに見事に馴染んだ新しい住まいの詳細は記事をご覧ください。
名古屋からの便り『有松再生プロジェクト』

名古屋からの便り『有松再生プロジェクト』


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田と申します。前回のお便りは2019年の冬でしたので2年ぶりのお便りとなります。

今回のお便りは、名古屋市の有松という伝統的な建物が残る地域に建てた住まいを紹介します。この住まいは、有松の町並みに寄与したいという住まい手の思いから、「有松再生プロジェクト」と名付けました。

私が、この土地に訪れたのは、2015年の11月。いくつもの壁にぶち当たったものの、2018年末、伝建審議会と有松町並み相談会での協議を経て、有松再生プロジェクトを着手することができました。

写真1)元々建っていた建物。

写真2)竣工後

切妻平入、桟瓦葺き、瓦のカマボコ、下見板張り、ケラバ木現など、伝統的意匠を守りつつ、耐震等級2、断熱等級4、省エネ等級5、外皮平均熱貫流率UA値0.54の性能を確保しました。古くから残る街並みにあわせると、性能設計ができないような風潮もあるのですが、やってみれば、それなりにできるものです。

写真3)インターンの学生さんがつくってくれたファサードの模型。

隣家は、ご覧の通り立派な伝統建築です。その間に建てるということもあり、従前の建物の規模を踏襲しつつ、コの字型平面とすることにより屋根を分節し、周囲の建物の高さを超えないように配慮しました。

写真4)隣家も含めた全体模型。

敷地は、真南から45度傾いていたため、集熱は、南西方向から最大限取り込めるように検討しています。夕方以降に集熱量が多いことを踏まえて、集熱が多い部屋に土を塗り蓄熱性能を発揮させました。

図1)春分頃3/20、14:30の日射取得範囲

夏至は、太陽高度が一番高い時なので、この図以降は日差しが入り込みます。敷地が45度振っているため、袖壁や庇を設けて遮蔽措置を行い、隣家へのプライバシーも考慮し最終的に窓の位置や軒庇の出が決まりました。

図2)夏至頃6/20、14:30の日射取得範囲

秋から冬にかけては、日射取得が多くなります。壁は、土壁なので、直射が当たり蓄熱します。

図3)秋分頃9/20、14:30頃の日射取得範囲

冬至は、建物奥のダイニングテーブルぐらいまで日射取得があることをシミュレーションで確認しています。

図4)冬至頃12/20、14:30頃の日射取得範囲

名古屋市の最寒日の前後3日間の外気温を元に、室温がどのくらいになるのかシミュレーションしました。本建物は、Q値1.8W/㎡K、熱容量130KJ/㎡Kです。その他、Q値と熱容量を上下させて、4種類の建物の性能値を比較しています。結果は、熱容量が大きいと、温度差が小さくなるので、土壁効果が発揮できています。

図5)蓄熱を考慮した室温シミュレーション

集熱を確保するLDKの開口は、全面開口とし、メーカー製の木製建具を使用しています。正面の壁は、土壁です。

写真5)リビングの日射取得の様子

土壁は、木小舞下地です。木と木の隙間は約21mmあいています。見た目は、木摺ですが、木摺と説明してしまうと、木と木の隙間を6mmぐらいとして仕上られてしまうので、木小舞という呼び名にしています。写真を見てもわかるように木小舞が張られた瞬間が一番綺麗かもしれません。木小舞背面は、塞がっているように見えますが、雨養生のため仮止めをしています。土壁が乾燥した後、羊毛断熱材を充填し、面材で塞ぎます。

写真6)木小舞完成、この上から土を塗ります。

荒土塗りです。今回は、名古屋という土地柄もあり、工務店さんの左官屋さんにお願いしました。発酵させた豊田の荒土を使われています。

写真7)荒土塗り完成

荒土塗り、中塗りと終わり、次は仕上です。左官屋さんの作業場へ見学に行った際、置いてあったサンプルをみて、LDKの壁は、豊田土半田なできり仕上に決まりました!半田は、土と石灰を半分ずつ混ぜあわせることから、半田と言われています。今回は、豊田土にヒダシスサと石灰、砂を混ぜてつくっています。

写真8)現場で半田を調合する様子

こちらが練りあがった半田です。若干、水気が多いように思いましたが、仕上がりはどうでしょうか。

写真9)豊田土の半田

半田を天井に塗ります。土を天井に塗れるのか?すぐに剥がれてくるのでは?と心配になる方もいますが、問題ありません。石膏ボードに白い下塗材を塗り、半田を塗ります。

写真10)半田を天井に塗っている所

半田が乾燥し仕上がりました。光をあてるとその質感が浮かび上がります。クロスやペンキでは出せない表情です。土を手仕事で仕上げるってやっぱりいいですね。

写真11)豊田土半田なできり仕上が完成

豊田土半田なできり仕上のアップ写真は、グレーっぽい色目ですが、遠目で見ると、茶色系です。木部の色目と調和が取れて、とても穏やかです。

写真12)キッチンからリビングダイニングを見ています。

こちらは、洗面室です。奥に洗濯室とサンルームがあります。サンルームは断熱・防湿区画を行い、トップライトを設けてパッシブゾーンとしました。

写真13)洗面室から、洗濯室とサンルームへつながる。

サンルームは、トップライトがあるので集熱量が多く、温度・湿度の変動が大きくなるため、その変動効果を利用し、冬期の熱と水蒸気を室内に取り込みます。正面小窓の左手にセンサー付きの換気装置を設けて、熱と水蒸気を室内の寝室へ配り、室温上昇と加湿を試みます。

写真14)サンルームとトップライト

ある一定の温度になると換気扇が動きだし、この吹き出し口から熱と水蒸気が室内へ排出されます。日中の不在時に寝室の土壁に蓄熱・蓄湿してくれる計画です。私はこれを土パッシブ暖房と呼んでいます。簡易的なものなので、やんわり効いてくれればいいなと思っています。

写真15)土パッシブ暖房吹き出し口

次にお庭です。コの字型の平面計画ですので、庭師さんに中庭をしつらえてもらいました。庭師さんのデザインセンスを知っていたので、私はほとんど口出しせず、全てお任せしました。苔をお願いしますと伝えたぐらいです。

写真16)中庭に、樹木を植えたところ。

中庭の完成です。高木は、全て紅葉です。庭石の周辺に杉苔が植えられています。周囲は排水のため瓦の上下に砂利敷。見事な中庭に仕上がりました。素晴らしい。

写真17)紅葉と杉苔の中庭の完成

ファサードです。左手格子戸の奥に車庫があります。格子は、オーバースライドドアになっているので、入出庫時は、格子が自動で跳ね上がります。

写真18)車庫のオーバースライドドアは必見。

開閉動画は、よければ、YOUTUBEをご覧ください。

最後に。
とりとめもなく紹介しましたが、2020年3月に無事竣工することができました。まさか、4年半もの間、この有松の地に係ることになるとは思いもせず、正直なところ、最後まで何か起きるんじゃないかと、ドキドキしていたのですが、最後はスッキリして終えることができました。
有松再生プロジェクトでは、設計の依頼をしてくださった住まい手に感謝すると共に、この仕事に携わっていただけた工務店さんや協力業者さんのおかげで見事な出来栄えとなりました。ありがとうございました。(終)


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豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都芸術大学・大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など伝統素材を使いつつ、風と太陽と土の力を活かす住まいづくりを実践している。

「有松再生プロジェクト」で、令和2年度第28回愛知まちなみ建築賞・受賞、同年度第52回中部建築賞住宅部門・入選。その他、令和元年度京都景観賞 京町家部門 市長賞受賞、令和元年度紀州材ベストユーザー賞-大賞受賞、「第5回サスティナブル住宅賞・国土交通大臣賞〔新築部門〕も受賞している。

トヨダヤスシ建築設計事務所HP

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京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
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奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』
神戸からの便り『里山上津台の家』

『沖縄からの便り vol.12』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

今回は焼失から1年経った首里城での再建イベントのレポートから、令和2年度よりRC造も対象となった「サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応住宅型)」において採択された沖縄のRC造とCBと木の混構造の2住宅のうち、松田様が提案した「風と生きる花ブロックの家」についてご紹介いただいています。

風と生きる花ブロックの家

本稿の中で松田さんは、コロナ禍による生活様式の変容も踏まえ、内と外が一体となった住宅の重要性についても触れられています。

「沖縄建築に限らず、もっと外で快適に過ごすことを提案していくべきではないかと、考えています。

そして、それが省エネにも健康にも文化継承にも役に立つのならもっと推奨していけると思います。」

詳しい内容はこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.12

沖縄からの便りvol.12


首里城が焼失して1年が経ちました。

首里城公園では、この節目に首里城プロジェクションマッピング・首里城復興沖縄空手演武会を行いました。昨日は満月で、また台風が近海で発生しているせいか、風が心地よく吹いていたので自宅から徒歩で首里城に向かいました。

久しぶりに賑わう首里城公園。守礼門を抜けて

歓会門にて満月と黄金の龍

北殿の城壁にダイナミックな音と映像で首里城が映し出される

気がつくと自然と涙が頬に伝っていきました。再建に向けての心が一つに。

私にとって首里城は、実は祖父が戦争で焼けた首里城跡に土をかけて整地を行っており、父が30年前に復元設計を担当して、現在兄が沖縄県で再建に関わっており、どこか近いけど、どこか遠い存在です。子供の頃、父に連れて行ってもらった首里城跡の敷地、高校時代首里城で過ごした思い出、そして大人になって建築の仕事を就いてからの感じる想い、日々変化していきました。

「土地の記憶」について、建築との関わりを深く考えるようになりました。
沖縄の文化、風土を大切に未来に残していきたい、そんな沖縄県民の想いが一丸となっているのを感じています。

同じように、私たちは環境共生住宅という観点からも沖縄の気候風土を生かした住まいを、未来に残していきたいと思っています。

まさに昨年の夏の投稿で、「サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応住宅型)では、木造のみを評価していますが、RC造、混構造は、気候風土に適応していない構造なのでしょうか。」
と書いておりましたが、今年度からなんとRC造も対象となり、私を含め沖縄からRC造とCBと木の混構造の2住宅が採択されました。

外部が過酷な環境ではない沖縄では、快適な外部を生かした住まいが省エネにつながります。

卓越風がほとんどない。

4m以上の風が吹いている時間が一年中60%を超える。

一方で、強い紫外線や塩害、台風常襲地であるため耐候性は重要です。さらに温度だけでなく、常に湿度が高いためその対策も検証する必要があります。

ある程度、断熱と気密で守られれば快適につながる住宅よりも、開放型住宅への評価は、もっと複雑です。
だからといって、評価を今後もしないとなると沖縄らしい住宅が減っていき文化も景観も変わっていきます。(実は、もうすでに変わってきています。)

日射遮蔽性能について、蒸暑地以外では省エネに繋がらないことや塗料のように実際色の確認が容易でない、劣化がしやすい、等の理由で評価につながっていないものもあります。

今回、提案した住宅に関して独自に日射遮蔽効果を試算したところ法基準による計算では、冷房エネルギーを年間42GJ使うという結果でしたが、日射遮蔽効果を加味して試算すると26GJ使うという結果になりました。

法基準算定による一次エネルギー消費量

花ブロック、遮熱ブロック、塗料による日射遮蔽効果加味後の試算

風と生きる花ブロックの家

現在のところ、外皮基準も冷房期の平均日射熱取得率が3.2から6.7に運用されることが決定しているので、法基準に満たされない住宅は、ほとんどなくなりました。

でも根本的な課題を避け、なくなったようにしているだけなのかもしれません。

これから新築でのZEH(ゼロエネルギー住宅)を平均化していくという方針であれば、例えば沖縄では実際は26GJしか使われない冷房エネルギーを42GJ使うという判断で、再生エネやそれに替る設備投資等を行わないといけなくなる可能性があります。

もちろん、今までの建築様式を変えて対応すれば容易にクリアできるのかもしれませんが、どうして間違った造り方をしていないのに、変える必要があるのでしょうか。

変えることで受け継がれてきた風土や文化は、どのように変容を遂げてしまうのでしょうか。

さらに今年は新型コロナウィルスの感染が広まり、多くの犠牲や命が失われていきました。

今書いている時点(2020年10月31日)は、沖縄県では、32人の感染が新たに確認され、直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者は14.48人と29日連続で全国ワーストが続いている状態です。

 

沖縄建築に限らず、もっと外で快適に過ごすことを提案していくべきではないかと、考えています。

そして、それが省エネにも健康にも文化継承にも役に立つのならもっと推奨していけると思います。

ZOOMやSKYPEなどが常用されるようになってから、「場所」としての意識も強く考えるようになりました。

沖縄にいる意味はなんだろう。ここでしか体験できないことはなんだろう。

木陰から眺める海

もちろん、もっと健康を考える。自分で治せる免疫力をつける。

ちょっと疲れたり微熱があればしっかり休む。そんな当たり前のことを見直すきっかけになりました。

人との関わりを大切に、なんでもない普通の幸せな毎日を過ごせていけたらいいですね。

皆様もどうぞご自愛なさってください。

DSC_0749

「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年から2019年まで特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事を務めた。一級建築士。2020年、松田まり子建築設計事務所設立。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編
・vol.11 2019年夏編
・vol.12 2020年秋編

『北海道からの便り vol.10』が届きました


北海道の櫻井さんから、春の便りが届きました。

今回は、2019年の秋にご紹介いただいていた「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」のその後についてご紹介いただいています。

「2019年10月から始まった第2期募集も、おかげさまで着々と建設希望者さんが決まり、第3期の準備も始まっているようです。」

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」第2期募集HP

「ヴィレッジのプロジェクトが始まった時は本当に周りにお家が少なかったのですが、気がつけばすっかり住宅地の雰囲気です。ヴィレッジ内は千鳥に配置計画されているので隣家との距離が取れてゆったりしています。

おかげさまで、第1期に「てまひまくらし」というモデルハウスを武部建設*1さんとのコラボレーションで建設させていただいてから、「てまひまくらし」を気に入ってくださったお客様から依頼をいただき、隣地を空けてお隣に住宅を建設中です。」

詳しい内容はこちらからどうぞ

■ 北海道からの便り Vol.10

北海道からの便りvol.10


春の北海道からお届けします。

新型コロナウイルスの影響で、世界中がざわついて、オリンピックもついに延期になってしまいましたね。いつも通りの毎日を過ごせずに、歯がゆい日々を送られている方々もたくさんいらっしゃると思います。また、亡くなられた方々には心からご冥福をお祈り致します。

そんな状況ですが、いつもより早めに北海道にも春の足音が聞こえて来ました。社会の状況は不安でいっぱいですが、いつもと変わらない日差しが日に日に暖かくなって来ているのを感じてホッとする思いです。

ようやく春めいて来た北海道から2019年冬に寄稿させていただいた、「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」*1の引き続きその後をご案内したいと思います。

2019年10月から始まった第2期募集も、おかげさまで着々と建設希望者さんが決まり、第3期の準備も始まっているようです。

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」第2期募集HP

ヴィレッジのプロジェクトが始まった時は本当に周りにお家が少なかったのですが、気がつけばすっかり住宅地の雰囲気です。ヴィレッジ内は千鳥に配置計画されているので隣家との距離が取れてゆったりしています。

おかげさまで、第1期に「てまひまくらし」というモデルハウスを武部建設*1さんとのコラボレーションで建設させていただいてから、「てまひまくらし」を気に入ってくださったお客様から依頼をいただき、隣地を空けてお隣に住宅を建設中です。

最近の「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」
長沼南幌線側から街区に入ったところ

武部建設さんとのコラボレーションで2棟目を計画するにあたり、
・1棟目「てまひまくらし」で得た経験を最大限生かし、さらに合理的に無駄なく良いものを作る。
・階高、間口寸法、屋根勾配、地域材の外壁については「てまひまくらし」踏襲して、町並みとしての統一感を図る
・プラン、配置計画はクライアントの暮らしに寄り添いフィットする提案をする。

というテーマを決めて、1棟目での反省点をお互いに確認し会って2棟目に生かしながら計画を進めました。

おかげさまで、その後3棟目(2020年7月着工予定)4棟目(2020年秋着工予定)と、つぎつぎお声かけいただき、次なる3期目を視野に入れて頑張っているところです。

武部建設さんとアトリエmomoのコラボレーション2棟目が建設中
奥に見えるのが第1期のモデルハウス「てまひまくらし」

現場監理でしょっちゅうヴィレッジに行きますが、第1期の住まいを購入された方々、ヴィレッジ周辺の住まいの方々と次第に良好なコミュニティができつつあることを肌で感じます。
ご近所の小学校高学年くらいのお兄ちゃんやお姉ちゃんが、小さな子達を面倒見ながら一緒に遊んでくれていたり、ほほえましい光景を垣間見たりします。

北海道、南幌町主催で住民の方々の懇談会も数回開催されて、すでにお住いの方々、これから移住される方々が集まり、ヴィレッジでのこれからの暮らし方を話し合う場も設けられ、「ガーデニングをしたいけれど、わからないことだらけ。詳しい方を呼んで、みんなで教えてもらう機会があったらいいね。」「隣地の草刈りは、みんなでヤギを飼って食べてもらったらいいよね。」「今年は雪が少なかったけど、敷地内のマウンドがいい滑り台になって楽しめた。」などなど、楽しいヴィジョンや南幌暮らしを楽しまれている雰囲気が伝わる懇談会でした。

産官学で協働しているからこそその後のサポートもしやすいメリットもあるのではないでしょうか。プロジェクトの枠組みの押し付けではなく、
趣旨を理解くださっている方々が住まわれることで、共有意識も芽生えて、他力本願ではなく純民の方々の当事者意識も高まりながら良好なコミュニティが育っていくきっかけになっていけば良いと思っています。

ちょうど、新たな北海道における住宅のスタンダードを目指す「北方型住宅2020」*3の基準が正式に北海道庁より発表されました。「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」では全棟この新基準が適用されます。これまでの北方型住宅基準に比べ、断熱性能がさらに向上し、
耐震性能を強化させることで、より快適で安全な暮らしを手に入れることができます。

また機会があればぜひ3期目の様子もレポートできればと思います。

「北方型住宅2020」HP

<関連サイトのご紹介>
*1 南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ
https://www.kita-smile.jp/kitasmilevillage

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」は、北海道、南幌町、北海道住宅供給公社、(一社)北海道ビルダーズ協会、(公社)日本建築家協会北海道支部が主催し、北海道がおススメする地域工務店と建築家(きた住まいるメンバー)が、南幌らしい暮らしとまちづくりを提案するプロジェクトです。
このような取り組みが、南幌町にとどまらず同じような課題を持った市町村にも波及していく可能性を探りながら、さらなるモデルプロジェクトとしての役割を果たせればと思っています。

*2 武部建設株式会社
https://www.tkb2000.co.jp/story/temahima/

*3 北方型住宅2020
https://www.kita-smile.jp/north2020
https://www.kita-smile.jp/img/north2020.pdf

130731_sakurai櫻井 百子(さくらい ももこ)

1973年北海道旭川市生まれ。北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て2008年アトリエmomo設立。身近な材料を使いながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。

[北海道からの便り バックナンバー]
・北海道からの便り vol.1
・北海道からの便り vol.2
・北海道からの便り vol.3
・北海道からの便り vol.4
・北海道からの便り vol.5
・北海道からの便り vol.6
・北海道からの便り vol.7
・北海道からの便り vol.8
・北海道からの便り vol.9

『北海道からの便り vol.9』が届きました


北海道の櫻井さんから、久しぶりのお便りが届きました。

今回は、2017年に少しお話いただいていた「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」のその後をご紹介いただいています。

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ(全景)

『「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」は、北海道、南幌町、北海道住宅供給公社、(一社)北海道ビルダーズ協会、(公社)日本建築家協会北海道支部が主催し、北海道がおススメする地域工務店と建築家(きた住まいるメンバー)が、南幌らしい暮らしとまちづくりを提案するプロジェクトです。

全国的にも珍しい取り組みだと思うのですが、産・官・学連携で住宅展示場を開設、運営できるのは、厳しい気候の中でより良い住環境を提供するために常に情報交換をしながら技術や経験を積み重ねてきた先人たちのおかげで、そういう誇れる文化が北海道にはあるからだと思っています。

このプロジェクトの素晴らしいところは、ただ住宅や土地が売れれば良いということでなく、今私たちが建設できる最新の知恵と技術で地域らしい(南幌らしい)暮らしを提案して発信するということです。(本文より抜粋)』

詳しい内容はこちらからどうぞ

■ 北海道からの便り Vol.9

北海道からの便り vol.9


冬の北海道からお届けします。

久しぶりに投稿させていただきます。以前の内容を確認していましたら2017年の冬でした。

前回も少し触れさせていただいた、「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」のその後をご案内したいと思います。

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」は、北海道、南幌町、北海道住宅供給公社、(一社)北海道ビルダーズ協会、(公社)日本建築家協会北海道支部が主催し、北海道がおススメする地域工務店と建築家(きた住まいるメンバー)が、南幌らしい暮らしとまちづくりを提案するプロジェクトです。

南幌町は、南石狩平野のほぼ中央に位置し、岩見沢市や江別市、北広島市、長沼町に隣接しているまちで、札幌からも32kmとほど近く、南幌から札幌に通勤する人も少なくなく札幌市中心部まで約35分で到着できるという便利な立地も魅力的なところです。

全国的にも珍しい取り組みだと思うのですが、産・官・学連携で住宅展示場を開設、運営できるのは、厳しい気候の中でより良い住環境を提供するために常に情報交換をしながら技術や経験を積み重ねてきた先人たちのおかげで、そういう誇れる文化が北海道にはあるからだと思っています。

このプロジェクトの素晴らしいところは、ただ住宅や土地が売れれば良いということでなく、今私たちが建設できる最新の知恵と技術で地域らしい(南幌らしい)暮らしを提案して発信するということです。

また、日頃設計している住宅は、街の中で点のような存在ですが、このプロジェクトに参加するということは面でまちづくりに関われるということにも魅力を感じ、実力ある地域工務店とタッグを組むということで、岩見沢の武部建設さん*1 にお声掛けして参加に至りました。

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」のHP
https://www.kita-smile.jp/kitasmilevillage
https://www.replan.ne.jp/articles/5056/

先行して北海道とその委託を受けた日本建築家協会北海道支部が事業のコンセプトや全体計画を進め、2017年1月からプロジェクト参加者の応募がはじまり、その後参加グループが決定、参加グループと関係機関メンバー全員で20回もの全体会議を行いながら、手探りしながらのプロジェクトが進んでいきました。

「クオリティファースト」というテーマを掲げ、「小さく豊かに暮らす」「この“まち”で暮らす」「長くていねいに暮らす」という3つのサブテーマを基盤に6つのグループがそれぞれのモデルハウスの計画を進め、内容は全体会議の中で共有しながら配置計画をブラッシュアップし、千鳥配置による緑のつながりや風の通り道、南幌らしい暮らし方をより生かすことのできる配置計画となりました。プロジェクトを効果的に周知発信するための現場見学会や構造見学会、バスツアーなどのイベントも行いました。

「南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ」配置計画

また、特徴の一つとして忘れてはいけないのが、プロジェクトに参加しているメンバーは、北海道が平成26年から登録・公開している、一定の基本ルールを守る住宅事業者である「きた住まいるメンバー」であるということです。

登録には、省エネ・耐久・耐震という「基本性能の確保」、BISやBIS-E*2などの「専門技術者による設計・施工」、家づくりに関する「記録の保管」という3つが求められ、北海道では、基礎基準よりも高い性能を確保し、先進的な家づくりを行う「きた住まいる」メンバーの取組みを「きた住まいるブランド住宅」として登録しており、登録されるためには、長寿命、環境との共生、安心・快適、地域らしさという4つのいずれか、もしくは複数について卓越した技術や先駆的な取組みなどが要件になっています。

2018年6月、それぞれのグループが共通のテーマを基盤に、モデルハウスが完成し、行われた完成イベントには1200人もの来場者がありました。11月までは展示場として随時公開され、約3000人の来場者がありました。11月からは各モデルハウスの販売が本格的に始まり、それぞれの「南幌らしい暮らし」が始まっています。

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ

南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ(全景)

モデル展示期間から、居住者が住んでいる期間も通して、北海道大学の菊田先生の研究室による通年の温熱環境や空気質などの測定を行なっており、暮らし方のヴィジョンと居住空間が設計者や施工者の意図とマッチしているか、設計時に想定されている温熱環境が得られているかがより明確に見えてくることと思います。

2019年10月からは第2期のプロジェクトメンバーの募集も始まりました。*3
このような取り組みが、南幌町にとどまらず同じような課題を持った市町村にも波及していく可能性を探りながら、さらなるモデルプロジェクトとしての役割を果たせればと思っています。

<注訳>
*1 武部建設株式会社 https://www.tkb2000.co.jp/

*2 BIS BIS-E 登録制度  http://hobea.or.jp/bis/

*3 南幌町みどり野きた住まいるヴィレッジ2期スタート  https://www.replan.ne.jp/articles/11941/

130731_sakurai櫻井 百子(さくらい ももこ)

1973年北海道旭川市生まれ。北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て2008年アトリエmomo設立。身近な材料を使いながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。

[北海道からの便り バックナンバー]
・北海道からの便り vol.1
・北海道からの便り vol.2
・北海道からの便り vol.3
・北海道からの便り vol.4
・北海道からの便り vol.5
・北海道からの便り vol.6
・北海道からの便り vol.7
・北海道からの便り vol.8

『沖縄からの便り vol.11』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の風を皮切りとし、2018年から始めている「沖縄の建築士有志で省エネ基準や住宅の温熱環境についての勉強会」についてご紹介いただきました。

※「おきなわ省エネがわかる勉強会」

「冷房期の平均日射熱取得率をηACAC値についてひたすら手計算で学び、考えている地域は全国でも沖縄だけではないでしょうか。」

松田さんによれば、沖縄でも手計算で学ぶのは、この勉強会だけなのではないか、とのこと。

詳しい内容はこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.11

沖縄からの便りvol.11


皆さん、今年の夏いかがお過ごしでしょうか。

2019年 沖縄の夏の海

最近多発している台風の影響もあるのか、外の風を強く感じます。

先日試しに風速計で測ってみたところ、事務所のある建物の前で13.3メートルを記録しました。(2019/8/8)台風9号が近くを通り過ぎるときでした。

Wind Alertの測定画面

日陰には、温度が下がる上に、涼しい風を呼び込むことができる効果があるそうです。なければ強い日差しを浴びて一瞬で日焼けしますね。

観光客の方は、薄着や水着を着て夏の日差しを浴びて日焼けを楽しんでいますが、地元では男性も割と日焼け止めを塗ったり、白いタオルを巻いたりして熱や日差しから身を守っています。

この考えは、建物も同じかもしれません。

 

2018年から沖縄の建築士有志で省エネ基準や住宅の温熱環境についての勉強会を始めています。

冷房期の平均日射熱取得率をηACAC値についてひたすら手計算で学び、考えている地域は全国でも沖縄だけではないでしょうか。

(沖縄でも手計算で学ぶのは、この勉強会だけだと思います。)

※「おきなわ省エネがわかる勉強会」

庇はどのくらい出せば有効なのか。出せば出すほど有効なのか。

庇の直下に開口があるのと、垂れ壁があるのはどの程度差異があるのか。

この建物では、どの位置の開口部に設けたら一番効果が高いのか、実際の建物や各々が設計した住宅で検証していきます。

※この建物では、南向きの窓には垂れ壁なしで長さ1350mmを採用しました。

他にも断熱材は、どの種類でどの厚みが最適なのだろうか。

厚み30mm、種類は

効果だけでなく、シロアリや台風の影響の受けにくい構造など、敷地の条件から考えながら選択するなど想像力や新たな発想力も必要です。

さらに日射遮蔽をいかに安価で高い効果を発揮するものは、どの手法だろうか。
少々高くてもLLC(ライフサイクルコスト)を考えるとどうなるのだろうか。
疑問はどんどん出てきます。

8地域以外では、省エネ基準においてやはりUA値の基準の方が厳しく、ηAC値はUA値をクリアすれば容易にクリアできる状況だと思います。

UA値の基準がない8地域では適正なηAC値はどれくらいか、地域の建築士達の中でも、見直していく時期が来ていると思います。これまでNPOが蓄積してきた住環境の計測データも役に立ちそうです。

この勉強会でわかってきたことの一つは、

ηAC値クリアのためには、
・遮熱塗料や白く塗る必要はない。(効果を数値として算入できない。)
・軒は出す必要がない。(窓に当たる庇の効果は算入できるが、軒の効果の計算式がない。これは通常、壁に断熱材を充填するので軒の効果はそこまで見込めないが、壁に断熱材を使用しない8地域でこそ軒の日射遮蔽効果がある。)
・花ブロックや植栽は設置しても計算に反映しない。
ということです。

コストを上げずにただ単に効率的にηAC値を下げるには、県外から移入した木材で木造にし、窓を最小に壁体内に断熱材を充填することで簡単にクリアできます。
(もちろん、これらの木造に特に否定的な気持ちはありません。ひとつの解だとも思います。)

ただ、本当に基準値を満たすだけで沖縄らしい涼しい家ができるのでしょうか。

先人からの知見をもとに発展させてきた建築士の技術は一体何だったのだろうか。唯一、地産地消できるRC造を採用する意味はあるのでしょうか。

沖縄における気候風土に適した住宅づくりの取組み

ηAC値をクリアしたところで、アマハジに軒がなければ、風は入ってきません。そもそも通風経路となる窓がなければ、室内に通風を効果的に呼びこむことすらできません。

壁への日射遮蔽は、シロアリが大好きな断熱材を使用するのではなく、軒を出す、花ブロックを建てる、植栽をすることで行うのが、沖縄の気候風土を考えると正しい気がします。

※これまでの建てられた沖縄における環境共生住宅における外皮基準値

台風が来ても揺れにくい、津波が来ても流されない防災型のRC造をエコな住宅として評価していくという課題もあります。
現況との差異が大きいηAC値基準が設定される中(現在は3,2)沖縄での省エネ住宅をミスリードしていく危険性が否めない状況です。

現在、サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応住宅型)では、木造のみを評価していますが、RC造、混構造は、気候風土に適応していない構造なのでしょうか。
沖縄県は、これまでも優遇事業(低炭素住宅・長期優良住宅・ZEH)が、独特な気候な為、なかなか反映しにくい現況がありました。

北から始まった省エネ基準があるならば、南から始まる省エネ基準もあっていいという声が上がってきています。
灼熱の島だけに、8地域の省エネ基準をめぐる討論も熱いです。
(先日の国土交通省と沖縄建築関係団体との意見交換会では、開始前に団扇が配られました。笑)

2030年、2050年、と省エネをめぐる目標を目指しながら、沖縄らしい建築が途絶えることなく続くように地域の建築士として、学んできたこと感じてきたことを素直に伝え続けたいと思います。

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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編
・vol.11 2019年夏編

神戸からの便り『里山上津台の家』が届きました。


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田さんからの冬の便りが届きました。
今回ご紹介いただいたのは、豊田さんが設計された、神戸里山住宅博の街区に建つ「里山上津台の家」についてです。

「建築関係者は、神戸里山住宅博(以下、里山住宅博)という言葉を耳にした方も多いかと思います。工務店と職方が造る木の家をテーマに2016年6月に神戸市北区にグランドオープンしました。街区には建築協定と設計ルールが定められ、斜面の里山は住人の共有地になるという面白い試みです。」

続きはこちらからどうぞ
神戸からの便り『里山上津台の家』

LDKから中庭を見る。

神戸からの便り『里山上津台の家』


 

トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田と申します。2019年の冬の便りは、神戸里山住宅博の街区に建つ「里山上津台の家」を紹介いたします。

建築関係者は、神戸里山住宅博(以下、里山住宅博)という言葉を耳にした方も多いかと思います。工務店と職方が造る木の家をテーマに2016年6月に神戸市北区にグランドオープンしました。街区には建築協定と設計ルールが定められ、斜面の里山は住人の共有地になるという面白い試みです。

神戸里山住宅博の様子。正面に見えるのは堀部安嗣氏が設計したヴァンガードハウス。

私が設計した里山上津台の家の住まい手は、里山住宅博の街区に興味があり、里山住宅博オープン後に出展工務店さんを色々回られて、最終的に私の事務所に土壁の家を建ててほしいと依頼がありました。

LDKから中庭を見る。

この家の冬のテーマは、3つありました。
1、 共働きの家族のために不在時でもお陽さまを取り込めるようにする。
2、 エアコン一台で居室のみ暖房する。
3、 寝室の温湿度を安定させる。

断熱性能をQ値1.9w/m2K程度まで高めるのは当たり前として、今回特に重視したのは、住まい手の生活スタイルと生涯設計でした。

1、共働きの家族にあったお陽さまの取り込み方

この家が中庭型になっている主な要因は共働きの家族への配慮からです。共働きの場合、平日の日中は不在となるため、南面に窓を設けてもカーテン等で閉じている家族が大半ですが、中庭型にすると、不在時でもカーテン等を閉じなくてもよい状況をつくりだすことができます。中庭に面する和室の屋根は、日射を取り込むため切妻にし、LDKの窓は幅4m高さ2.7mの木製建具としました。中庭の入口は、木格子戸を設けたので不在時に中庭に入られる心配もありません。

平屋中庭型を上空から見る。

和室の屋根を折り曲げ、LDKへ日射を取り込む。

和室は、直射日光が入ると畳が不揃いに焼けてしまうので、採光と通風換気のために南面軒下に窓を設けました。中庭は、和室の北窓から眺めることができます。

和室は土に囲まれた空間。

滞在時間が少ない和室は、直射日光が入りにくいように設計したため、サンルームに取り込んだ熱を和室へ送ることができるように温度センサー付きの換気扇を設けました。サンルームの温度があがると、自動で和室へ熱が送られ、湿度が上がると、湿度センサー付きの換気扇で外部に排出します。住まい手は、就寝前に洗濯物を干す習慣があり、センサーを組み合わせた熱湿気移動を考慮しました。冬の使用感は、和室に入った時も暖かさを感じるようで、思いのほか好評。設計した私も少し驚きでした。

2、エアコン一台で居室のみ暖房する

里山住宅博では、いくつかの工務店さんがエアコン1台で暖冷房する方法を提案され実践されていました。床下エアコンもあれば、ダクトで配管する方法もありさまざまです。ただ、私が提案する土壁の家は、床下エアコンで基礎コンクリートに蓄熱したあと、さらに土壁で蓄熱させるのは、さすがに無理があるだろうと思い、LDKと寝室2室の中心にエアコンを設けそれぞれの部屋を区画暖房する方法を提案しました。結果として、平屋、かつ、LDKと寝室の配置計画がとてもうまくいったと思っています。
休日の日中は、寝室の戸を閉めてLDKのみ暖房し、就寝時は、寝室の戸を少しあけLDKの間仕切スクリーンをおろして暖房します。現在、スクリーンは、まだ未実装なので、今は、LDKの天井扇を使って、寝室へ熱を回しているようです。住まい手自身が考え、自分たちに適した住まい方を実践されていることがとても重要だと感じました。

天井に埋め込んだエアコン。右手の天井スリットは区画用スクリーン取り付け箇所。

3、寝室の温湿度を安定させる

仕事で疲れ、仕事着のままベッドに横たわりいつの間にか寝てしまったという経験は誰もがあることだと思います。起きたら、体が冷え切りぞくっとすることも。やはり人間は就寝しているときが、一番気をつけないといけない時間だと感じています。
共働きの場合、6時に起床し8時に出勤、19時に帰宅し24時に就寝する生活スタイルを踏まえると、LDK等の滞在時間は7時間で、寝室は6時間となり、寝室への配慮を行うのは妥当な判断だと思います。このことから、寝室には土壁を最優先で採用していただくよう提案しています。もちろん、土を塗っただけでは低温で室温が安定してしまう可能性があり、集熱と断熱と蓄熱を考慮して設計する必要があります。

寝室は、住まい手自ら土塗り。

里山上津台の家は、2018年3月に竣工してから、初めての冬を迎えました。冬を約一ヶ月間過ごしてみて、従前の生活から変化はあったのか、また、床暖房はあったほうがよかったか住まい手に聞いてみたところ、
「床暖房の必要性は感じません。伝熱性が低い無垢材では、素足でも冷たいと感じることは余りありません。あと、頭痛が激減しました。冬場に肌の乾燥による痒みが激減しました。」
との回答でした。

「もう一回家を建てるとすると、今ぐらいの断熱性能にするのか、それともさらに断熱性能をあげるのかどちらでしょうか」という質問には、
「今の断熱性能で十分だと思います」
との回答でした。

ほっと一安心するとともに、性能を明確にすることの大切さを知った住まいづくりでした。

玄関アプローチ

竣工後、8機のデータロガーで温湿度を測定中です。住まい手の感想とデータがどういった相関関係にあるのか調査分析していきたいと思います。

室温と共に、土壁と断熱材間の温湿度測定中。

*
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豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都造形芸術大学大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など左官職を生かした家づくりを行っている。

「南禅寺の家」では、(財)建築環境・省エネルギー機構主催「第5回サスティナブル住宅賞」において「国土交通大臣賞〔新築部門〕」の他、第9回木の建築賞 木の住宅賞、第7回地域住宅計画賞 地域住宅計画奨励賞も受賞している。

★同じ著者の他の記事を読む
京都からの便りvol.1『南禅寺の家 夏の便り』
京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
京都からの便りvol.4『南禅寺の家 冬の便り』
奈良からの便りvol.1『ならやまの家 夏の便り』
奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』
・神戸からの便りVol.1

里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』が届きました。


神奈川県藤野の里山長屋からいつもお便りを送ってくれている山田貴宏さんから、特別編として『陸前高田市 施設「ペチカ」』についてご紹介いただきました。

「秋の気配が深まってきた10月中旬、岩手県陸前高田市にある、「ペチカ」を訪問しました。2017年のはじめごろから当方で設計を担当し、その年の暮れに竣工を迎えた木造二階建ての建物です。(本文より)」

続きはこちらからどうぞ
里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』

ペチカ外観

 

里山長屋からの便りvol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」』


秋の気配が深まってきた10月中旬、岩手県陸前高田市にある、「ペチカ」を訪問しました。2017年のはじめごろから当方で設計を担当し、その年の暮れに竣工を迎えた木造二階建ての建物です。

ペチカ外観

地元の建設会社さん(長谷川建設)の、住宅を想定したショールームとして整備し、かつ、町に開かれた拠点となるカフェとしても機能するようにしています。カフェに加えて、「まちライブラリー」の機能も備え、人々の交流拠点となっています。施設の技術的なご要望としては、環境配慮型の建物としてその技術をこれから住まいの建設を検討しているお客様にお見せするショールーム的な場所としたい、ということでした。が、環境に配慮した住環境、というのは何もハード技術だけで成立するものではありません。地域の中で、住人の方々がコミュニケーションを持ち、お互い有機的で健康的な結びつきを育むことも、エコロジカルな暮らしに通じるものだと考えています。

ペチカ内観/まちライブラリーとしての機能も併せ持つ

※関連リンク(外部サイト):ペチカ カフェ&ライブラリー
※関連リンク(外部サイト):まちライブラリー/場を作り、そこに皆が本を持ち寄ることで、本をきっかけとして人と人のつながりを生み出す仕組み。

昨今、高断熱高気密の議論ばかりが環境配慮型の建築の俎上に上がっています。それはそれで大変重要な基礎技術ですが、本来、環境とは、総体的なものであり、一つの技術だけに特化して成立するものではありません。環境技術はもちろんのことですが、暮らし方、地域の素材、地域の技術、職人さんなども環境建築を構成する大切な要素だと思います。環境に配慮した建築を作ることは、小さな循環の中で多様な地域資源を重層的に使うことが必要になります。そうだとすると、地域で建築を作ることは、地域の環境関係資本を結びつけるハブ役になることが期待されるわけです。このプロジェクトは、まだ、震災からの復興途上のまちで、これからのあるべき住環境と地域との関係を表現しよう、ということを目指しました。

さて、そうは言っても、そのベースとなる環境技術は、このショールームを訪問した方に、わかりやすくその技術を説明出来ることがまずは大事です。
この建物では、環境技術として、以下の要素の取組みを整えました。
・ダイレクトゲインによる太陽熱利用
・土間、壁、レンガ壁など、蓄熱容量を増やすことで安定的な室内温熱環境を形成
・輻射式冷暖房設備による穏やかな室内温熱環境制御
・夏の遮熱装置として外付けブラインド
・地元の素材による建築
・自然素材による内外装

ペチカ外観(夜間)/南側は積極的に日射を取り込めるように、ガラス面を多用している

敷地はそれほど大きなものではなく、約60坪。道路は北側に接道しているので、駐車場とのバランスで、最大限南側に空地をとるようにプランニングに配慮しました。南側隣地の建物の屋根の上を通り越して、冬場でも太陽のダイレクトゲインが得られるように、南側のファサードは積極的に日射を取り込めるように、ガラス面を多用しています。南側の空間は小さいながらも土間空間として、また、直接日射が当たる壁面も左官土を塗り、熱容量をかせぐようにしています。

直射日射が当たる壁面には左官土を塗ったり、タイルを貼り、熱容量をかせぐように工夫している

敷地が狭いゆえ、床面積を優先すると、庇が十分確保できないような状況もあり、この南側のガラスファサードには夏場対策として、日射が当たりやすい1階部分は全面的に外付けブラインドを設置しました。まだまだ廉価に導入できる仕掛けではありませんが、日射取得量が大きく違ってくるので、大変有効であると考えます。筆者は最近スイスに視察に行きましたが、かの地では、すでにほとんどの建物で外付けブラインが当たり前のように設置されています。数年前に訪れた北欧でもそうでした。断熱議論が盛んな日本ですが、これがひと段落すると今度は窓面の性能に話題は移るはずで、そうすると、断熱ブラインド、遮熱外付けブラインドにも改めて注目が集まることと思います。

夏の遮熱装置として外付けブラインドを設置した

今回は、エアコンに頼らない冷暖房を心がけました。夏は本来、比較的冷房時間が少なくても過ごせる気候環境ですので、輻射型の冷房は緩やかに室温を下げておける、体に負担間の少ない状況を作れる、ということで採用をしました。今回はPS冷暖房の設備を採用しています。1階の階段脇に空間の間仕切りを兼ねて1パネル、二階の吹き抜けと執務空間を緩やかに仕切る場所に1パネル設置。いずれも部屋の真ん中に設置することで、輻射が満遍なく周囲に行き届くような配置としています。

ペチカの煙道とPSの冷暖房設備

それに加えて、今回採用したのが「ペチカ」です。まさしくこの施設の名前の由来でもあります。輻射パネル装置と機能としては重複する部分がありますが、地域の地産地消エネルギーである、木質エネルギー型の暖房装置を採用しよう、ということでペチカが選ばれました。(長谷川建設ではペレットストーブ普及の取組みもされています。)

ペチカ、というのは、薪ストーブなどの焚口と組み合わせ、排気をレンガ積みのパネル型の煙道の中を通す仕組みです。レンガのパネルが排気で温まることでそこからの輻射暖房効果を期待します。かつてロシアなどの寒冷地で普及したものです。これもやはり部屋の中央に配置するプランニングとして、この施設の象徴的なしつらいとすることができました。ペチカ周りにはやはりレンガの蓄熱壁をさらにもうけ、ダイレクトゲインを期待する蓄熱材としても機能します。

ペチカ周りにはレンガの蓄熱床をさらにもうけ、ダイレクトゲインを期待する蓄熱材としても機能させている

構造、内外装材の木材は地元の杉、ヒノキ、松を採用。ご多聞にもれず、地産地消の家づくりを目指しました。

さて、昨年の冬に竣工し、やがて二回目の冬を迎えようとしているわけですが、最近訪問したおりに、使い心地について、オーナーさんにいろいろとお話を伺いました。秋が深まってきている季節ですので、その時の外部の気温は夕方で12、3度ぐらい。コートが必要なくらい肌寒い状況です。室内は20度を少し切るぐらいの温度。内部は全体的に柔らかく適温な印象で、温度の感覚を忘れるぐらい過不足ない状況でした。おそらくこうした状況を「快適」というのだと思います。

残念ながら本命のペチカはまだ今シーズンは稼働していない、ということでしたが、パネル輻射暖房は継続的に動かしているとのこと。設定温度を聞いてみると20度で稼働している、ということで、パネル表面を触っても温かくともなんともありません。(体温が36度近辺だから当たり前)しかしながら、20度であっても輻射型の発熱体が部屋の中心にあり、それがいつも部屋の温熱環境を下支えしている、という感覚は改めて持つことができました。

陸前高田は東北地方にあり、冬はそこそこ寒冷な状況になり、しかしながら太陽日射量は太陽側特有でしっかりとあることから、今回のプロジェクトではペチカ/輻射パネル暖房と土間蓄熱によるダイレクトゲインというパッシブデザインの組み合わせを採用するに至りました。地域の木質エネルギーを活用する、という点でも一つのとっかかりになるのではないか、と感じます。

冷暖房技術を中心に紹介をさせていただきましたが、こうした温熱感の快適な空間を体験出来る場所を作ったことと、それがコミュニティの一つの結節点として機能するような場としていることが重要だと思っています。健全なコミュニティを築く取組みと、自然エネルギーを利用した良好な温熱環境を実現している空間が一致しているのが良いのではないでしょうか。
今後もこうした総体的な環境配慮型の建築づくりの普及が望まれます。

kinei_yamada山田貴宏(やまだ たかひろ)

早稲田大学建築学科都市環境工学修了。清水建設、長谷川敬アトリエを経て、現在ビオフォルム環境デザイン室主宰。主に国産材と自然素材を中心とした、地産地消でかつ伝統的な木の家造りを中心とした建築/環境設計を行う。パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりをめざす。建物とそれを取り巻く自然/コミュニティまで含めた幅広い環境と場づくりがテーマ。
著書:「畑ついているエコアパートをつくろう」(自然食通信社 共著)、「里山長屋をたのしむ」(学芸出版社)

◇里山長屋からの便り バックナンバー
・里山長屋からの便りvol.1『夏編』
・里山長屋からの便りvol.2『冬編』
・里山長屋からの便りvol.3『住まいの温熱環境を科学的に理解する時代』
里山長屋からの便りvol.4『あたたかな住まいのなかから考えた』
・里山長屋からの便りVol.5『陸前高田市 施設「ペチカ」について』

『沖縄からの便り vol.10』が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。

気象庁の発表(2018年7月23日)によると、今年の猛暑は日本全国に渡っています。
7月中旬以降、東日本と西日本では、太平洋高気圧に覆われて、晴れて気温のかなり高い日が続いていますし、7月中旬の平均気温は、関東甲信地方は平年差+4.1℃、東海地方は+3.6℃、近畿地方は+3.4℃、中国地方は+3.1℃と1961年の統計開始以来、7月中旬としては最も高くなったそうです。

しかし松田さんからの便りには、
「沖縄には、意外にも猛暑日はほとんどありません。また快晴日も一年に8日程度しかありません。
もちろん紫外線は最強なので、日向には居てもたっても居られません。
しかし日陰に来るとグッと温度が下がり、涼風を受けこのままハンモックにでも揺られながら、お昼寝ができそうです。」

とあります。

ビーチの日陰でお昼寝をしている赤ちゃん

そんな今年の状況から、風や緑を生かした沖縄の住まいづくりについて、ご提案いただいています。
続きはこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.10

沖縄からの便りvol.10


 

避暑地の沖縄

セミが朝からシャンシャンジージーと競うように鳴いています。夏がやってきました!今年は、青い蝶をよく見かけました。7月なのにトンボが真夏の空を仰いでいます。何かを知らせているのでしょうか。

全国各地のニュースで「猛暑日」「熱中症」が毎日のように報道され、どうしてこんなに命が奪われるのかと心を痛めながら観ています。

このままだと、どうやら沖縄は避暑地になるようです。

環境省地球環境局提供 2100年あすの予報 より

沖縄には、意外にも猛暑日はほとんどありません。また快晴日も一年に8日程度しかありません。

もちろん紫外線は最強なので、日向には居てもたっても居られません。
しかし日陰に来るとグッと温度が下がり、涼風を受けこのままハンモックにでも揺られながら、お昼寝ができそうです。

ビーチの日陰でお昼寝をしている赤ちゃん

以前の「ベトナムからの便りvol.2 “暑い夏の風物詩”」に、
“外出時間は早朝と夕方以降に限ります。日中暑い時は外に出ないのが基本。
それでも昼時に外で過ごす場合、日陰で休み体力温存を心がけるのが最良策といえます。”
とありました。

まさに沖縄でも同じです。暑い日は昼間、外を出歩きません。犬すら歩きません。どうしても歩くときは影を伝って歩くか、日傘をさします。運動公園でウォーキングする人が増えるのも、夕方から夜にかけてです。

ビーチで、サンサンの日差しを浴びて泳いでいるのは、長袖のラッシュガードを着せられたパワーを抑えきれない子供たちか、非日常的な南国の太陽を楽しむ観光客の方です。
どちらかというと、地元の人はビーチでは日影でバーベキューを楽しみます。
そして、やっぱり海で泳ぎたいなら、朝か夕方です。水着やビキニで泳ぎたいならば、日焼け止めが必須、しかも短時間が限度です。

ほとんどの人が長袖かTシャツ着用している地元のビーチ

 

風と共に生きる文化

沖縄で家を建てる時に重要視すべきことは、まず防災です。
当たり前のことですが、強い台風が来ます。台風時に耐えられること、命を守れること。これが一番大切です。
そして、その次が風の有効利用・日射遮蔽と続いていきます。
「風はいつも吹いているとは限らない。」
いえいえ、海に囲まれた沖縄では3.5m/s以上の風は流れている割合が8割にも上がります。

風速の時間割合(%)

庇に期待するもう一つの効果

とはいえ、那覇市の密集市街地では、なかなか風を取り込む事が困難な場合もあります。
ここで、強い日差しを遮る「庇」の出番です。
実は、庇を設ける事で風を取り込む事ができるのです。

風土に根ざした家づくり手引書より抜粋 発行:沖縄県土木建築部住宅課

袖壁も有効です。ウィンドキャッチャーとしての庇は、特に大きく出さずとも効果的です。設計者は、この有能な庇を多用せずには勿体ないですね。

風のシミュレーションは、今のところ一般人には難解です。
シミュレーションソフトも高価で、個人の設計事務所が気軽に購入することはできません。
もし、身近な存在のソフトが開発されれば、沖縄県の設計者が全国で一番影響があるかもしれません。

そんな中、楽しい流体シミュレーションアプリを教えていただきました。
手描きなので、図面をそのまま再現は難しいですが、無料なのでiphoneやipadをお持ちの方は、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

wind tunnelアプリで見つけた袖壁の効果

未来の沖縄を考えよう

先日、日差しが柔らかくなってきた夕方、散歩がてらに街中のサーモグラフィを撮影してきました。
熱いのは道路です。そして屋根面です。つまりは日差しを直接受ける水平面です。

那覇市内 国際通り付近

サーモグラフィを見てみるとよくわかります。赤いところ、白くなっているところが一番熱いところです。

あるRC造のアパート

エアコンの室外機の位置まで教えてくれます。
エアコンを使うことは、熱中症予防にも欠かせません。でも、このままだと地域を熱くする負のループになってしまいます。

そんな中、一際青く(涼しく)なっている家を見つけました。

地球温暖化対策のモデル建築?

100年後200年後の沖縄が、今より熱くならないためにはどうしていけばいいのだろう。キンキンに冷えた泡盛入りレモンサワーを飲みながら、ひとり考えにふけた夜になりました。

DSC_0749

「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
・vol.2 2014年冬編
・vol.3 2014年夏編
・vol.4 2015年冬編
・vol.5 2015年夏編
・vol.6 2016年冬編
・vol.7 2016年夏編
・vol.8 2017年冬編
・vol.9 2017年秋編
・vol.10 2018年夏編

2017年秋~2018年冬編・第3弾『岐阜からの便り』が届きました


写真3:断熱区画から外して、通りには繊細な建具を残した例

岐阜の辻さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の松田さん、京都の豊田さんに続き、『気候風土適応住宅』について書いていただきました。
伝統的な住まいならではのたたずまいを残しつつ、法律で定められた基準をどうクリアしていくのか、ご本人が設計した住宅を例にご意見をいただいております。

詳しくはこちらからご覧ください。

岐阜からの便り vol.3『気候風土適応住宅』

岐阜からの便り vol.3 気候風土適応住宅


建築物省エネルギー法で求められる建築性能として、①外皮基準(断熱と日射遮蔽)と②一次エネルギー消費量基準の2つがあり、2020年を目途に新築においてクリアすることが求められています。

この基準の目的を考えてみると、①外皮基準は、健康を守るために定められています。冬期においては部屋間の温度差を軽減してヒートショックや低体温症のリスクを減らすこと、夏期においては熱中症のリスクを減らすことを念頭に決められています。一方、②一次エネルギー消費量基準は、通常の新築住宅よりは少ないエネルギーで暮らせることとしています。

つまり、省エネ法の目標は、省エネ性が高くて暖かい家ではなく、最低限の健康と省エネを確保することです。ですが、これが適合義務化されると、建築することが難しくなる住まいも出てきます。

例えば、中も外も土壁真壁の家で、断熱材が入れられない住宅です。

私の住む岐阜県では、まだまだ土壁の家が多くつくられ、地域によってはそれが独自の街の風景を作ってきました。

写真1:土壁で防耐火性能を向上させたうだつのあがる街並み(美濃市)

土壁は工期がかかり、コストも高額になりがちなため、近年ではあまり使われなくなり、せっこうボードなどで仕上げる家が増えています。ですが、防火、防音、蓄熱といった土壁の良さもありますし、古民家の修復の際にもこれらの素材や技術力が必要になってきます。
写真2は、森林文化アカデミーの自力建設で土壁施工をしている写真です。ここでは、竹小舞から荒壁の材料まで学生が探してきて、土壁の職人さんから、それぞれの特徴や、施工方法、伝統的な組み方などの指導の下、施工を行いました。最後は、砂漆喰で仕上げましたがこちらの指導は別の職人さんです。
このように、それに関連する様々な職種や素材業者などの活用により、地場産業に活力を与え、伝統の技術や素材を継承し、文化材修復の際にも活かされており、伝統的な工法がなくなるというのは様々な損失が生まれてしまいます。

写真2:職人さん指導のもと、いぶした竹で小舞を編み、荒土を塗っている学生

そこで、「気候風土適応住宅」という、①外皮基準(断熱、日射熱遮蔽)の適合義務を外すルートができました。②一次エネルギー基準は高効率な設備を入れることで比較的対応しやすいため、除外ルートはありません。
では、気候風土適応住宅とは、何でしょうか。言い換えれば「地域の特徴を活かした住まい」といえると思います。
まさに、これから、各地の建築に携わる実務者が考えていかなければならない住まいです。

ですが、間違ってはいけないのは、最初から除外ルートを検討するのではなく、まずは基準に適合したうえで、気候風土を活かした住まいがつくれないかを考えるべきです。最初に述べたように、外皮基準は健康を守る最低限の基準であるからです。

ですので、気候風土適応住宅ルートは、日常的に使用しない建物(茶室など)で線の細い躯体で仕上げたい場合や、地域の町並みの統一性から高性能サッシや枠の太い高性能建具ではなく繊細な建具で町並みに開きたい場合、昔からの地域の伝統の両面真壁の土壁の場合など、①外皮基準を満たすことが困難な場合の選択肢が増えたと考えるべきです。

私の携わった改修事例を挙げてみます。
省エネ法では、建物全体で温熱性能を考えることになっていますが、その場合、町並みに面するファサードや、庭園に面する外壁も断熱強化の必要が出てきます。もちろん断熱サッシを使用すれば解決ですが、伝統的なつくりになじまないこともあります。
その解決の考え方の一つが、断熱区画(ゾーニング断熱)を用いて、生活区間の温熱性能はしっかり確保する方法です。
図1は、重要伝統的建造物群保存地区に隣接する建物で、コストの制約と、伝統的な街並みに面する通りの景観を配慮して、通り部分を断熱区画から外し、奥にある生活空間を断熱区画して、健康性を確保しつつ、通り部分は外皮性能を満たさない状況で改修を行った事例です。
図1のオレンジ色に塗られた部分に生活ゾーン(LDKと寝室、水廻り、それをつなぐ廊下)を計画し、このゾーンを囲うように間仕切り壁を含めて断熱施工しました。

図1:改修時のゾーニング(オレンジ色の部分が温熱性能を高めたゾーン)

写真3は街並み面する縁側ですが、断熱区画から外したため、当初設置された繊細な建具を残すことができ、生活空間の暖かさを確保しつつも、改修後も変わらない街並みの佇まいを残すことができました。

写真3:断熱区画から外して、通りには繊細な建具を残した例

改修前の断熱性能は熱損失係数Q値で6.97W/㎡Kでした。(Q値とは換気熱損失も含み、温度差1℃あたり、床面積1㎡あたりから逃げる熱の速さを示す値。数値が大きいほど熱が逃げやすいことを示しています。)現在の断熱基準の目安はQ値2.7W/㎡Kですので、2倍以上熱が逃げやすく、特に冬期には寒さの原因になっていました。
改修後の断熱性能Q値は3.27W/㎡Kとなりました。省エネ基準は満たしていませんが、これは無断熱ゾーンも含んだ建物全体の性能です。断熱ゾーン内の区画で計算すると、Q値2.65W/㎡Kとなり、健康を考えた際に最低限の性能である省エネ基準程度に向上していることがわかります。

このような区画断熱性能という考え方は、通常の省エネ基準ルートにはなじみませんが、気候風土適応住宅ルートを活用することで実現できます。今回の例は改修事例でしたが、もちろん新築にも応用できる考え方です。
気候風土適応住宅ルート(外皮基準適用除外)を選択した場合でも、住まい手の暮らしを考えて設計者がしっかりと適切な性能を検討すべきで、設計の可能性を拡げることにつながります。

160812_tsuji辻 充孝(つじ みつたか)
岐阜県立森林文化アカデミー准教授
Ms建築設計事務所を経て現職。共著に「木の家リフォームを勉強する本」「省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル」。2013年~環境共生住宅パッシブデザイン効果検討委員、2014年 岐阜県人口問題研究会「空き家等活用部会」議長、2015年 カミノハウスにて地域住宅賞奨励賞受賞(建築研究所主催)。一級建築士。

■岐阜からの便り バックナンバー
・岐阜からの便りVol.1 岐阜南部の夏の暮らし
・岐阜からの便りVol.2 岐阜南部の冬の暮らし
・岐阜からの便りVol.3 気候風土適用住宅

2017年秋~2018年冬編・第2弾『京都からの便り』が届きました


写真1:箱木千年家。茅葺き屋根に、壁は土壁

京都の豊田さんから、新しい便りが届きました。

今回は沖縄の松田さんに引き続き、『気候風土適応住宅』について書いていただいたのですが、豊田さんの専門分野でもある「土壁」を切り口に、また違った視点での内容になっています。

詳しくはこちらからご覧ください。

京都からの便り『土壁と気候風土適応住宅』

京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』


トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田と申します。今年の便りは、土壁と気候風土適応住宅について少し触れてみたいと思います。

まずは、この建物ご存知でしょうか?そう、神戸市北区に建つ箱木千年家です。

写真1:箱木千年家。茅葺き屋根に、壁は土壁

民家好きや土壁好きとしては、たまらない建物なのですが、この箱木千年家と同等の住宅を新しく別の土地に建てたいと思っても、昨今のエネルギー施策もあり、新たに建てることができなくなる可能性がありました。

実は、この問題は、箱木千年家だけはなく、我が国で作られてきた伝統的な建物にも該当し、特に、土壁だけでできた建物は、非常に厳しい立ち位置にありました。土壁は、熱伝導率が0.69w/m・K程度であるため、土壁だけで平成28年の省エネルギー基準(壁:熱貫流率0.53W/㎡・K)をクリアしようと思うと、1150mm厚程度の土壁にしないといけないことになり、土だけで性能を確保するのは非現実的でした。

図1:土壁の厚みを厚くした場合の熱貫流率の比較

内外真壁の土壁は、土を厚く塗って90mm程度にしたとしても、熱貫流率は3.0W/㎡・K程度で、ペアガラスの窓と同じぐらいの性能です。

図2:内外真壁の土壁と窓の熱貫流率の比較

そんな中、昨年の3月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が国交省から所管行政庁へ周知されたことから、気候風土適応住宅の認定(以下、「気候風土認定」とする)を取得すれば、昔ながらの土壁の家も省エネルギー基準をクリアできる道が示されました。

簡単に説明すると、「外皮性能は向上させなくても大丈夫だけど、エネルギーの基準は守りましょう!」という申請ルートが新たにできたわけです。

図3:外皮性能3つと、一次エネルギー消費量を評価する

気候風土認定を取得することで、外皮基準は適用されず、一次エネルギー消費量基準は緩和されることになり、ほっと胸をなでおろしたいところですが、そうは問屋が卸しません。

気候風土認定を取るためには、一般的な住宅と同様に、必ず、外皮性能と一次エネルギー消費量の計算をする必要があります。計算が苦手な方や職人さんには、なかなかのハードルですが、この計算を行うだけで、これまで通りの住宅をつくれる可能性があるのですから、なんとかしてやり遂げるしかありません。

図4:UA=9.0W/㎡Kの場合のエネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適応住宅版)の結果

外皮性能の計算は、通常のルール通り計算を行いますが、一次エネルギー消費量は「エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適応住宅版)」(以下、「気候風土適応住宅版」とする)を使用し計算を行います。

気候風土適応住宅版は、外皮性能がどんなに悪くても、暖房エネルギー基準値が設計値に近くなるようなプログラムになっています。(「居室のみを暖房する」の場合)また、暖房を「採用しない」に設定すれば、基準値=設計値となり一次エネルギー消費性能がクリアしやすくなります。これら暖房基準値の緩和が気候風土適応住宅版の最大の特徴となっています。

さて、計算さえできればあとは、所管行政庁がきめる策定ルールに適合させるだけですが、ここが一番のハードルかもしれません。現段階で、策定ルールが決まり運用しつつあるのは、1~2の所管行政庁だけだと聞きます。残りの所管行政庁は、動いているところもありますが、まだ何も決まっていないところが大半のようです。

所管行政庁が、気候風土認定の判断をするにあたり、図5が示されていますが、中でも、土壁は、「外皮基準に適合させることが困難と想定される要素の例」として、1)土塗壁(外壁両側を真壁としたもの、2)外壁片側を真壁としたもの、3)土蔵造りのもの)の3種が挙げられています。

図5:気候風土適応住宅の判断にあたっての考え方(上)と外皮基準に適合させることが困難と想定される要素の例(下)
出典:所管行政庁が地域の気候及び風土に応じた住宅であることにより外皮基準に適合させることが困難であると認める際の判断について(技術的助言)国住建環第65号、平成28年3月31日より

 

ここで、気候風土認定の判断にあたり、一例をあげてみたいと思います。

この建物は、私が設計をした住宅です。木小舞土壁、聚楽、瓦、国産材、木製建具、畳、障子戸など伝統的な素材をたくさん使っていますが、外壁は大壁で、基礎は一般的なコンクリートベタ基礎です。はたして、この住宅は、気候風土認定を取得できるのでしょうか?

写真2、南禅寺の家

もし、「建物全てが伝統構法で作られている」、または、「石場建て」が必須といったルールになると、この建物は気候風土認定を取得できません。土壁は使っていますが、外部を大壁にしているので、断熱材の充填は可能です。もし、外部が大壁で断熱材が充填できそうな住宅は、気候風土認定を取得できないというルールになると、先程と同様に認定を取得できません。こういったように、0か100かによって、この策定ルールが決められてしまうと、せっかくの気候風土認定も活かされないで終わってしまう可能性があります。

そんな中、私は、熊本の古川保さんが提案されている配点方式の気候風土認定にとても興味を持ちました。気候風土要素をリスト化し配点化することで「内外真壁の土壁があれば+○○点、瓦があれば+○○点、計○○点以上であれば気候風土認定取得」とでき、地域の気候風土要素のバランスを保つことができると感じました。かつ、私案ですが、CASBEE伝統やCASBEE気候風土住宅といった行政でも使いやすいCASBEE評価ツールを新たにつくり、所管行政庁で配点を決めて運用するという案もあるのかと思いました。CASBEE京都のように、CASBEE○○といった所管行政庁独自基準のCASBEEをつくるのも良さそうです。

図6:CASBEE伝統やCASBEE気候風土住宅の案

省エネルギー基準が義務化になると言われている2020年まであと2年。気候風土適応住宅版が完成したことで、伝統的な建物や地域にこれまで根付いてきた住宅は、これまで通り建築することができそうです。あとは、特定行政庁の策定ルール次第。今年は、色々な動きがありそうです。

*
toyoda_1 豊田保之/トヨダヤスシ建築設計事務所代表

1974年京都生まれ。瀬戸本淳建築研究室、Ms建築設計事務所を経て、2005年トヨダヤスシ建築設計事務所開設。岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。京都造形芸術大学大学院非常勤講師。一般社団法人住宅医協会理事。代々続く左官職人の家に生まれた経歴から、土壁や漆喰など左官職を生かした家づくりを行っている。

「南禅寺の家」では、(財)建築環境・省エネルギー機構主催「第5回サスティナブル住宅賞」において「国土交通大臣賞〔新築部門〕」の他、第9回木の建築賞 木の住宅賞、第7回地域住宅計画賞 地域住宅計画奨励賞も受賞している。

★同じ著者の他の記事を読む
京都からの便りvol.1『南禅寺の家 夏の便り』
京都からの便りvol.2『南禅寺の家 冬の便り』
京都からの便りvol.3『赤穂市に建つ既存住宅の詳細調査』
京都からの便りvol.4『南禅寺の家 冬の便り』
奈良からの便りvol.1『ならやまの家 夏の便り』
奈良からの便りvol.2『ならやまの家 冬の便り』
・京都からの便りvol.5 『土壁と気候風土適応住宅』

新連載スタート「沖縄からの便りvol.9」が届きました


沖縄からの松田さんから、新しい便りが届きました。
今回は今年の秋に多発した台風の被害から、沖縄の気候風土に合った住宅について、
さまざまなデータ検証と共に詳しく述べています。

沖縄県庁からの景色

詳しくはこちらからどうぞ

■ 沖縄からの便り Vol.9

沖縄からの便りvol.9


台風22号が去ったあたりから、一気に半袖だと肌寒くなって来ました。
ついに沖縄でも、そろそろ夏モードを切り替える時季になっています。
前回の台風は久しぶりに直撃したような気がしました。

我が家では、アパート前にあった3階建の高さまである木が倒れ込んでいました。また近所のバルコニーに設置してあった木製ルーバーが落下していました。幸いけが人もなかったのですが、木がもたらしてくれた大きな影や木漏れ日、爽やかな風を失ってしまった事はショックでした。

台風22号で倒れた木

以前お話ししたように沖縄はRC造が既存ストックの9割を占めています。確かに台風からは守ってくれるありがたい構造ですが、実際快適性はどうなのでしょうか。また、省エネ性はどうなっているでしょうか。

平成28年9月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が公表されました。そのガイドラインを読んで「あ、沖縄だ!」と感じた箇所がありました。
地域の気候及び風土に応じた住宅に特徴付けられる要素の例の表があり、その中に伝統木造の要素に混じって「屋根通気ブロック」「花ブロック」と記載されていたからです。

表1:地域の気候及び風土に応じた住宅に特徴付けられる要素の例/「気候風土適応住宅ガイドライン」より

少なくとも、伝統木造だけじゃなくRC造であっても沖縄らしい住宅として気候風土適応住として認定できる可能性があると思いました。

沖縄県では、今年の3月から先月の10月まで「沖縄らしい気候風土適応住宅形成事業」が行われました。
その事業では既存の住宅に関する調査や省エネ基準適合状況の調査を行ったのち、「沖縄らしい気候風土適応住宅認定基準」(案)の策定を行う内容でした。
実態調査を行えば行うほど、沖縄の一般的な住宅は外皮の基準である平均日射熱取得率の基準値達成が困難である事がわかりました。

断熱性能を示すといわれているU値、これは沖縄県の8地域だけは基準の規定はありません。

外皮平均熱還流率の基準値/建築物省エネ法における基準値をNPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

冬の断熱の重要性はそこまで感じられないので、納得できます。
もう1つの日射遮蔽性能を示すηAC値の基準は、全国で一番数値の高い3.2とされています。

 

冷房期の平均日射熱取得率の基準値/建築物省エネ法における基準値をNPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

数値は低いほど厳しいので全国で一番沖縄県の日射遮蔽性能基準が緩い規定となっています。ちょっと不思議です。
そして、この一番緩いはずの基準値であるはずが達成困難な状況でした。
RC造、混構造、一部現代木造含む20件の一般住宅を計算したところ、平均は5.3になり全ての住宅が未達成という結果になりました。(因みに基準はありませんがU値の平均値は2.57でした。)

この基準値は、各地域の施工技術やコストなど様々な要素を勘案しながら決めていったそうですが、もしかすると再度この根拠を掘り下げてみることも必要かもしれません。

沖縄県内住宅における省エネ基準達成状況/NPO蒸暑地域住まいの研究会で作成

現在、各部位のη値の計算には、日射遮蔽効果がある日射反射(白色塗料など)や通気(通気ブロック、屋根付きバルコニー)などの効果は算入されていません。
その他に屋上緑化や壁面緑化による蒸散作用、赤瓦(素焼き)の蒸散作用や屋上砂利敷きなどの効果も算入されていません。花ブロックも同様です。また隣戸や屋敷林、植栽による日射遮蔽効果も算入できません。

今後沖縄での日射遮蔽技術について、効果を数値化しひとつ1つしっかり評価していけなければならないという課題があります。
もちろん美しい赤瓦屋根の伝統木造住宅も沖縄らしい気候風土適応住宅だと思います。

しかし同様にRC造も、強い日差しにも耐え、熱を遮る工夫、台風から身を守る堅牢さ、外部の平均風速5mを生かした軒や大開口という大切な気候風土に適応した要素があります。
大型台風が来ても大きな被害には至らず、命を守ってくれる安心感、半世紀という時代を通して地元建築士が培ってきた仕様や工法は、次世代にも受け継いでいけたらと思います。

沖縄県庁からの景色

DSC_0749

「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。

◇沖縄からの便り 他の記事を読む
・vol.1 2013年夏編
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福島からの便り vol.4 春間近の飯野町を訪れる -いいの「虹の家」-


 

二月も終わりに、福島市の南東に位置する飯野町を訪ねました。

2008年より福島市に編入された飯野町は阿武隈高地の丘陵地に在り、美しい山並みを望めます。また、町の中心部はかつて養蚕業で栄えた屋敷の塀や蔵の街並みが残り、その佇まいや裏路地には飯野町らしい趣が残っています。

漆喰の蔵と塀のある路地-震災で傷んでいます・・・

漆喰の蔵と塀のある路地-震災で傷んでいます・・・

訪問したこの日は、ひな祭りのイベントの「飯野つるし雛まつり」が開催されていました。
これは、町興しの為に町の商工会がはじめたイベントで、今年で節目の10年目を迎えました。
学習センターや商店街の各店舗で、町民が思い思いにこしらえた人形を吊るし、町内外から人々が訪れ、眺めたり写真を撮ったり、買い物や食事を楽しんでいました。

商店街の様子

商店街の様子

吊るし雛

つるし雛

“いいの「虹の家」”

今回の福島からの便りでは、町の中心の表通りから1本南側に入ったところに、2014年に建設した“いいの「虹の家」”の冬の住まい方について取材をさせて頂きました。
建て主さんは、ご夫婦と中学生のお子さんふたりの4人家族です。

外観

外観

敷地は奥行きが約8m、間口が25mと東西に非常に細長く、三方は高低差約1.5mの石垣に囲まれています。北側は敷地と同レベルで小道が走り、飯野町特有の裏路地の景観が見られます。

外観(北側)と裏路地

外観(北側)と裏路地

建物は、西側の2階建ての棟に寝室・風呂・家事室・子供部屋等を集約してプライバシーを保ち、東側の1階建ての棟にはLDKと客間等を設け、交友関係の広い施主さんの集いの場となっています。

いいの「虹の家」平面図

いいの「虹の家」平面図

その二つの棟を繋げる中二階の回廊が風洞の役目も担い、東側の棟にある薪ストーブの暖気がその回廊を抜け、西側の棟の2階の隅々まで温めてくれます。

いいの「虹の家」立体構成

いいの「虹の家」立体構成

冬の住まい方

取材をさせて頂いたこの日は、小春日和となり穏やかな一日でしたが、朝は-6℃まで冷え込んだそうで、春間近といえども朝晩はまだまだ寒く、天気が傾けばこれからも雪が降ることもあります。その外気が-6℃の時に室内は17℃を保っていたそうで、外出したら寒くてびっくり、車のフロントガラスが凍結していて更にびっくりだったそうです。

断熱材は昨年の冬編で紹介した“かわまた「結の家」”と同じく、調湿性と蓄熱性に優れ、薪ストーブと相性の良い「ウッドファイバー」を採用しています。
さらに内装仕上げについては一般的な珪藻土より細孔が小さい珪藻土(MPパウダー)を塗り、その優れた調湿機能により暑さ寒さを和らげます。
そのおかげで、薪ストーブから最も離れている2階の寝室まで適度な温度を保ち、朝の支度の1時間程度はリビングのエアコンを補助暖房として使用するが、常時は薪ストーブのみで暖房をまかなっているそうです。夏場もエアコンは使用しないとのことで、光熱費は以前の借家の時よりもかなり低く押さえられているそうです。以前は灯油だけで月20,000円を超えていたのが、現在は電気代が高くても約18,000円、その他に32,000円/梱包の薪をひと冬に1~2個程度購入するだけです。ちなみに、熱源は電気(オール電化)と薪ストーブのみで、薪は入手の仕方で購入しなかった年もあるそうです。

軒下の野積みの薪置き場-石垣の上なので排水が良好

軒下の野積みの薪置き場-石垣の上なので排水が良好

冬の調湿

一方で薪ストーブが暖かな室温を保ってくれるために、徐々に室内の湿気が無くなって乾燥が進み、薪ストーブのあるリビングでは湿度が40%を下回り乾燥状態になることがあります。やや温度の下がる2階では約50%とリビングよりも湿度が高めです。これは、相対湿度の特性でしょう。

リビングの薪ストーブ-鍋に水を張って調湿するも・・・

リビングの薪ストーブ-鍋に水を張って調湿するも・・・

高校受験を控えるお子さんがいることもあり、特に調湿には気を配っているそうで、湿度が低い時はMPパウダーの壁面に霧吹きを広範囲に吹き付け、常に40%以上を保つようにしているそうです。おかげでこの冬は子供達が風邪にかかることもなく、“いいの「虹の家」” に暮らし始めてから3度目の冬となるが、家族の風邪が顕著に減少しているとのことでした。

霧吹きで シュ シュ シュ♪

霧吹きで シュ シュ シュ♪

また、浴室のある2階は入浴時に加湿され、就寝時には寝室の湿度が60%程度まで上がり、程よく眠りに就くそうです。脱衣室の欄間をわざと開放した効果もありそうです。
また、脱衣所には換気扇はあえて取り付けませんでした。

脱衣室-上部は開放、湿気が拡散します。

脱衣室-上部は開放、湿気が拡散します。

薪ストーブの特性を生かすように適した断熱材や仕上げ材の選択、適した間取りの工夫をすれば暖かな室内環境を得ることができ、かつ光熱費を抑えることができます。
その一方で、いかに適度な湿度を保てるようにできるかが、「冬場」の設計の重要な課題です。

回廊/風洞-風の通り道

回廊/風洞-風の通り道

つるし雛のお顔紹介

吊るし雛のお顔紹介

つるし雛のお顔紹介

saitohirofumi@kkj齋藤史博(さいとう ふみひろ)

1973年福島県福島市に生まれる
1997年に新潟大学工学部建設学科卒業後、組織事務所を経て2006年に「さいとう建築工房」を設立。
無理をしない、素直な家づくりを目指して地元福島で頑張っています。
2013年に“かわまた「結の家」”にて、第6回JIA東北住宅大賞2012「優秀賞」、第8回木の建築賞「木の建築賞」を受賞。

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