東京からの便り vol.2『秋から冬へ』


こんにちは。オザです。

娘の通っている幼稚園では、秋は行事が盛りだくさん。運動会に遠足、合唱祭、さつまいもほり…。今年は新型インフルエンザが大流行し、幼稚園でも学級閉鎖になったクラスがありましたが、なんとか無事にイベントを終えることができました。
毎年これらのイベントを終える頃、日が暮れるのがずいぶんと早くなったなぁと感じます。夕焼けがきれいに見られるのもこの頃ですよね。

私が住む街では、この季節夕方4時半になると帰宅を促す「夕焼け小焼け」の音楽がスピーカーから流れますが、子ども達は遊び足りず、暗くなった公園でなおも遊び続けようとします。今も昔も変わらない光景です。

家からもれてくるあかりの色って各家庭でそれぞれ違うんですよね。家庭によって選ぶ照明器具も明るさの好みも違うのだから、当然のことなのですが外から眺めると本当に色々で面白いなぁと思います。

家庭で使用する電力の用途割合で、エアコンに続き大きなウエイトを占めているのが照明と冷蔵庫だそうです。照明は意外と電力を使うことに驚きました。

先日、照明器具メーカーが一般向けに行っている「照明の選び方セミナー」を受けてきました。そこでは同じ明るさでも、選ぶランプによって消費電力が違い、二酸化炭素の排出量も電気代も変わってくるということを、実際に照明をつけたり消したりの実演をしながら体感させてくれ、なかなか興味深かったです。
簡単に比較してしまうと、白熱灯>蛍光灯>LEDという順で消費電力が少なく、電気代を抑えることができます。ただし、ランプにはそれぞれ特徴があるので、空間の用途や目的を考えた上で、効率よく器具を選ぶのが賢い方法だと教えてもらいました。

わが家のリビングで使っている照明です。

ランプは電球型蛍光ランプを使用しています。

見た目は白熱灯と似ていますが、中にはぐるぐると渦巻状に加工された発光管とそれを点灯させるための回路が入っています。
電球型蛍光ランプは白熱灯に比べ、消費電力が10Wと少なく、ランプの寿命が約5〜10倍も長持ち。ランプ自体の価格は白熱灯よりも高めですが、ランニングコストで考えると電球型蛍光ランプのほうが得になります。欠点としては、スイッチを入れてから明るくなるまでに時間がかかること。頻繁につけたり消したりする廊下や階段、トイレなどには不向きかもしれません。

最近ではLEDも照明器具としても注目されています。
LEDは消費電力がきわめて少ないので、コストを抑えられるだけでなく、二酸化炭素の排出量も抑えることができます。LED自体が熱も紫外線も出さないので、虫が寄ってくることもなく、エクステリアのライトアップにも最適。寿命が4万時間と蛍光灯に比べて約4倍、白熱灯と比べると約20倍も長いという利点もあります。ランプ交換の必要性がほとんどなくなるので、高いところに設置するのにも便利です。今のところ初期費用が高いというデメリットと、光があまり広がらないので、全体を明るくするよりも部分的に明るくしたいときに効果的であるという特徴はありますが、次世代のあかりとして、今後は家庭用でも需要が高まってくるものと思われます。
クリスマスのイルミネーションもLEDが登場してからは、より明るく鮮やかに彩られるようになりました。今年どんな風に街が彩られていくのか楽しみな季節です。

電気の光のようになくてはならないものというわけではないのですが、キャンドルのあかりが私は好きです。

地球のために夏至と冬至の夜8時〜10時は電気を消して、キャンドルライトで過ごそうという「1000000人のキャンドルナイト」というイベントを数年前に知りました。それまではキャンドルをともす日はクリスマスか誕生日など、ごく限られた日だけだったのですが、キャンドルナイトに参加するようにしてからは時間と気持ちの余裕のある夜は、電気を消し、テレビ消してキャンドルライトの下で、夕食や食後の時間を過ごすようにしています。娘はいつもと違った雰囲気に大興奮。その日の出来事をいつも以上に話してくれたり、一緒に歌を歌ったりして、親密な時間を過ごすことができます。

地球にも家計にもやさしいことをしているのに、キャンドルの光を眺めているととても贅沢な気分になりますし、なによりも心にゆとりがもてる気がします。

今までは、家庭で使用する電力のうちで、照明がこんなに大きなウエイトを占めていることを知らなかったので、ついつい必要のない電気をつけっぱなしにしてしまうことがありました。いくら省エネ効果のあるランプを選んだとしても、ムダはよくないですよね。電気をつける時間の多くなるこれからの季節、必要のない電気は消すように気持ちを引き締め、温暖化防止のためにできることをもう一度見直してみようと思いました。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

★『東京からの便り』の他の記事を読む
特派員:オザ(東京の郊外に夫と幼稚園児の娘と三人で住んでいる主婦。Lee100人隊のお買いものコラムもやってます。)

vol.1『ゴミの有料化は効果的か
vol.2『秋から冬へ』
vol.3『世田谷ボロ市と冬の過ごし方』
vol.4『春の花便り』
vol.5『梅雨時の生き物たち』
vol.6 『東京の家探し事情』
vol.7『東京で家を買う』

ドイツからの便り vol.2『明かりの世代交代』


地域からのたよりリレーが一周し、バトンがドイツにまわってきました。
季節は変わり、足早に走り去ってゆく秋の後姿を見とどけながら長く厳しい冬への準備が始まっています。

街を歩いていると街路樹にクリスマスのイルミネーションが取り付けられてゆく作業をよく見かけるようになりました。

ベルリンでは雨がちで寒く暗い日が多いこの時期に毎年光のフェスティバルが催され、ブランデンブルク門やテレビ塔をはじめとした観光名所が色とりどりにライトアップされます。

 (旧西ベルリンから旧東側へと架かるオーバーバウム橋には幻想的なライトアップ)

明かりが灯されるとなんだか少し暖かくなったような気になりませんか。
というわけで今回のテーマは「明かり」です。

サマータイム制度
日照時間が季節によって大幅に変化する欧米では年に2回、時計を1時間調整して太陽の出ている時間を有効に使い、省エネに繋げようというサマータイム制度が導入されています。
1916年ドイツで始まってはや90年。本当に省エネに有効なのか、体内時計との調整が難しいなどの否定派意見もきかれますが、季節の変化に改めて気付かされ、環境改善に焦点のあたる良い機会でもあります。

EU圏では10月の最終日曜日の午前3時に時計を1時間戻すことで冬時間が始まります。1時間多く眠れるこの日はこれからの寒さに耐える体へのご褒美のようです。
こうして冬時間に入ると午後3時には日が傾き始め、あっという間に真っ暗。
ふと電気のスイッチに手が伸びます。

蛍光灯と白熱電球
室内にいる時間が自然と長くなるこの季節、ドイツ人の家庭にはどのような明かりが灯されているのでしょうか。

日本をはじめ比較的暖かい地域で好まれる白い明かりに対し、寒冷な地域で好まれるのは温かみを帯びたクリーム色の明かり。
こちらの室内照明は日本人には少し暗いと感じられる間接照明がほとんどで家庭で蛍光灯がこうこうと点いていることはありません。

雰囲気の出るロウソクも人気ですが室内照明の主役は約130年昔にエジソンによって発明された白熱電球です。
しかし白熱電球の欠点は消費される電力のわずか5%が発光に、残りの95%は全て発熱に使われるというエネルギー効率の悪さです。

EUの環境対策
環境への取り組みに熱心なEUはここに着目し、2020年までに温室効果ガス排出を20%削減する計画の一環として、今年から2016年にかけて白熱電球、ハロゲン電球を段階的に廃止する策を打ち出しました。

まず今年9月1日から販売が禁止になったのは全てのつや消し電球と100Wの電球。
来年2010年9月1日には一段階ワット数の低い75Wが禁止となります。
そこで代替品として登場したのが緑の矢印が目指す先にあるSparlampe(シュパーランペ=省エネ電球)、電球の形をした蛍光灯です。

二酸化炭素の排出の多い白熱電球を廃止することで年間約3,200万トン(約2300万世帯分の電力消費に相当)の二酸化炭素排出量削減を可能にする目標です。

例えば私が最近購入した省エネ電球は7Wで従来の白熱電球30W分の電力を発揮し、寿命は一つで電球の10倍ということになるようです。
環境にだけでなく消費者にも電気代の節約というメリットがあるのです。
60Wの白熱電球10個を11Wのものに替えると1年間で90ユーロ(約13,000円)の電気代節約になる計算です。

省エネランプが市場に出た当初は蛍光灯そのものの光を発する製品(写真右)のみで、クリーム色の光に慣れているこちらの人には交換に抵抗があったようですが、開発がすすみ、白熱電球と変わらない光のもの(写真中)を選べるようになり、移行はスムーズに運びそうです。

今後さらに省エネランプより効率がよいとされているLED(発光ダイオード)電球の開発に期待がされています。
室内に限らず、屋外でもクリスマスのイルミネーションが映え、これから明かりを使うことが最も多い時期に入ります。省エネランプが本格的に導入されて初めてとなる冬に実際どれだけの効果があったのか、発表が暖かい春の到来とともに待ち遠しいものです。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

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特派員:スズキ(フランスで学生をしたり、スイスで時計店に勤めたり、気がつくとヨーロッパ10年目、現在はドイツで再び学生生活中。)
vol.1『エコロジストの正体』
vol.2『明かりの世代交代』
vol.3『寒さとのお付き合い』
vol.4 『待ちに待った春の訪れ』
vol.5『初夏を味わう』
vol.6『引越しは秋の風情』
vol.7『手作り家作り』

デンマークからの便り vol.7『物を大切にする暮らし』


こんにちわ、林です。ドイツ、日本のゴミレポートに続き、デンマークに暮らしていて感じる、ゴミまたはゴミにまつわる暮らしについてレポートします。

ゴミの選別の簡素さ
家庭ゴミの選別はいたってシンプル。紙類、乾電池、ガラス瓶、プラスチックの瓶、薬品類が入っていた容器、庭の木々、粗大ゴミは分けてゴミに出しますが、後の普段出る家庭ゴミを基本的に選別はしません。ビニール袋にまとめて、アパートごとにおくように義務づけられているコンテナに入れるだけ。
ドイツからのレポートにもあるように、ペットボトル、ビール瓶、空き缶のリファウンドシステムは行き届いていて、最寄りのスパー、キヨスクなどに持って行きます。

日本の様にゴミの日というのは決まっていなく、いつでもそこにきちんと入れておくだけで、週に3回ほどゴミ回収の車が早朝にやってきます。ゴミ回収車は、コンテナを引っ掛けて、中のゴミを回収して空にしていきます。

一般のゴミをコンテナへ

新聞、雑誌などを入れるコンテナ

 乾電池を捨てるスタンド

アパートの中庭では、家庭の生ゴミを入れるコンポストをおいているところも増えてきました。

デンマークではゴミの選別も日本に比べてはおおらかです。
それでも環境に配慮した取り組みや、ゴミに関してのコミューンからの情報を見かける事が多くなりました。
簡潔で人々がストレスに感じる事のないゴミに関するシステムが、生活に浸透しているようです。

町の風景とゴミ置き場
デンマークでランドスケープアーキテクトとして集合住宅のプロジェクトに多く携わってきました。ゴミのコンテナを置くスペースと自転車置き場は義務付けされていて、その数も大きさもコミューンにより規定されています。
設計する上て、ゴミのコンテナがなるべく目立つことなくコンテナが出し入れしやすいデザインを新しい集合住宅で設計してきました。

 新しい住宅地のリサイクルのコンテナ置き場。
2つ見えるのは、空き瓶用コンテナ。

 こちらは中庭にある、ゴミ置き場。この小屋の中にコンテナが並んでいます。

 こちらはコペンハーゲンのスタンダードゴミ箱です。市庁舎広場にて。

簡素な包装
お店で物を買うときに出る梱包は至ってシンプル。(これは日本が少し過剰とおもわれますが、、、)
スーパーマーケットでの買い物袋は有料、一袋約50円。この袋代は意外に高い。スーパーマーケットで買い物をしていて、約半数の人が持参した袋を使用している感じです。

リサイクル
物価が高いデンマークではリサイクルショップが地域の中に点在します。
おしゃれな、アンティークショップから教会などが主催するお店などいろいろ。わたしも使わなくなった、服、靴、鞄などをお店に提供してきました。お店には意外に掘り出しものも紛れ込んでいる事もあります。
私が使っている食卓のいす。一脚2000円。たまたまリサイクルショップでみつけた、デンマーク人デザイナーの椅子です。
 ランプと机は友達が使っていないものを借りています。
ランプはコンテナに破棄されていたのもを拾ってきたそうですよ。

デンマークにて生活するようになり実感するのは, あまり物を買わなくなった事。必要最低限。でも買うならば吟味して自分の好きな物を長く大切に使うこと。
デンマーク人の友達はよく、自分の使っている家具や食器などがおじいちゃんやおばあちゃんから受け継いだものだったりもします。良質な物を家族で受け継いで使っている。何世代が使ったものが継続して生活空間の中にあることはとても良い事だと思います。

物を買う事が少なくなること、物を大切に使う精神、このデンマークの暮らしの中であらためて身に付くことです。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

★『デンマークからの便り』の他の記事を読む
特派員:林 英理子(デンマーク在住のランドスケープデザイナー)

Vol.10 『デンマークの春』
vol.9 『デンマークの冬/コントラストのある生活』
vol.8 『地域性とエコロジカル』
vol.7『物を大切にする暮らし』
vol.6 『社会に蓄積していくデザイン』
vol.5『Jorn Utzon』
vol.4『デンマークのクリスマス』
vol.3『デンマークの住宅、建築事情』
vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』

ドイツからの便り vol.1 『エコロジストの正体』


はじめまして、グーテンターク!
四季の移りかわりが垣間見せてくれるドイツ人の暮らしを、今回より「地域からの便り」にのせてご紹介していく役を預りましたスズキです。フランスで学生をしたり、スイスで時計店に勤めたり、気がつくとヨーロッパ10年目、現在はドイツで再び学生生活です。
私が住んでいるのは古城の素敵なロマンティック街道沿いでもなく、ビールのおいしいミュンヘンでもなく、大都市フランクフルトでもありません。
首都なのに観光地として旅先に挙がることの少ないベルリンです。
ベルリン・・・。さて、今みなさんは何を頭に浮かべられたでしょうか?

ブランデンブルク門、後姿でごめんなさい

“Arm aber sexy(お金はないけどセクシー)”

市長の打ち出したベルリンのスローガンです。
ベルリンの壁が崩壊して今年で20年。
大都会への仲間入りにはもうしばらく時間がかかりそうですが、歴史のつまった未完成の街だからこそ、まだまだ発見の楽しみがいっぱい。あんなこともこんなこともベルリンだからできてしまうような可能性を感じさせます。今とっても元気な、魅力あふれるこの街の明るさの源をちょっと探ってみましょう。

マルクスとエンゲルスが見つめているテレビ塔はベルリンのランドマーク

ベルリンは緑の多い都会。東京ドーム約1200個分、三重県伊勢神宮敷地に相当する55km2が公園など市民や観光客の憩いの場として提供されています。8月に行われた世界陸上のマラソン中継で背後に映るその緑の多さに気付かれた方も多いかと思います。

アスベスト問題で去年取り壊された東ドイツの宮殿跡地も今は緑一面。芝生立入禁止の札はなし。サッカーまでできるそう

さて9月に入ると夏は未練もなく去っていき、肌寒い秋の始まりです。それでも気まぐれに空からのぞく太陽が姿を見せれば大人も子供も犬も猫も外へび出していきます。こんな時一番元気なのは20代の女性、短い夏を一日でも長く!の思いに美白意識などは薄いどころか、無い、ようです。

行く先は広い歩道にテラス席を出したカフェや、運河沿い、空き地、本当にいろいろありますが暖かいうちはやはり公園が人気です。
読書をしたり、考えごとに耽ったり、友達とのおしゃべり、フリスビーに犬の散歩、週末となれば野外パーティーやBBQをして丸一日を過ごす人たちで大賑わいをみせます。

公園のお供といえば、お菓子と飲み物。
健康派はミネラルウォーター、甘党はジュース、そしてドイツ人といえばビールも多数派です。飲み終わると自分が横になっているシートの外にコロンと置きます。ドイツ人がポイ捨て?
・・・にしては意思のある置き方に見えます。
すると5分も経たないうちに空き瓶を拾いに来た人がいます。「これ持ってくよ」
「ありがとう」
このエコロジストは誰なのでしょう。

ドイツで飲み物を買うと表示価格よりなぜか高い。
ビールや炭酸飲料などガラス瓶に入ったものには8セント(約10円)
水やジュースなどの入ったペットボトルには15〜25セント(約20〜35円)
が購入時に容器のデポジットとして徴収されるからです。

飲み終わった容器をスーパーに設置された回収マシーンに入れると、払ったデポジット分のレシートがでてきます。これは買い物するときに現金として使うか、目下買うものが無い場合はレジで換金することもできます。

このリサイクルシステムはずいぶん改良が重ねられ、今では効率がよくなっていますが、ほんの数年前までは購入時のレシートが必要だったり、買ったお店でしか返せなかったり、とずいぶん面倒くさいものでした。それでも当時から回収率90%以上をキープし続けているのはさすが律儀で環境意識の高い国民です。

さて、エコロジストの謎解きに戻りましょう。
ベルリンはまだ工業・商業化が進んでおらず、働きたくても雇用確保が追いついていない状況です。物価は安いながらもやはり生活の苦しい人たちが多いのも現実です。
彼らが生活していく方法の工夫には名案が多数ありますが、公園のエコロジスト活動はこの一案だったのです。ペットボトル16本で4ユーロ(約540円)。
公園がきれいになって、リサイクルも遂行され、エコロジストにはおこづかい。
リサイクル発案者も考えていなかったであろう社会的活動に発展していったわけです。

ワインの瓶などデポジットのつかないガラス瓶ももちろんリサイクルされます。アパートの中庭や町のあちこちに設置されたこちらのコンテナーが回収先。

左は茶色のガラス
真ん中は緑のガラス
右は透明のガラス

コンテナーはわかりやすい色別です。

遊び心にあふれるベルリン、こんなコンテナーも発見しました。

10時過ぎまで明るかった夏も終わり、ドイツ人なら必ず一本!の魔法瓶が活躍する寒さの厳しい冬ももうすぐそこなのかもしれません。
古着用のコンテナーの話やら、ゴミ分別なら話題の尽きないドイツですが、また別の機会まで!

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

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東京からの便り vol.1『ゴミの有料化は効果的?』


はじめまして! オザと申します。
東京の郊外に夫と幼稚園児の娘と三人で住んでいる主婦です。今回から暮らしの中で感じたエコについて紹介させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

私の住んでいる所は、都心まで電車を使って1時間ほどで行けるベッドタウンです。大規模マンションが建ち並び、住宅が密集している地域もありますが、その一方で住宅地の合間には野菜畑も見られます。近くには採れたての野菜が並べられた無人の直売所がありのどかな雰囲気をかもし出しています。

そんなわが街では今から約2年前の2008年1月からゴミの有料化が始まりました。

ゴミを捨てるときは指定の袋を購入してその中へ入れなければならず、袋にはゴミの処理代として1リットルあたり2円の値段が付けられています。有料化の対象は、可燃、不燃とプラスチック容器。ただし、紙オムツや剪定枝など除外されている品目もあります。

わが家では可燃と不燃ゴミはそれぞれ10リットル、プラスチック容器は20リットルの袋を使っています。袋は10枚セットで販売されているので、10リットル入りは200円、20リットル入りは400円で購入しなければなりません。積み重なると結構な出費です。

さすがに袋を頻繁に買わなくてすむよう、ゴミの減量には敏感になりました。

食品トレーやペットボトルのリサイクルはもちろんのこと、卵パックは回収してくれるスーパーに持っていったり、レジ袋を断ってマイバッグを持参したり…。

特に、レジ袋はゴミとなると結構かさばるので、マイバッグを持参する動きはかなり浸透しているように思います。

また、今まではプラゴミとして捨てていたペットボトルのキャップ。リサイクルするとポリオワクチンとして、世界の子供に届けられるそうです。私の住んでいるマンションでも回収箱が置かれるようになりました。

他にはティッシュの箱や包装紙、メモ用紙、ダイレクトメールなどの紙製品もまとめて出すと、資源としてリサイクルされます。混ぜればゴミ、分ければ資源となるんですね。

ゴミ有料化により、どのくらいのゴミが削減できたのでしょうか? 気になって役所に問い合わせてみました。

プラゴミを除いた家庭から出されるゴミ量は1日一人当たり約100gの減、1ヶ月だと約3kgの減になっているそうです。役所の方の話では、この2年間は想像以上に速いペースでゴミの減量が進んでいるとのこと。

私たちの小さな努力も無駄ではなかったわけです。

でも、冷静に考えてみると有料化によって住民の関心が一気に高まり、想像以上の好結果が残せているのは当然といえば当然のことのような気もします。

気になるのは今後のこと。

この先も着実にゴミを減らしていくにはまだまだ努力と工夫、そして関心を失わないことが必要だと感じました。

最近、新しいものをすぐに購入するよりも、長年使ってきたものを直したり、形を変えたりしながら最後まで丁寧に使い込んでいく暮らしって素敵だなと思うようになりました。
まだ使えるものをいらなくなったからという理由だけで処分してしまうのはもったいないですよね。


不要になった物を引き取って修理し、格安で販売してくれるリサイクルセンターをはじめ、フリーマーケットやオークションなどを賢く利用する人も増えているように感じます。先日出かけた骨董市は平日だったにもかかわらず、多くの人でにぎわっていました。

また、着なくなった自社製品の服を回収し、リサイクルに回してくれる店や、スーパー、百貨店などで行われている下取りセールなども利用者の反応がいいようですね。

これからもこのようなシステムが改良されながら続くとうれしいと思います。私たちは今後もずっとゴミを減らしていくように心がけていかなければならないのですから。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

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デンマークからの便り vol.6 『社会に蓄積していくデザイン』


コペンハーゲンにここ5年のあいだに3つもの新しい文化施設が誕生しました。
2004年に、The Opera, 王立オペラハウス。
設計 Lenning Larsen Architects, Denmark
 王立オペラハウス

2008年には、The Royal Danish Playhouse,王立シアターハウス。
設計 Lundgaard & Tranberg Arkitekter, Denmark
 王立シアターハウス

そして、2009年に、デンマークラジオのコンサートハウス
設計 Ateliers Jean Nouvel, France
 新デンマークラジオコンサートハウス

それそれが、国際的にも有名な建築事務所によってそれぞれ設計されました。

古くからの王立劇場も壊すことなく以前のように使いながら、それと同時に新しい文化施設でもいろいろなプログラムが行われています。
 王立劇場内部

デンマークに暮らすようになって、日常にバレエや、コンサートに行く機会も増えました。当日券を安く手にすることも可能で、仕事の後や週末に映画に行くように、気軽に行くチャンスがあるのです。
映画などに行くよりはすこし服などにも気をつかって、非日常を味わうのは、楽しいものです。

今年1月にオープンしたデンマークラジオコンサートハウスは、コペンハーゲン市街にあるラジオハウス移転に伴い設計されました。
この、旧ラジオハウスの建物は私の好きなコパンハーゲンの建物の一つです。
 旧デンマークラジオコンサートホール

この建物は、1945年にデンマーク人の建築家 Wilhelm Lauritzenによって設計されました。
この建物には、デンマークの建築、家具デザイン、照明、ランドスゲープデザインが融合した建築の一つだと思います。

旧デンマークラジオコンサートホール ホワリエ
 旧デンマークラジオコンサートホール ホワリエのインフォメーションボード、照明。
至る所に、デンマークのデザイナーと職人の技がちりばめられている。

 ランドスケープアーキテクト G.N. Brandtにより設計された屋上庭園

 ラジオハウスのエントランスホール 天井は革張り、回転ドアも家具的なニュアンス

現在デンマークラジオが引っ越してしまった後は、国の保存の建物として登録され、リノベーションされて王立音楽学校として使われています。また、コンサートホールはユラン交響楽団のホールとして使われています。
時代が移り変わり、建物の機能は代わることになっても、音楽学校と交響楽団の建物として、リノベーションして使いこなすセンス。
このセンスにはいつも脱帽します。

新しいコンサートハウスを建てた フランス人建築家、Jean Nouvel は設計するにあたり、旧コンサートハウスからインスピレーションを得たと言っています。

 1945年 ヴィルヘルム ラオリッツン設計 旧デンマークラジオコンサートホール

 2009年 ジャン ヌーヴエル設計  新デンマークラジオコンサートホール

デンマークで仕事をしていて感じることの一つに、今自分がやっているプロジェクトがいつも歴史の延長上にあるという感覚です。
時代時代のデザイナーが社会に出してきた答が、街の中、日常の生活の中にあり、その蓄積の上で暮らしていることが普通に伝わってきます。
ですから、設計者の社会的、歴史的責任を感じることになるし、デザインに関わる仕事ではない一般の人も見る目が厳く、意見もいっぱい持っていたりするのです。
そうやって、デザインが文化として社会に蓄積されていきます。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

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vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』

デンマークからの便り vol.5『Jorn Utzon』


前回の便りから、もう一年がたとうとしています。
デンマークはクリスマスが近づき、今年もコペンハーゲンの街にはクリスマスのイルミネーションが点り、プレゼントを選ぶ人々の姿を見かけるようになりました。

 デンマーク王立劇場のなかのクリスマスデコレーション。

そんなクリスマスムードが町に漂いだした、11月29日に デンマークの建築家Jorn Utzon が90歳で亡くなりました。

3年前まで働いていたランドスケープ事務所のボス Jeppe Aagaard Andersen が夏のある金曜日に所員を自宅に招待してくれ、バーベキューをしたことがありました。
私は彼と一緒に、自宅近くのスーパーに買出しに行ったところ、彼が、Tシャツ、短パン姿の背の高いスラリとした素敵な老人と立ち話をしているな、と思ってみたところ、それは、Jorn Utzon でした。 コペンハーゲンのあるシェラン島。その北の海岸に沿いの風景、ブナの森と海。 Jorn Utzonと彼の建築を思うとき、それらは私の頭の中ではしっかり結びついています。

フレデンスボーのテラスハウス。 シェラン島北部にある、フレデンスボー城のすぐ脇にある、集合住宅は外国に長い間住んでいたデンマーク人で作る協会のために作られたものです。彼らがデンマークに帰ってきたときに良い住環境で暮らせる住まい。
このテラスハウスのすばらしいのは、やはり、ゆったりと傾斜した地形のなかに、それを尊重しながら黄色いレンガで囲われた家屋を配置し、それにより、周りの環境、風景を誘い込むオープンスペースと、それと対照的な家屋へのアクセス機能を持つスペースをドラマティックに際立たせていることだとおもいます。
一軒一軒の住宅が周辺の風景に開かれると同時に、閉ざされている。このコントラストは考えてみると、デンマーク人の気質にも通じるものがあるかもしれません。
デンマークに帰って、ここフレデンスボーテラスハウスに暮らす人々。海外の思い出など物思いにふけながら、毎日の生活を送るのに最高の環境かもしれません。

 アクセス機能を持つパブリックスペース

 黄色いレンガの壁と緑の対比

彼の建築はいつもドラマティクです。
2004年に仕事で訪れたシドニー。そこであのシドニーオペラハウスを目にした瞬間は忘れられません。シドニーの港に半島のように突き出したサイトに佇むオペラハウスは、建築というよりも、海に佇む彫刻のようでした。コンペ案でさらりと描いたスケッチから、オペラハウスを立ち上げるまでのプロセス。そこに一貫してあるのは、合理的な美、それを生み出すシンプルで力強い考え方。風景の中のシルエットから、ディテール、マテリアルにいたるまで、それは貫かれています。

Jorn Uzton の建築はいつも建築の中に力強い連続可能なシステム、詩的なストーリーがあります。それは海と森とに囲まれた、Jorn Uztonの生活環境の中から産み出されたのだなと、今あらためて、彼のいなくなったデンマークにて思いました。

 シドニーオペラハウスの脇あるJorn Uzton の言葉

※この記事は2008年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2008年当時のものです。

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世田谷からの便り vol.2『緑のカーテンの準備は?』


こんにちわ、moriです。
夏といえば、緑のカーテン。
今年から始めようと思って、すでに苗を植えた方も多いのではないでしょうか。

私もあのカーテンを作ってみたくて、今年はアサガオを「種」から植えてみました。

080522002

アサガオといえば、小学生の時に種から育てたことはあっても、それ以降はいつも苗を植えて育てていました。
去年は一応、花を咲かせるくらいまで育てたので、今年は頑張って種から植えてみました。

その結果…

080522004

10日以上経ちますが、発芽した種はたったのひとつ!

他は土の中から、うんともすんともいいません。

やはりビギナーは苗から挑戦したほうがよさそうです。

080522003

実はアサガオの種と一緒に、ゴーヤの種を一緒に買ってしまったのですが、これもあんまり期待できなさそうです。

やはり苗から挑戦、というのが、ビギナーにはいいようですね。

こんなことで緑のカーテンでベランダを覆うことは出来るのでしょうか。
不安です。

カーテンの他にも、夏野菜(ミニトマトとトマトを2株ずつ)を植えました。
ミニトマトは栽培が簡単だし、実りも早いし、見ていて楽しいです。

080522001

世田谷からの便り vol.1『サクラ前線通過中』


埼玉出身で、現在東京住まいのmoriです。
今年、東京の桜は異様に早く、3月22日の開花宣言後から一気に満開になりました。
東京からの便りとして、第1回目は東京の桜の様子をお伝えします。(写真は全て08年04月03日撮影)

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世田谷区/岡本民家園の桜

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アブラナ科とおぼしき紫色の花。(ムラサキハナナか?ゴウダソウか?)

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桜と同じ時期に咲く山の花「ヤマブキ」

東京は広いまちです。そして桜の名所がたくさんあります。
私が特に好きなのは、千鳥ヶ淵の桜です。(都内でも随一のサクラの名所と言われるだけあり、水面に映える桜の山は圧巻です。)
でもそういう、いわゆる名所は混んでいるので、近所を散歩がてら花見を済ます人も多いのではないでしょうか。
私の会社は世田谷区岡本というところにありますが、国分寺崖線の上に立地していることもあり、都内とは思えないほど緑の多い場所です。
保全緑地の他にも大きな御屋敷が多いので、ちょっと歩くだけで色んな種類の桜や色んな種類の春の花を見ることができます。

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世田谷区/新丸子川のオオシマザクラ、ソメイヨシノ

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世田谷区/しだれ桜

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世田谷区/新丸子川沿いのマメサクラ

日本で一番植えられている桜は「ソメイヨシノ」。超が付くほどポピュラーな桜です。
桜には園芸種を含むと200種以上のものがあると言われます。このソメイヨシノという桜も園芸種で、「エドヒガン」「オオシマザクラ」を掛け合わせて作られました。
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ソメイヨシノは江戸時代の末期に江戸の染井村(現在の豊島区)で開発されて、当初「吉野桜」の名前で売り出されていました。この「吉野」とはもちろん奈良の桜の名所、吉野にちなんだものでしょう。
その後、明治33年に出版されたとある雑誌の論文で、「染井吉野」という和名が付けられ、現在、日本で最も馴染みのある桜になりました。
このように桜という木には園芸種が多くあります。しかしそれ以外にも、山に行くと見かける「ウワミズザクラ」のような自生種もあります。花の見た目は白い花がブラシ状に咲く感じで、ソメイヨシノとは全く似ていませんが、両方とも同じバラ科サクラ属の樹です。
お花見をするときに「あれは何桜だろう。」と思って、桜の花や葉をよくよく観察してみるのも面白いです。葉っぱが先に出ているか、花だけ先に咲いているか、花は何色か、などが見分けるポイントになります。
ソメイヨシノに比べて花の色が白っぽく、葉と一緒に花が咲いている桜はたぶん「オオシマザクラ」でしょう。(乱暴?)

そんな風に、東京でいわゆるお花見ではなく、色んな種類の桜を見てみたい人には、「多摩森林科学園」をオススメします。
ここには桜図鑑ともいえる桜の保存林があり、一般ではお目にかかれない種類の桜が多くあります。
緑色の桜「鬱金」、太い枝の先に丸く固まって咲く「虎の尾」、楊貴妃や普賢像といった八重桜等々、桜と言えば「ソメイヨシノ」ではないお花見を楽しめる場所だと思います。
里桜はソメイヨシノなどよりも咲く時期が遅いのもいいところ。でも、ここも他の東京都内の桜の名所と同じように年々人気が高まり、特にこの時期は人出が集中するようなので、土日祝に行かれる場合は混雑を覚悟したほうがよさそうです。

■多摩森林科学園
http://www.ffpri-tmk.affrc.go.jp/

桜が咲く時期、紅葉が色づく時期、季節の変わり目と同時に景色が変わる時、私たちはなんとなくそわそわと浮かれ始めます。
東京という大きなまちに暮らしていても、季節の楽しみはあるというか、むしろ都市の人口が増加すればするほど、その「季節を楽しもうとする行楽」は集中、加熱気味にあるとも言えます。
(夏の花火大会が増え、浴衣を着ていく場も人も増加しているように)

でもその心の浮かれ具合を、幅広く色んな世代が持ち合わせている感じを、私はとても愛しく思います。
花が咲いた、紅葉が色づいたに一喜一憂する国民性とでもいいましょうか。

どんなに住宅の工業化や設備の性能が上がっていったとしても、花の咲いた散ったに一喜一憂する感性がある限り、暮らしの季節感というのは途絶えようがない感じがするのです。
だからなのか、この時期になると浮かれる・花見が好きな国民性に、なぜかこれからの住宅の在りよう、展望に関して明るいものを見たりもします。
楽観的すぎますかね。

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日当たりが良く、咲き始めが早かった桜はすでに散り始めています。

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桜の花が終わると、木々の芽吹きが始まります。
今度は緑の美しい季節が、東京にもやってきます。

高尾からの便り vol.3『冬がやってきた!』


残暑が厳しくて、いつまでたっても秋が来ないなあと思っていたら、なんだか急に冬がやってきたようです。

高尾の寒い冬をどう過ごすか。
これは夏と同じく、太陽とどう付き合うかによるようです。
冬になると太陽高度が下がるので、庇があっても室内の奥まで太陽の日差しが差し込みます。この日差しの暖かさは格別。
まさにぽかぽかなので、この暖かさを何とか室内に留めておきたいと、思うのです。

朝起きると、東と南に開いた居間は結構寒くなっています。
今はだいたい15℃から17℃くらいです。
7時、朝の日差しは東側にあり、まだ大きな南の窓には少ししか届いていません。
朝食前に、南側のブラインドはあげますが、広縁を介した障子は閉めておきます。
朝食を終えて、9時くらいに、障子を開けます。
暖かい日差しが、居間の中ほどまで降り注ぎます。
天気がよければそのまま、室内の気温はどんどん上がります。
太陽熱を蓄えておきたいと、南側の広縁は土タイルを張っています。
ほんの、2センチの厚さですが、直射日光があたり、床暖房のように暖かくなります。

例えば、ある日の10時半、外気温が14℃の時、室内の気温は21.3℃、暖房なしでです。
太陽の恩恵です。
この時、土タイルの表面温度は28.4℃になっていました。ちなみに同じように日射があたっていた畳は、28.8℃、無垢板は24℃でした。
これだけ暖かくなった表面温度、日が落ちてもできるだけ蓄えておきたい。
だいたい3時くらいから日差しは西の方に傾き、土タイルにももう日はあたりません。
でも、表面はぽかぽかとしています。
この熱を逃さないようにと、比較的早い時間に、南側のブラインドを下げます。
このブラインド、断熱タイプで、ハニカム構造になっています。
しばらくは、ブラインドを下げて、障子をあけたままで暖かさを保ちます。

5時にはすっかり暗くなります。
そこで、障子を閉めて、部屋を仕切ります。
ここからは、輻射暖房機を入れて暖をとっています。
日さえあたれば、昼間は暖房なしで、暑いくらいの暖かさを得ることができます。
太陽の力ってすごいなあと、感心するのです。
逆に曇りや雨の日は、暖房するしかないのですが。

温度に対する感じ方は人それぞれ、感覚的なものではありますが、温度計をいろいろなところに置いて、温度をこまめにチェックするくせがつきました。
居間には少し高い位置ですが、デジタル温湿度計、北側の寒い洗面所にも、温度計と湿度計、それから、寝室と納戸、外部と現在稼動している温度計は全部で5つです。


 温度計や湿度計を眺めながら、暖房をつけるタイミングなどを計っています。

天気の良い日、外出から帰って室内に入った瞬間、ほんわか暖かです。なんだかほっとします。
本当、太陽ってすごいなあと思う瞬間です。

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

★特派員:eriko

「高尾からの便り」の他の記事を読む
vol.1『暑すぎる夏』
vol.2『ウッドデッキを作りました』
vol.3『冬がやってきた!』

デンマークからの便り vol.4『デンマークのクリスマス』


デンマークは12月入り、いっそう暗く寒くなってきました。
夏は夜の11時ごろまで明るい代わりに、冬は冬至に向かって日が短くなっていきます。今は朝の7時半ごろまで暗く、夕方4時ごろには日が沈み、仕事をしていると一日太陽を見ないまま、一日が終わっていくような気分です。
この季節を乗り切るためにデンマーク人は、自分たちの住空間を居心地の良いものとし、家族や、友達などと集まり長い夜を過ごします。
この長い冬があるからこそ、北欧の優れた家具デザインや照明デザインが生み出されてきたのだと、いつも実感させられる季節でもあります。
そして又、クリスマスもつらい冬を乗り切る、とっておきのイベントとなるのです。

コペンハーゲンのいたるところがクリスマスツリー、イルミネーションに彩られてきました。

コペンハーゲン中央駅にて。

街ではクリスマスパレードも見かけられます。

なぜか、デンマークのサンタクロースは消防車に乗ってパレードに登場するのだけれど、いつもなぜ???と不思議に私は思っているのです。

クリスマスの4週間前の日曜日はキリスト教の待降節の始まりです。デンマークでは、その日曜日には、家族や友達などと集まり、クリスマスの飾りを作る伝統があります。今年は同僚のIdaさんに誘われて、クリスマスの飾り、Adventskrans(アドブェントカンス)を作ってきました。
彼女に事務所で、「日曜日には、キャンドル4本、藁でできた輪、それとリボンを買ってきてね。」と言われました。さて、日曜日に彼女のアパートに訪ねていくと。


大きな白いテーブルの上には、さまざまな彩りのビロードの様な苔、苔、苔!
彼女達はスウェーデンの森の中にサマーハウスを持っていて、そこから苔を採ってきたそうです。しかも彼女の旦那様のGunnarさんは苔を研究している学者さん。苔の名前はもちろん、苔の特徴解説付きでした。

作り方はいたって簡単、買ってきた藁の輪に糸をくくりつけて、自分の好きな苔を選びながら、糸でぐるぐる縛っていくのです。

好みで、サルの腰掛風きのこや、松ぼっくりなどをアレンジしながら、丸い緑のリース状のものを作ります。

その上に4本のキャンドルに釘を付けたものをつきたてて、リボンなどでデコレーションして、出来上がり。
この、4本のキャンドルというところに意味があり、クリスマスを心待ちにするデンマーク人、4週間前から、日曜日ごとに1本ずつキャンドルに火を灯していきます。4本火が灯るとクリスマス!

また、クリスマスといえば、デンマークではJulegløgg(赤ワインの中にアーモンド、干し葡萄、シナモンなどを入れた、暖かい飲み物)、Æbleskive(丸いお菓子)を食べながら、みんな、思い思いの素敵な、アドブェントカンスを作っていました。
 Johan君5歳。彼もすごく熱中して、盆栽風な渋いやつを作りました。(上段)
赤キャベツと苔で作っていた方も!彩りがきれいです。(下段左)
これは、Idaのです。(下段中央)
私は、こんな感じで作ってみました。(下段右)

Special thanks Gunnar and Ida!

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

★『デンマークからの便り』の他の記事を読む
特派員:林 英理子(デンマーク在住のランドスケープデザイナー)

Vol.10 『デンマークの春』
vol.9 『デンマークの冬/コントラストのある生活』
vol.8 『地域性とエコロジカル』
vol.7『物を大切にする暮らし』
vol.6 『社会に蓄積していくデザイン』
vol.5『Jorn Utzon』
vol.4『デンマークのクリスマス』
vol.3『デンマークの住宅、建築事情』
vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』

デンマークからの便り vol.3『デンマークの住宅、建築事情』


コペンハーゲンの街を歩かれたことのある方は,ご存知かもしれませんが、街の中は古い建物であふれています。100年前に建てられたものがほとんど。レンガ造りの素敵なアパートが建ち並んでいます。
ではアパートの中も100年前のままかというと、そんなことはありません。
今では、いろいろと手を加えられ、住み心地良く改良されています。

昔はほとんどのアパートに暖炉があったようで、私の住んでいるアパートのフローリングにも、暖炉の跡がうっすらと残っています。(屋根にはいまだに煙突もあります。)
今では、デンマークの大きな規模の街のほとんどがセントラルヒーティング。ゴミ処理場から、各アパートに温水が引き込まれ、ハンドルひとひねりで部屋を暖めます。各部屋のパネルごとにカウンターが付いていて、年に一回どのくらい使ったかを計りに来ます。このセントラルヒーティング、空気も汚れないし、火事の心配もなし。全く優れものだと思います。
アパートの窓も二重窓がほとんどです。冬は寒いデンマークですが、部屋の中に入ると、暖かく、薄手の服装で十分快適です。逆に日本に戻ったときの、日本の住宅の方が、寒く感じられます。
台所やお風呂、トイレなどの水周りも、やはりアパートそれぞれ手を加えて改良されています。住民が手を加えて、アパートの中を改良した経費は、その住宅の価値を上げたものとして、住宅の資産に加えられるので、売却したときに加算されます。
少しずつの改良が建物に蓄積されてゆくので、住み手にとっても良いことですし、その人々の意識の連続が古い建物を残し、次の世代に受け継ぐ姿勢に繋がっていると思います。

今、私が働いている事務所の建物も1754年に建てられた、馬小屋だったものを、事務所として使っています。今はもちろん、設備などを改良し、快適な事務所空間になっています。

 この建物、いまでは国の保存対象のリストに登録さてれいます。

コペンハーゲンは秋も深まり、
事務所のあるコートヤードのりんごの木も収穫時期となりました。
 ミーティングスペース
 黒く見えるのが、事務所のセントラルヒーティング。
白く見えるノズルを回すと温度が調節できます。

デンマークは物価が高い!ってご存知でしたか?ちなみに消費税25% そして人件費もまた高い。アパートを改良する場合の職人さんの労働賃金も、ものすごく高い訳です。ですから、デンマーク人は自分たちでできることは、自分の手でやることを惜しみません。部屋のペンキ塗りはもちろん、壁を取り払うこと、床のフローリングの張替え、台所のシステムキッチンまで、がんばればなんでもできるものです。こちらの人々は、そのプロセスまでも楽しんでいるようです。

私の周りの友達は建築家やデザイナーが多いせいか、友達たちのアパートはお金を賭けずに、それでも、とても素敵に暮らしている人々が多いです。彼らから、住まいのセンスを学んだことはたくさんあります。


同僚のフランス人建築家、Gillesのアパート。
奥さんも建築家だけあって、彼らのアパートは素敵です。
キッチン、バスルーム、収納など、彼らのデザイン。
自分たちで大工仕事もしたそうです。

Special thanks to Mr. Gilles Charrier.

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

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vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』

高尾からの便り vol.2『ウッドデッキを作りました』


我が家は室内の南側に幅1800mmの広い縁側があります。
ここは1年を通じて熱的な緩衝ゾーンとなり、夏は暑さを冬は寒さを緩和してくれています。
今年の夏は、その縁側と一体となって外と内をゆるやかにつないでくれる、ウッドデッキをつくりました。

敷地はやや起伏のありレベルをだすのが難しいため、基礎や大引の部分は大工さんにお願いすることにしました。
あいにく台風の季節、3日の予定が結局1週間かかり、基礎から大引きまでが完成。

そしてデッキの部分は、いつも我が家の改修に協力してくれる仲間と共につくりました。
デッキ材はいろいろ考えた末、国産杉材に防腐処理をしたものを購入。
ここでは国産材であることに注目しました。また、防腐処理剤が、天然物由来の成分であることも気に入りました。
早速、取り寄せて作業開始です。
まず、大工さんにお願いした大引や束の部分に、デッキ材と同じ防腐処理剤を塗ります。
この防腐剤は、植物と鉱物(ハーブ、樹皮、鉄鉱石)を原料に独自の調合法にて作られていて、北欧では60年の実績があり信頼できるものだそうです。日本ではまだこれからのもの。どんなものか、その経過も見ていきたいと思っています。
防腐剤は、粉末状になっており、規定の量の水で溶かすだけです。
特に臭いもありません。さらに色もないので、塗ったか塗らないか分かりにくいのが難点といえば難点です。


材木は3mの長さ、デッキの奥行きも3mにして無駄なく使います。
結構、反ったりあばれていたので、三人がかりで押さえつけます。
隙間は、6mmの板をガイドにして位置を決め、まずは大引に二箇所だけ仮留めしていきます。


全部二箇所ずつ留めてから、改めて全部のビスを留めていく作業です。
四人が二組になって、二つの電動ドリルを駆使して留めていきました。
少しずれたり、斜めになったりするのはご愛嬌。

 三人がお手伝いしてくれたので、一日で完成。
高低差があるので、後日、階段を作る予定です。


デッキの東側に杏の木があるので、午前中は木陰が気持ちよいです。
蚊の全盛期がそろそろ終わるので、デッキに七輪でも出して、バーベキューをしたいものです。

★特派員:eriko

この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。

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デンマークからの便り vol.2『デンマーク、自転車生活』


 コペンハーゲンは小さな街です。
私のもっぱらの移動手段は自転車。どこに行くのも自転車で30分も走ると着いてしまいます。仕事場へも、毎日、自転車で10分。友達の家へお食事に行っても、終電を気にせず、自転車で。デンマークは平らな国なので、坂道もないので快適です。
街には自転車道が整備され、自転車の運転ルールもしっかりあります。右側通行、手旗信号、夜間はライトの点灯を義務付けるなど、守らないと警察に罰金を取られるものもあるのです。


自転車の種類もいろいろなものがあって、見ていても楽しいものです。
特に街を走っていてよく目にするのが、子供を乗せて保育園や幼稚園に行くお父さんやお母さんの姿。ほとんどが共働きのデンマーク人、朝の自転車ラッシュのなか、自転車に揺られてゆく子供達。ですから、自転車の形も工夫されています。


自転車のワゴンに入っているデンマークの子供達。コペンハーゲンの街に、微笑ましい雰囲気を与えます。


コペンハーゲンの街の中には、観光客用の自転車スタンドが街の要所、要所に配置されています。自転車に20クローネコインを入れると、鍵がはずれます。同じ場所のスタンドに返さなくても、どこかのスタンドにまた鍵をかけて返すと、20クローネコインが手元に戻ってくるシステム。なかなか良いアイデアです。

この自転車普及率は、デンマークは車に掛かる車両税がとても高いので車を所有しにくい背景もあります。でも、街へ住んでいる限り、車を持たなくても自転車があれば不便ではありません。

 コペンハーゲンの街の中にある国会議事堂。自転車置き場はもちろん入り口のすぐ脇にあり、国会議員さん達も自転車通勤。

デンマークの郵便配達も自転車です。この自転車、かっこいいのです。

デンマークの電車、地下鉄の車両へは,ラッシュアワーを除いて、自転車も乗せることができるので、少し遠出のサイクリングや通勤もできるのです。夏休みに見かけた風景で、国境を越えて自転車ツーリングなんて、日本ではすこし考えられないことですね。
 自転車を電車に持って入る料金は、ちなみに12クローネ(約240円)。

ある、週末に見かけた、二酸化炭素排出量を削減するキャンペーン。こんな光景を見かけました。
 1トンの二酸化炭素のボリュームだそうです。なるほど、実感がわきますね。

都市の移動手段を考えるときに、確かに車は現代の都市生活に欠かせない手段となっています。ですが、人間的都市空間を考えるとき、車などの時間的効率を優先させる手段だけでなく、
都市の中でさまざまな移動手段が可能な、幅のある都市交通システムを作り出していく事が、これから益々必要になるのではないでしょうか。

 コペンハーゲンの街を通っているハーバー。黄色い船は水上バス。このバスにも自転車を乗せることができます。


馬のひずめの音が街に響くと、街のストレスもフッとなくなるような気がするのです。


ちなみに、これが私の愛車です。

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

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vol.1『10回目の夏』

高尾からの便り vol.1『暑すぎる夏』


我が家にクーラーはありません。
今年は記録的な猛暑。
この暑い夏、どう過ごしたか?ちょっとご紹介したいと思います。

私は昨年末に出産し、子供と一緒に一日中家にいる生活になりました。
そのおかげで、我が家に注ぐ太陽の動きや風の流れが実感できるようになりました。

暑さを防ぐため実践していることは基本的な二つだけ。
1、熱を室内に入れない。
2、風を通す。

毎年、夏が来る前に、東側の窓に簾をかけます。
南側の窓によしずをたてかけます。
これが日射遮蔽のひとつです。
そして、南側には大きな杏の木があり、これも日よけの役割を果たしてくれます。

午前中は、東から南にかけて太陽が照りつけ、熱風が入ってくるので窓もカーテンも開けません。
南側には1間幅の広縁があります。そこをバッファーゾーンにして、障子を開けません。
北側の窓だけ開けて、北側に扇風機を設置、まわします。


二時くらいに家の影が南のデッキにさしてきます。
そろそろ東側の窓を開けても良いころです。
窓を開けて、風を通します。
四時ごろになると、涼しい風が南から吹いてきます。
そして家中の窓を開け放します。
心地よい夕方の風で涼みます。
夕方に夕立があると、もっと気温が下がります。

夜間は涼しい風をできるだけ家の中にためるように、窓は開け、眠るときには大きな窓だけ閉めて、小窓は開けておきます。

こんなあたりまえのことで、扇風機だけで過ごしています。
今年の猛暑で室内は34℃を記録しましたが、じっとりと汗をかきながら体温調整。
私はややぐったりでしたが、娘はいたって元気。
とにかく水分補給だけ気をつけました、今のところ風邪ひとつひいていません。
汗疹にならないようにとこまめにシャワーを浴びたおかげか、肌の調子も良い方です。

暑いときは、しっかり汗をかく、そしてその汗をこまめに流す。
これが我が家の夏の乗り切り方でしょうか。

★特派員:eriko

この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。

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デンマークからの便り vol.1『10回目の夏』


はじめまして、林 英理子と申します。デンマークでランドスケープアーキテクトとして働いて、今年で9年、そして今年の夏はデンマークで迎える10回目の夏となりました。今はコペンハーゲンにある建築事務所Vandkunstenにてランドスケープアーキテクトとして働いています。http://www.vandkunsten.com

デンマーク コペンハーゲンより、こちらの生活や、デンマーク人の暮らしぶり、建築や環境に対する試みなど、私の目にとまった事をレポートしていきます。

まずはデンマーク、イントロダクション。デンマークは北欧5カ国の一つで、国土は4万3069km2 (約九州の1.18倍) 人口530万人。コペンハーゲンの人口は約170万人。北緯55.6度に位置しています。(これはロシアカムチャツカ半島と同じ緯度)それでもすごく寒いかというとそうでもなく、冬も雪に埋まってしまうことはなく、冬の間に2、3回、多くて5回ぐらい20センチ程度の雪が積もるぐらいです。それというのもデンマークの西に位置する北海に流れる暖流メキシコ湾流と、東にはバルト海が位置し、海に囲まれているからでしょう。
おっと、今回は冬の話をするのではなく、デンマークの夏を語らなければいけませんね。
デンマークの夏は日が本当に長い。夏至のころは夜11頃まで、8月の終わりでも9時ごろまで空は明るく、日没から夜空に変わっていく時の、空の薄いブルーからだんだんと濃紺へと変わっていく様は北欧の夏を経験したことのある人には心に残るものかなと思います。

夏至の頃、夜11時 コペンハーゲン クリスチャウンハウン

天気のほうはというと、デンマークの天気は年ごとに違うようです。10年前の初めての夏は、毎日青空が広く高く広がり9月になっても暑い日が続いていたのに、今年の夏は雨も多く、8月の半ばだというのに、空気のなかには秋の気配が漂っています。もう街行く人々も薄手のコートを着ていたりブーツを履いたりしています。
デンマークの天気は本当に変わりやすく、天気予報も晴れ後、曇り後、雨なんて予報を良く見かけるし、また天気予報も本当に当たらないのです。まあ天気ばかりはどうすることもできないし、デンマーク人はそんな変わりやすい天気とものんびりと上手に付き合っていると私は思うのです。

デンマークの夏といえば、ピクニック、バーベキュー、ビーチや公園、家の庭やアパートのコートヤードで日光浴。夜も10時ごろまで明るいので、仕事が終わって家族や友達と集まって外でご飯を食べている人々が多いです。日が暮れるとやはり肌寒くなるので、ブランケットを体に巻いて、それでも外でみんなとわいわい話している。デンマークの良く見かける光景です。デンマーク人はお金を賭けないで生活を楽しめる術を良く知っているなと思います。

夕方、仕事の後の散歩 ローゼンボー公園にて

コペンハーゲンの広場にて

コペンハーゲンの町中を歩くと、5階建てぐらいのアパートが町のブッロクを取り囲むようにロの字型に配置され、たいていそのアパートで囲まれた空間が住民共同のコートヤードとなっています。そこの中ではベンチ、子供達の遊び場、芝生の広場、花壇など、さまざまな居心地の良い空間が作られています。
デンマーク人は人々と共有して所有することが上手い国民だと思います。
1人や1家族の力では所有できないけれど、何人か集まれば良い環境、あるいは住居空間を所有できる。それが広がりを持ち都市空間に影響を与えています。

コペンハーゲン、クリスチャウンハウンのコートヤード

私の働いているオフィスもそんなコートヤードに面しています。りんごの木の下で取るランチは忙しい合間のほっと一息つける時間です。コートヤードはアパートの住民共同で使われているので、私たちがお昼を取っている横で、おじさんが新聞をよんでいたり、学生が勉強していたり、子供達があそんでいたり、赤ちゃんが寝ていたり、とみんな自分の心地よい場所を見つけてくつろいでいるのもまたいいものです。

事務所のお昼の風景


事務所が使っているコートヤードの中で住民の子供が飼っているカメ、Folmer。私もひそかにかわいがっている。夏休みから戻ったとき、Folmerが見当たらず、おや?と思ったら、カメ小屋に 「Folmerはサマーハウスに行っています。8月xx日にかえります。」と書置きが。夏休みも終わり、Folmerもまた、コペンハーゲンに戻ってきました。(E.Hayashi)

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

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