イタリアからの便り vol.1 『購入か賃貸か?住まい探しはコネが大事』


日本の四季と似ているイタリア、南北に長い国であることでも共通点はたくさんあります。こちらも紅葉が美しい秋の真最中です。

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(左)トスカーナの秋 (右)アパートメントの中庭

今回、イタリアの住宅事情をレポートいたしますアンベと申します。リラの時代は良心的に感じていた住居費でしたが、ユーロに変換する瞬間に“家賃のいきなり値上げ”がスタートしました。リラ→ユーロへの換算は四捨五入でなく切り上げし、このチャンスに値上げせずにいられるか!ごとく多くの大家さんが告げた金額に借り手の驚きとブーイングは激しかったようです。当時、住居費は切り上げ換算、給料は切り下げ換算などと言われていました。それから約10年、残念ながら未だ住居費は下がらず、特に賃貸に関しては高値が続行中です。

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(左)フィレンツェ郊外のペントハウス (中、左)外から見ても間取りは全く想像できない

数年前までは購入する人が多かったようですが、今は不況も伴い高額でも賃貸に移行。それでも「お金さえあれば賃貸より購入の方がお得な状態、絶対に購入がお勧め!」とみんな口を揃えて言います。賃貸料は高額なままですが、購入に対するローン利率が最近下がってきていて、若いカップルなどは20〜30年でローンを組んでいるようです。
中世都市で有名な町、歴史的中心地(Centro storico)は人気も金額も高い!ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマのような素敵な町に住むのは大変なのです。

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(左)フィレンツェ中心地 (中)ローマ中心地 (右)ヴェネツィア住宅地

町の中心部界隈に住居を考える場合はほとんどがアパートメント、一軒家を希望するなら郊外になります。イタリアの建物は建て替え時の規制が厳しく、一軒屋を購入してリフォームしようとしても、部屋それぞれの用途すらも変えられない場合があります。アパートメントも間取り・構造そのものには手を出せず、内装デザインの勝負です。

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(左)主要都市のアパートメント (中)地方都市のアパートメント (右)主要都市近郊、海沿いのアパートメント

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(左)主要都市のテラスハウス(長屋)の専用庭 (左)地方都市の一軒家

賃貸の場合は家具付が定番です。私がローマで借りた時は主な家具類は当然のこと、テレビ、洗濯機、ガスオーブン、アイロンなどの家電、調理器具や食器一式全て込みの上、大家さんのご厚意でシーツや布団類まで借りることが出来ました。賃貸で家具付というとテレビなど娯楽家電やキッチン用具は無いのが普通ですから、今思えばかなりラッキーな物件でした。賃貸では地方から来る大学生や各国からの留学生が一緒に住むシェア用の家が多く存在します。各部屋+キッチン・トイレ・バス共同というものです。イタリアの古い建物は入るまでその間取りが把握できないものが多いのですが、ある友人の部屋を訪れた時、2人部屋1+1人部屋3+屋根裏2人部屋2+トイレ&バス2+キッチンという何人住んでるの!?迷路のような間取り、屋根裏なんて立って歩けないんですよ!安いとはいえ、すごい賃貸物件でした。

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(左、中)ローマで借りたラッキーな賃貸物件(70m2:2部屋+キッチン+バス&WC) (右)ホームステイを受ける一軒家

購入の場合は物件により家具付状況は変わります。“全く無し”はキッチンやシャワーブースすらありませんから 通常ある場合は“キッチン、バス付”と表現します。これらも家具の部類になるのですね。造り付け家具も新たに設置して価格を上げたりする例も少なくないようです。賃貸でも購入でも自分の好みにリフォームをしたいと思う人はあまり家具が無い物件、短期や今すぐ生活をスタートしたいと思う人は家具付を選びますね。もちろん賃貸のリフォームは大家さんの了解が必要です。まあ次の借り手が引く手あまたのデザインならOKサインが出るでしょう。

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(左)トスカーナ地区(購入) (中)フィレンツェ中心部(賃貸) (右)トスカーナ州エルバ島:夏のテラス付別荘(賃貸)

住まい探しのツールは何と言っても知人のつて。誰々の紹介等コネありの所有物件を何とか探しあて、いい条件で借りたい、買いたいのです。その土地の不動産屋さんに飛び込むこともありますが稀です。不動産屋さんを通さず、大家さん直接交渉が金銭的にも得だとわかっているからです。

ネット検索は主に海外からのアクセスが多く、イタリア人は相場を参考にする程度でコンタクトは少ないといいます。学生や留学生は校内の掲示板や学校側の紹介で情報を得ることがほとんど、また帰国する人から引き継ぐ形で住み始めることも多いようです。ある部屋は引き継ぎ続けてずっと同郷の人!ということもあります。大家さんにも探す手間が省けるのだから少し安くして!と値段交渉もあるようです。

その他、情報雑誌や新聞広告を見て電話、実際の家を見るという方法もあります。いずれにしても住居費の高いイタリア、不動産屋さんに払う余裕はない!というところでしょうか?

話は変わりイタリアのエコ事情ですが、現在ようやく住民に浸透中です。数年前からゴミの分別がはじまり、IKEAのエコバックをおしゃれに?使う・・・ただ10年以上前からレジ袋は有料でしたので私も買い物袋は持ち歩いていました。これはエコ先進だったのかも!予算のつく都市部ではエコへの取り組みが活発になり、エコバスや小さな電気自動車が見られるようになりました。自転車のシェアリングもスタートしましたが、残念ながら利用は少ないようです。

車も自転車も絶対に自分自身のものが必要で、シェアは無理だといいます。さて今後どうなるのでしょうか?建築業界ではエコハウス、エコ建材の需要が少しずつ高まってきています。この話は次回「住まいづくり」に続きますのでお楽しみに。

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(左、中)ミラノに点在する電気自転車シェアリングのステーション (右)太陽光電池で作動するパーキングメーター

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(左)電気自動車、バイク、自転車の充電ステーション (右)分別のカラフルゴミ箱

※写真に特記無いものは全て筆者撮影によるもの

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※この記事は2010年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は寄稿当時のものです。

特派員:安部彩英子(AMBE SAEKO 一級建築士/ランドスケープデザイナー)
大手ゼネコン設計部を退職後、イタリア・フィレンツェへ渡り庭園学の専門学校入学。平行してピストイアにある造園事務所にてガーデンデザインのアルバイトの日々。1年後ローマに移住し、在伊日本大使館営繕室に1年ほど臨時職員として勤務。館内のリニューアル工事に関わると共に日本大使公邸の庭園修復を手掛ける。
現在は夫と一緒に会社を立ち上げデザイン業務遂行中。4歳の娘の母、東京暮らし。

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イタリアからの便り vol.2 『イタリアの家づくり』