能代からの便りVol.1 『東北日本海側北部の夏をすごす』


今年の夏・例年の夏

今年の東北日本海側北部の夏は凌ぎやすかった。最高気温は32℃程度で、35℃以上にはならなかった。例年の夏は35℃前後が数日、30℃以上が1週間程度で、エアコンが欲しいのは1週間程度である。温暖化と言うが、その逆のようだ。冬は最低気温が零下7℃から零下10℃になり真冬日が増えている。積雪量も30cmから60cm程度に増えている。

自宅=築30年の夏に涼しく冬に寒い家の今夏

私の自宅は高断熱・高気密住宅でない木造在来工。壁・屋根・床:グラスウール(GW)10k厚100mm。窓:単板木製窓。未だ施工技術が無かった。

高断熱・高気密住宅でない木造在来工。壁・屋根・床:グラスウール(GW)10k厚100mm。窓:単板木製窓。未だ施工技術が無かった。

自宅:高断熱・高気密住宅でない木造在来工。単板木製窓。未だ施工技術が無かった。

寝苦しい夜は5夜ほどであった。2夜はパンツ一丁の裸で大きな掃出し戸の側で寝た。
自宅でのエアコン使用は暑さのための冷房の意味合いより梅雨がいつもより長く湿度が高いので洗濯物の乾燥やカビ防止の除湿に使った。
自宅がエアコン冷房に頼らなくても良いのは、網戸付きの大きな開口部を主体に風通しが良いのと、庇が4尺と長く日射遮蔽が有効なのと、横殴りの日射には簾で対応している。又、外壁が板張りで、モルタル塗りや窯業系サイディングと違い日射による蓄熱量が少なく、室内への再放射が少ない。

■芝置屋根のアトリエ=築21年の夏に涼しく冬に暖かい家の今夏

自身のアトリエの特色は芝置屋根と外付ブラインドであり、共に日射遮蔽に有効である。

高断熱・高気密住宅の木造在来工法。壁:高性能GW100mm、屋根:高性能GW200mm、基礎:基礎断熱押出し法発泡ポリスチレンB3厚50mm。窓:ブラインド内蔵木製サッシペアガラス+1、木製サッシArLow-Eペアガラス。3種換気。外付ブラインド。

芝置屋根のアトリエ

アトリエは設計事務所の仕事場なので蒸暑を我慢する事なく、不快な蒸暑時には快適に仕事をするためにエアコン冷房である。その他の時期は外付ブラインドで日射遮蔽しながら窓を開け通風をする。

41.5坪のワンルームを木造住宅12畳用3.6kWの家庭用エアコン1台で弱風運転の冷房をしている。人に冷風が直接に当たらなく、室内の温度は27℃で快適である。室内の冷房負荷付加になる熱が出る機器は、複写機、パソコンが5台、冷蔵庫、給湯器、照明器具がある。冷房の電気代は7月と8月の蒸暑時に月に1万円前後と少ない。

この省エネは高断熱高気密住宅である事と、芝置屋根と外付ブラインドと外装の杉板張りによる徹底した日射遮蔽による。

・日射遮蔽−1 芝置屋根

アトリエの芝置屋根

アトリエの芝置屋根:アップルミントやヨモギなどの野草とススキが藪をなす。

芝置屋根の土は基礎の残土を再利用し厚さ200mmで、その上の植物はアップルミントやヨモギなどの野草とススキの薮である。

芝置屋根に生えるイチハツの花

芝置屋根に生えるイチハツの花

ススキは高さが1.5mほどになる。それらの合間に、イチハツ(写真)やカンゾウやスイセンなどが花開く。たまには枝前やカボチャを植える。

瓦屋根や鉄板屋根では日射を受け70℃前後の高い温度になるが、土の中の温度は28℃から30℃で安定している。その下に厚200mmの断熱材があり、室内の屋根なりの天井の表面温度は28℃と低い。室温が27℃だから温度差は1℃しかなく極めて輻射熱が少なく快適である。

・日射遮蔽−2 外付ブラインド・内蔵ブラインド

南側の大きな開口群からの日射熱は極めて大きく、日射透過率45%の日射遮蔽ガラスを使っているが、日射が少ない冬の30分ほどの日射でもオーバーヒートしてしまう。

 

朝顔による日射遮蔽

朝顔による日射遮蔽

夏を凌ぎやすくするには窓の日射遮蔽が重要である。外付ブラインドの設置前は朝顔で日射遮蔽(写真上)をしていたが、1階の窓が朝顔の葉で覆われるのは8月下旬で、それまでは日射遮蔽の役目は十分でなかった。7月になるように朝顔の種を早く植えると寒さで枯れてしまった。美観的には申し分ないが、上記の理由から外付ブラインド(写真下)を設置した。

外付けブラインド

外付けブラインド

西側の窓はブラインド内蔵木製サッシ(写真下)で西日の遮蔽をしている。室内側のペアの外側にブラインドが内蔵され、更にその外側にガラスがもう1枚セットされている。ブラインドの室内側の熱がペアガラスで遮られる。

西側の窓に設置した内臓木製サッシ

西側の窓に設置した内臓木製サッシ

外付ブラインドが無い場合の窓の日射遮蔽ガラスの室内側表面温度は約31℃であり、ある場合の表面温度は約28℃である。室温が27℃だから窓からの輻射との温度差は1℃しかなく極めて少なく快適である。

・日射遮蔽−3 鎧張り杉板外装

比重の軽い杉板と鎧張りの重ねの空隙で日射遮蔽ができ、外壁の日射による蓄熱が防げ、室内への再放熱が少ない。壁中の断熱材と共に遮熱と断熱で室内の南側の壁の表面温度は28℃と低く、極めて輻射熱が少なく快適である。

・冷地熱の利用 

基礎断熱なので冷地熱が床下の土間コンクリートに伝わり、温度は23℃前後の低い温度で安定している。その上の床面の温度も24℃前後で室温の27℃よりも低く心地よい冷輻射になっている。昼寝などで床面に直に寝そべると体が冷えてしまう。

130828nisikata西方里見(にしかた さとみ)

1951年秋田県能代市生まれ。1975年室蘭工業大学工学部建築工学科卒業後、青野環境設計研究所を経て、1983年西方設計工房開設。
2004年設計チーム木(協)代表理事。
2013年 建築知識700号記念「日本の住宅を変えた50人+α」に選定。
著書は最高の断熱・エコ住宅をつくる方法」「「外断熱」が危ない」「プロとして恥をかかないためのゼロエネルギーのつくり方」等がある。