ドイツからの便り vol.6『引越しは秋の風情』


残暑お見舞いをしようとしていたらすっかり秋のベルリンです。季節の変わり目、なんとなく落ち着かないのは日本もドイツも同じでしょうか。8月ですでに秋の気配でしたが、晴れたり曇ったり、昨日今日で10℃も違うと健康管理も大変です。

晴れてももう夏の空の色ではなくなりました。

新生活のはじまり

冷たい風が吹いて身が引きしまる頃、新学期が始まります。小中高校は8月末、大学は9月末に夏休みが終了。そんな秋の始まりに移動が多いのが大学生たち。地元の大学に通うのは稀で、新しい環境を求めて故郷を離れるのがほとんどです。本格的に親元を離れた生活が始まるのもこの機会。そして日本ではあまり聞きませんが新学期に大学を移る学生も多いのでまさにドイツの学生引越しラッシュとなるのが今です。

ドイツ学生のライフスタイル

さて、そのライフスタイルとは。
ベルリンではアパート暮らしが普通です。すぐに一人暮らしを始めるのでなく、多いのがフラットシェア。ドイツ語でWG(ヴェーゲー)といい、居間、キッチン、バスルームは共同で、それぞれ各自の部屋を持つといったもの。日本でも増えてきているそうですね。経済的なメリットだけでなく、新しい同居人を通じてネットワークが広がったり、楽しい魅力が多いのが人気の理由。

新居の探し方の一つとしてよく見かけるのが電柱に貼られた「同居人募集」のビラ。

住みたい界隈を散策して電柱やカフェの掲示板をチェック。

一般的なのがインターネットで探す方法。簡単にフラットが検索できるサイトがあり、希望項目をチェックしていき、理想の住まいを見つけていきます。

あとは友達の口コミだったりで、不動産屋へ行って探す、というのは買い家に限られるようです。

理想の新居の条件

決め手となるのは何でしょうか。
まずは地域の雰囲気。
若者が多くて遊び場所の多い地区、若いファミリーの多い地区、お金持ちが多い閑静な地区、高齢者の多い落ち着いた地区、地域によって表情をガラッと変えるベルリンではエリアの選択はとても重要なポイント。

さらに建築様式。建てられたのが第二次大戦の前か後か。
前に建てられたものをAltbau(アルトバウ)、後に建てられたものをNeubau(ノイバウ)とよびます。

こちらがAltbauの外観

Altbauは天井の高さが3〜4mもあり、大きなドイツ人でも見上げるほど。
古くて未修繕なら家賃は安く、プロの手できれいに直されていれば家賃に加算されています。ここでついでに家賃ですが、ベルリンは他のヨーロッパの都会、旧西ドイツに比べて家賃が驚くほど安く、学生が払う家賃の相場は平均して月200〜300ユーロ(円高の今でしたら2、3万円)といった具合です。これで20m平米の個室と共有空間がもてるのですから贅沢なものだと思いませんか?

Neubauの集合住宅の外観。

後者Neubauの作りは日本のアパートのような新建築。
こちらは全てがシステマチックにできていますが、Altbauを見てしまうとどこか味気なさを感じてしまうのか、人気なのはAltbauです。

それから決め手となる3つ目の条件は半年以上お世話になる暖房のシステム。
セントラルヒーティング、ガス暖房、石炭暖房のどれかで暖房費が驚くほど変わってくるのでここも重要なポイントです。

あとは、一つの贅沢としてほしいバルコニーがあるかないか。

こうして気になる物件が見つかったら品定めの下見に出かけます。
ここで未来の同居人と面接です。これから生活を共にしていくのに充分気の合う仲間かお互い品定めにかけられるのです。

晴れて新居が決まると次は引越しですが、ここで引越し屋さんの出る幕はなし。それほど荷物のない学生は引越しは自分でしてしまいます。レンタカー屋さんでミニバンを借りるか、車を持っている友達に頼みます。ダンボールをかかえたグループを見るのは月末になるとよくある光景。手伝ってくれた友達にはビールでお礼。ちょっとしたホームパーティーの口実にもなったりして。

日曜大工は国民的趣味

借りているアパートでもどんどん手をいれていくのがドイツ流。
床板を取り替えたり、壁の色を塗り替えたりするのは当たり前、壁を作ったり、穴を空けたりしてとことん自分のスタイルに変えていきます。

 白い壁が基本ですがこんな大胆な塗り替えももちろんありです

この趣味がやみつきになって、自分の家を建ててしまう、というアマチュア大工も少なくありません。

次回はドイツ人の住まいづくりについてレポートしようかと思います。
その頃にはきっともう冬、ですね。
※この記事は2010年にご寄稿いただいたものです。記載されている情報は寄稿当時のものです。

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特派員:スズキ(フランスで学生をしたり、スイスで時計店に勤めたり、気がつくとヨーロッパ10年目、現在はドイツで再び学生生活中。)
vol.1『エコロジストの正体』
vol.2『明かりの世代交代』
vol.3『寒さとのお付き合い』
vol.4 『待ちに待った春の訪れ』
vol.5『初夏を味わう』
vol.6『引越しは秋の風情』
vol.7『手作り家作り』