沖縄からの便りvol.1


梅雨も明け、沖縄はすでに夏まっさかりです。

さて皆さんは「沖縄の暮らし」と聞いてどんな生活が思い浮かびますか?

伝統的な家屋である、赤瓦の屋根の木造住宅が石垣によって囲まれた住宅を思いつく人も多いのではないでしょうか?

沖縄の伝統的民家沖縄の伝統的民家

実際、建築統計年報によると、沖縄県内において平成20年度までの10年間に新築された戸建て住宅約3万2千戸のうち木造住宅は約1700戸(5.3%)に過ぎず、ほとんどが鉄筋コンクリート造などの非木造であるのが現状です。

現在の那覇市の街並み

現在の那覇市の街並み

現在の那覇市の景観はまさにコンクリートジャングルです。

コンクリート住宅は、冬寒く、夏暑い、湿気によるカビの発生が多いなど健康住宅のイメージが少ないような気がします。

さて、コンクリート住宅は、本当に暑いのでしょうか?木造住宅に暮らせば涼しい生活ができるのでしょうか?

私たちNPO蒸暑地域住まいの研究会では、沖縄県内にある特徴的な住宅を12戸抜粋して1年間環境測定を行いました。

木造住宅、コンクリート住宅、木造とコンクリートの混構造住宅と、それぞれ築年数や市街地型/郊外型、家族構成・ライフスタイルの違う住宅を選びました。

その住宅で使用された一年間の光熱費より年間消費エネルギーの計算をしてどのような暮らし方をすれば、設備に頼らなくても快適な生活ができるかの検討を行いました。

参考までに、自立循環型住宅への設計ガイドラインでは沖縄県那覇市RC造住宅の年間1次エネルギー消費量の合計は66.6GJとされています。

CASE1:築80年の伝統木造VS築浅の混構造住宅

どちらも4人家族ですが、消費エネルギーは約倍近くも変わりました。

伝統木造 46.9GJ

伝統木造 46.9GJ

現代混構造 89.3GJ現代混構造 89.3GJ

伝統木造の方はエアコンがなく、ほぼ扉や建具は開いている状態で生活しています。

エアコンがないからには暑くて快適じゃないでしょう、と言われるかもしれません。実際の温度の変化は以下になりました。

2011年の7月1か月の室温(リビングと居間)とアメダス(外気温)日射量をグラフで示しました。

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若干エアコンありの方がアメダスの外気温データよりもすずしくなっていますが、そこまで大きな差はありませんでした。

以上の結果をみると、やっぱり木造の方が環境的には有利のように思えます。

CASE2:現代RC造VS現代木造

どちらも築年数の浅い住宅です。こちらも家族構成は同じです。

06現代木造住宅 57.5GJ

07現代RC住宅 42.5GJ

実際の快適性はどうでしょうか。測定した室温は次のような結果になりました。

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この現代木造は市街地に位置するため、建具を常時開けるわけにはいかず、室内の気温は外に放出できず1か月ほとんど外気温よりも高いという暑い結果になりました。

一方RC住宅は、遮熱塗料や屋根に砂利を敷く等遮熱に関する性能を高めたため、外気温と同程度の室温に保っています。

 

CASE3:現代混構造VS現代RC造

両方とも築30年近い建物です。家族構成もほぼ同じで両方とも密集市街地型です。

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(左)現代混構造 94.0GJ (右)現代RC造 59.7GJ

混構造の建物は8年ほど前にコンクリート住宅平屋の二階に木造住宅を増築しました。木造の方が涼しく快適だろうと期待していたそうです。しかし実際は異なりました。

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二階の居間の気温が木造の室温です。アメダスの外気温よりも高く日射量とほぼ比例して上昇しているのがわかります。屋根の断熱・遮熱が不十分であったことと、開口部による熱の放出ができなかったためだと予想されます。

一方現代RC造も屋根からの熱の伝導の影響があり、最上階の寝室と下階の居間では差がみられました。

CASE4:現代混構造VS現代混構造

次は同じ混構造で同じ家族構成の住宅です。違う点は、一方は設備重視型、一方は自然志向型のライフスタイルという点です。

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現代混構造(設備重視型)103.2GJ

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現代混構造(自然志向型)31.3GJ

設備重視型の住宅は、太陽光発電を行っています。高齢者がいるので夏場はほぼエアコンつけっぱなしにしています。よって使っているエネルギーは、103.2GJと大きめです。

一方自然志向型の住宅は、丘の上にあり風通しがいいため、同じように高齢者がいますがエアコンは使わないで生活しています。消費エネルギーは、設備重視型の約1/3以下で生活しています。

ちなみに光熱費は、設備重視型住宅では27000円でしたが売電を行っているため差し引くと145000円で、自然志向型は154000円でした。現在のところ、エネルギーをなるべく使用していない方が高いという結果になっていました。

沖縄の特徴として、文化も同様ですが、多種多様な住まいがあります。それぞれに合ったライフスタイルと住宅の設計が重要視されてくると思います。

特に夏場涼しくなる工夫は、壁の断熱よりも遮熱を重要視すること、不在時の通風が大切なポイントになっているようです。

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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。

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