里山長屋からの便り~冬編~


長屋周辺 冬の様子:菜園はちょっとさびしいが、南側の栗の木や雑木の葉がおち、たっぷりと日差しが建物と土地にあたる。

長屋周辺 冬の様子:菜園はちょっとさびしいが、南側の栗の木や雑木の葉がおち、たっぷりと日差しが建物と土地にあたる。

「里山長屋」は2011年の1月に竣工しましたから、その年を数えると、5回目の冬をすごしていることになります。これまで、冬季の暖房エネルギーにかかる費用などを記録してきました。暮らし方の差はあるとしても、我が家ではワンシーズン平均して2万円台半ばで済んでいます。恐らく一般平均家庭の半分くらいなのではないでしょうか。

この建物では、伝統的な木組みと竹小舞土壁を構造に採用していますが、従来のこうした造りでできている古い民家などは、「寒い、暗い」といったことから、残念ながらどんどん打ち捨てられているのが現状です。伝統的な造り方をしていても、現代的にどう暖かく過ごし、省エネな状況をつくりだすことがこの建物のテーマですが、鍵はやはり土壁の蓄熱作用にあるようです。

この住まいの仕様は、竹小舞土壁の外側に約100ミリの断熱材を施しています。そうすることで、土がもつ蓄熱作用をより一層生かすことができます。断熱をしないと、土壁の蓄熱作用は却って逆に冷えた状態が持続し、(夏はそれを利用しているのですが)なかなかあたたかさを実感できません。

里山長屋の我が家では、土に蓄熱させている熱源は二つあります。一つは暖房装置で、これはペレットストーブを使用しています。夜間や朝早い時間の寒く感じるとき、このストーブをつけます。土がじわりと暖められていくので、急速に室温があがる、というわけではありませんが、いったんあたたまると、そのあたたかさが持続します。

もう一つの熱源は太陽です。いわゆるパッシブデザインによって、南側の開口部を大きくとっています。昼間たっぷりと日差しが室内にはいることで、その熱を土壁が吸収してくれるのです。また、太陽の光があたる床面の温度を計測すると35℃前後まであがっていることがわかります。太陽熱を活用する方法としては、屋根の板金面で集熱する仕掛けも採用しています。できるだけ昼間の太陽熱を冷える夜まで蓄えておくことで、ストーブをつける時間を少なくすることで省エネにつながっています。ペレットという循環型の木質資源を利用しているとはいえ、限りある資源を大切に使いたいものです。

夜、20℃まで暖め、ストーブを切って翌朝の起床時に、外気温がマイナス5℃くらいでも室温は15℃くらいに保たれています。これだと寝間着のままでも朝起きることができますね。

雪景色 一シーズンに何回かはしっかりと雪が降ります。朝方はマイナス5、6℃まで下がる気候。それでも断熱と土壁の蓄熱とで朝でも15℃ぐらいをキープ。

雪景色 一シーズンに何回かはしっかりと雪が降ります。朝方はマイナス5、6℃まで下がる気候。それでも断熱と土壁の蓄熱とで朝でも15℃ぐらいをキープ。

冬の室内の温熱環境を保つためには、もちろん蓄熱作用だけに頼っていては不十分です。平均的な住宅の熱ロスは主に窓面からが大きいのです。カーテンを引いて、窓面の断熱をすることもよいのですが、和の風情を大事にするなら、やはりしつらいとしては障子がよいのではないか、と思います。

窓のガラス面の冷輻射も防いでくれるので、断熱効果とあわせて、輻射環境も整えてくれます。カーテンに比べて手入れもしやすく、始末がよいのではないか、と思います。日本の住まいの開口部の仕掛けとしては複数の建具をたて込む工夫があります。すなわち、雨戸は雨を防ぐ仕掛けと同時に冬は熱損失を抑える効果もあります。
費用が許せばこうした複層的な開口部の仕組みにしたいと思います。里山長屋では残念ながら雨戸までは敷設できていませんが、補足的に、小さい窓には中に空気層が仕込まれた断熱ブラインドを採用しています。

昨今はいわゆる高断熱を指向することが多くなってきました。断熱をすることで熱損失を少なくする、というのはもとより異存はありませんが、断熱材をできるだけ厚くすればよいか、ということには少し立ち止まって検討する必要があります。
いわゆる北方系の気候風土では、寒さ対策が一義的に大事になりますので、まず断熱ありきということはよいと思いますが、温暖地以南では断熱のし過ぎで夏場の室内環境が却って冷えない、という状況も招きかねません。
冬場に何℃で暮らしたいか、ということを想定し、それに見合った断熱の状況をつくっていくことが必要でしょう。現在はそうした状況をシミュレートできるツールも充実してきましたので、その地域の気候風土にあった断熱というものを追求したいものです。

外部環境も大切です。夏場、冷気だまりという微気象を形成していた北側の桧林は、冬場は冷たい北風から建物が冷えるのを防いでくれます。また夏に建物に木陰を提供してくれていた南側の栗の木は、今度は葉を落とし、日差しを建物まで届けてくれます。建物の外部環境の自然、植生もうまくデザインしてあげることで、冬の厳しさを少し緩和してくれる効果を生むことができます。

いまの時期、里山長屋の菜園は多少葉ものがあるだけで寂しい感じです。雨水を貯めておくタンクもほとんど稼働していません。春をじっと待ちながら、籠って暮らす感じです。

冬は閉じ、夏は開く、という四季に応じた建物のしつらいを変化させながら対応していく、というのが、日本の住まいのあり方のように思います。

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kinei_yamada山田 貴宏(やまだ たかひろ)
早稲田大学建築学科都市環境工学修了。清水建設、長谷川敬アトリエを経て、現在ビオフォルム環境デザイン室主宰。主に国産材と自然素材を中心とした、地産地消でかつ伝統的な木の家造りを中心とした建築/環境設計を行う。パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりをめざす。建物とそれを取り巻く自然/コミュニティまで含めた幅広い環境と場づくりがテーマ。
著書:「畑ついているエコアパートをつくろう」(自然食通信社 共著)「里山長屋をたのしむ」(学芸出版社)

◆里山長屋からの便り バックナンバー
Vol.1 里山長屋からの便り~夏編