デンマークからの便り vol.9 『デンマークの冬/コントラストのある生活』


人々の生活 を感じる、窓から溢れる家の中の明かり

気候は人間のメンタリティーや暮らし方に影響を与えます。
11月ぐらいから3月ぐらいまで寒さが続く冬の長い北欧の暮らしは、まさにそれを実感することだらけです。

こちらで暮らしていて、大変だと感じるのは 「寒さ」よりもむしろ「暗さ」。太陽の光を浴びないということがこんなにも大きく気分に影響をあたえるかをなんども体験してきました。
でもこの長く暗い冬があるからこそ、優れたデンマークのデザインが生まれてきたのです。
デンマークの優れた照明デザイン 、室内の照明、屋外の照明どれを見ても、闇と光のコントラストを意識してデザインされている事がよくわかります。

控えめな屋外の照明

ルイジアナ美術館のカフェ

冬至が過ぎて約1ヶ月半。だんだんと日照時間が長くなると人々にも笑顔が戻ってくるようです。
少しでも太陽がさんさんと輝いている日は、外が寒くても散歩にでかけたくなります。少しでも太陽の光を浴びるのはこの上ない贅沢。

北欧にきて実感したのが、友達や家族と散歩に出かける事が多い事。
それが出来るのも、住環境から歩いていける距離には必ず緑地や公園、海岸など、環境があるからです。
帽子、厚手のコート、手袋、がっしりしたブーツをはいて、いざ外へ!

寒くても2時間ぐらい家の近くの森や公園を話しながら歩く。その後は家やカフェで暖かいココアとケーキをいただく。
寒さと暖かさというコントラストを積極的に楽しんでいるようです。

今年の冬は寒波がおしよせ、デンマークでは例年には見られないほどの雪となりました。今でも氷点下の気温が続きます。
雪が積もると外は明るくなり、子供達が外で遊ぶのにももってこいとなります。

運河ぞいのスケートリンク

雪が沢山積もった週末には大人達もここぞとばかり、雪を楽しんでいました。

今では、デンマークのアパートの窓はそのほとんどが2重窓もしくは3重窓が一般的。 建物の断熱もしっかりしているので、部屋の中はいたって温かです。各部屋にはセントラルヒーティングが完備されているので、空気も汚れず快適な空間です。
こうした、快適な室内環境を実現する建築設備が建物とともに社会に蓄積していることも見逃してはいけない事だと思います。

「夏と冬」「闇と光」「緑地と住宅地」「寒さと暖かさ」など、様々なコントラストをデンマークの冬に感じられます。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

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特派員:林 英理子(デンマーク在住のランドスケープデザイナー)

Vol.10 『デンマークの春』
vol.9 『デンマークの冬/コントラストのある生活』
vol.8 『地域性とエコロジカル』
vol.7『物を大切にする暮らし』
vol.6 『社会に蓄積していくデザイン』
vol.5『Jorn Utzon』
vol.4『デンマークのクリスマス』
vol.3『デンマークの住宅、建築事情』
vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』