首里城が焼失して1年が経ちました。
首里城公園では、この節目に首里城プロジェクションマッピング・首里城復興沖縄空手演武会を行いました。昨日は満月で、また台風が近海で発生しているせいか、風が心地よく吹いていたので自宅から徒歩で首里城に向かいました。
私にとって首里城は、実は祖父が戦争で焼けた首里城跡に土をかけて整地を行っており、父が30年前に復元設計を担当して、現在兄が沖縄県で再建に関わっており、どこか近いけど、どこか遠い存在です。子供の頃、父に連れて行ってもらった首里城跡の敷地、高校時代首里城で過ごした思い出、そして大人になって建築の仕事を就いてからの感じる想い、日々変化していきました。
「土地の記憶」について、建築との関わりを深く考えるようになりました。
沖縄の文化、風土を大切に未来に残していきたい、そんな沖縄県民の想いが一丸となっているのを感じています。
同じように、私たちは環境共生住宅という観点からも沖縄の気候風土を生かした住まいを、未来に残していきたいと思っています。
まさに昨年の夏の投稿で、「サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応住宅型)では、木造のみを評価していますが、RC造、混構造は、気候風土に適応していない構造なのでしょうか。」
と書いておりましたが、今年度からなんとRC造も対象となり、私を含め沖縄からRC造とCBと木の混構造の2住宅が採択されました。
外部が過酷な環境ではない沖縄では、快適な外部を生かした住まいが省エネにつながります。
一方で、強い紫外線や塩害、台風常襲地であるため耐候性は重要です。さらに温度だけでなく、常に湿度が高いためその対策も検証する必要があります。
ある程度、断熱と気密で守られれば快適につながる住宅よりも、開放型住宅への評価は、もっと複雑です。
だからといって、評価を今後もしないとなると沖縄らしい住宅が減っていき文化も景観も変わっていきます。(実は、もうすでに変わってきています。)
日射遮蔽性能について、蒸暑地以外では省エネに繋がらないことや塗料のように実際色の確認が容易でない、劣化がしやすい、等の理由で評価につながっていないものもあります。
今回、提案した住宅に関して独自に日射遮蔽効果を試算したところ法基準による計算では、冷房エネルギーを年間42GJ使うという結果でしたが、日射遮蔽効果を加味して試算すると26GJ使うという結果になりました。
現在のところ、外皮基準も冷房期の平均日射熱取得率が3.2から6.7に運用されることが決定しているので、法基準に満たされない住宅は、ほとんどなくなりました。
でも根本的な課題を避け、なくなったようにしているだけなのかもしれません。
これから新築でのZEH(ゼロエネルギー住宅)を平均化していくという方針であれば、例えば沖縄では実際は26GJしか使われない冷房エネルギーを42GJ使うという判断で、再生エネやそれに替る設備投資等を行わないといけなくなる可能性があります。
もちろん、今までの建築様式を変えて対応すれば容易にクリアできるのかもしれませんが、どうして間違った造り方をしていないのに、変える必要があるのでしょうか。
変えることで受け継がれてきた風土や文化は、どのように変容を遂げてしまうのでしょうか。
さらに今年は新型コロナウィルスの感染が広まり、多くの犠牲や命が失われていきました。
今書いている時点(2020年10月31日)は、沖縄県では、32人の感染が新たに確認され、直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者は14.48人と29日連続で全国ワーストが続いている状態です。
沖縄建築に限らず、もっと外で快適に過ごすことを提案していくべきではないかと、考えています。
そして、それが省エネにも健康にも文化継承にも役に立つのならもっと推奨していけると思います。
ZOOMやSKYPEなどが常用されるようになってから、「場所」としての意識も強く考えるようになりました。
沖縄にいる意味はなんだろう。ここでしか体験できないことはなんだろう。
もちろん、もっと健康を考える。自分で治せる免疫力をつける。
ちょっと疲れたり微熱があればしっかり休む。そんな当たり前のことを見直すきっかけになりました。
人との関わりを大切に、なんでもない普通の幸せな毎日を過ごせていけたらいいですね。
皆様もどうぞご自愛なさってください。
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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年から2019年まで特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事を務めた。一級建築士。2020年、松田まり子建築設計事務所設立。
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