デンマークからの便り vol.1『10回目の夏』


はじめまして、林 英理子と申します。デンマークでランドスケープアーキテクトとして働いて、今年で9年、そして今年の夏はデンマークで迎える10回目の夏となりました。今はコペンハーゲンにある建築事務所Vandkunstenにてランドスケープアーキテクトとして働いています。http://www.vandkunsten.com

デンマーク コペンハーゲンより、こちらの生活や、デンマーク人の暮らしぶり、建築や環境に対する試みなど、私の目にとまった事をレポートしていきます。

まずはデンマーク、イントロダクション。デンマークは北欧5カ国の一つで、国土は4万3069km2 (約九州の1.18倍) 人口530万人。コペンハーゲンの人口は約170万人。北緯55.6度に位置しています。(これはロシアカムチャツカ半島と同じ緯度)それでもすごく寒いかというとそうでもなく、冬も雪に埋まってしまうことはなく、冬の間に2、3回、多くて5回ぐらい20センチ程度の雪が積もるぐらいです。それというのもデンマークの西に位置する北海に流れる暖流メキシコ湾流と、東にはバルト海が位置し、海に囲まれているからでしょう。
おっと、今回は冬の話をするのではなく、デンマークの夏を語らなければいけませんね。
デンマークの夏は日が本当に長い。夏至のころは夜11頃まで、8月の終わりでも9時ごろまで空は明るく、日没から夜空に変わっていく時の、空の薄いブルーからだんだんと濃紺へと変わっていく様は北欧の夏を経験したことのある人には心に残るものかなと思います。

夏至の頃、夜11時 コペンハーゲン クリスチャウンハウン

天気のほうはというと、デンマークの天気は年ごとに違うようです。10年前の初めての夏は、毎日青空が広く高く広がり9月になっても暑い日が続いていたのに、今年の夏は雨も多く、8月の半ばだというのに、空気のなかには秋の気配が漂っています。もう街行く人々も薄手のコートを着ていたりブーツを履いたりしています。
デンマークの天気は本当に変わりやすく、天気予報も晴れ後、曇り後、雨なんて予報を良く見かけるし、また天気予報も本当に当たらないのです。まあ天気ばかりはどうすることもできないし、デンマーク人はそんな変わりやすい天気とものんびりと上手に付き合っていると私は思うのです。

デンマークの夏といえば、ピクニック、バーベキュー、ビーチや公園、家の庭やアパートのコートヤードで日光浴。夜も10時ごろまで明るいので、仕事が終わって家族や友達と集まって外でご飯を食べている人々が多いです。日が暮れるとやはり肌寒くなるので、ブランケットを体に巻いて、それでも外でみんなとわいわい話している。デンマークの良く見かける光景です。デンマーク人はお金を賭けないで生活を楽しめる術を良く知っているなと思います。

夕方、仕事の後の散歩 ローゼンボー公園にて

コペンハーゲンの広場にて

コペンハーゲンの町中を歩くと、5階建てぐらいのアパートが町のブッロクを取り囲むようにロの字型に配置され、たいていそのアパートで囲まれた空間が住民共同のコートヤードとなっています。そこの中ではベンチ、子供達の遊び場、芝生の広場、花壇など、さまざまな居心地の良い空間が作られています。
デンマーク人は人々と共有して所有することが上手い国民だと思います。
1人や1家族の力では所有できないけれど、何人か集まれば良い環境、あるいは住居空間を所有できる。それが広がりを持ち都市空間に影響を与えています。

コペンハーゲン、クリスチャウンハウンのコートヤード

私の働いているオフィスもそんなコートヤードに面しています。りんごの木の下で取るランチは忙しい合間のほっと一息つける時間です。コートヤードはアパートの住民共同で使われているので、私たちがお昼を取っている横で、おじさんが新聞をよんでいたり、学生が勉強していたり、子供達があそんでいたり、赤ちゃんが寝ていたり、とみんな自分の心地よい場所を見つけてくつろいでいるのもまたいいものです。

事務所のお昼の風景


事務所が使っているコートヤードの中で住民の子供が飼っているカメ、Folmer。私もひそかにかわいがっている。夏休みから戻ったとき、Folmerが見当たらず、おや?と思ったら、カメ小屋に 「Folmerはサマーハウスに行っています。8月xx日にかえります。」と書置きが。夏休みも終わり、Folmerもまた、コペンハーゲンに戻ってきました。(E.Hayashi)

※この記事は2007年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2007年当時のものです。

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特派員:林 英理子(デンマーク在住のランドスケープデザイナー)

Vol.10 『デンマークの春』
vol.9 『デンマークの冬/コントラストのある生活』
vol.8 『地域性とエコロジカル』
vol.7『物を大切にする暮らし』
vol.6 『社会に蓄積していくデザイン』
vol.5『Jorn Utzon』
vol.4『デンマークのクリスマス』
vol.3『デンマークの住宅、建築事情』
vol.2『デンマーク、自転車生活』
vol.1『10回目の夏』