福岡の冬を一言であらわすなら、それは「曇りの日々」です。
12月から2月まで青い空の晴天が続くことはほとんどありません。
北からの季節風もつめたく吹いてきます。
17年間つけ続けている太陽光発電の天気の記録からみても 月の半分以上が曇りか雨またはしぐれ、雪です。
2000年に福岡に移住するまで太平洋側の大阪で暮らしていたので 越してからの数年はこの曇天にまいったものでした。
皆さんが思っている福岡のイメージとは随分かけ離れているかもしれませんね。
それでも気温的には寒い日でも日中5℃程度、平均すると10℃前後ですごくごく冷え込む日もそんなには続かず、たまの短い晴天が心地よく、やはり住みやすい場所ではあります。
私たちはこの曇りの日々を楽しく過ごすため、設計する住宅のほとんどに薪ストーブをつけます。
外の間で3シーズン内と外を行き来しながら暮らしますが この3か月だけはちょっとだけ内を向いて暮らします。
薪ストーブをつけると、複層ガラスの木製建具、性能の良い断熱材のおかげで吹抜けでつながった室内はあっという間に20℃を越えます。
健康な子供たちは頬っぺたは紅潮し、冬でもはだしとシャツ1枚で過ごします。
新築する前は皆さん、断熱性の低くまた結露に悩まされた日本家屋で過ごしていたため、薪ストーブを体感すると、遠赤外線のおかげで体の芯までぽかぽかになります。
とくにはまるのは忙しいお父さんです。
それまでの家ではせいぜい家事の手伝いを申し訳なくする程度だったものが、ストーブのある家に住み始めると、大きな仕事を任されるようになり、とても頑張ります。
乾燥した薪しか燃やせないので1年以上前から薪を集めます。
集め方は様々ですが、公園の伐採の木をもらう、山を持っている人と友達になる、横のつながりで連絡を取り合い薪がでると皆で取りに行く。などなど努力して集めます。
そして夏の終わりごろから暇を見つけてはせっせと薪割です。
そのうち薪の並べ方、薪棚まで凝り始めるようになります。
いよいよ、冬が来たとき、皆で待ちわびていたストーブに火を入れ、炎を見ながらの至福の日々が始まります。
楽しい冬に変わります。
私たちもアトリエのそばにある森へ、子供と一緒に火つけ材となる杉葉や小枝を拾いに行きます。
元気なころの祖母がよく行っていた『柴刈り』は、里山の掃除も兼ねています。
また冬の森の愉しみは野苺摘みです。つわの葉をくるんと巻いて籠にします。
これも祖母から教えてもらった昔からの知恵です。
そのあと、畑によって大根や白菜を採って晩御飯にします。
ストーブの上で温めた野菜のスープは滋味深く、芯まで温めてくれます。
このように自然の循環が日々の生活と共にあります。
冬の薪ストーブ暮らしが始末の良い暮らしに繋がっているのです。
1月の中旬、キッチンから見える梅のつぼみがもう膨らみ始めています。
*
福岡からの便り 特派員 アトリエ艸舎 一級建築士事務所
鈴木達郎
1964年生まれ 静岡県出身
大阪芸術大学建築学科卒業
1996年アトリエ艸舎
2000年福岡に移住
鈴木美奈
1967年生まれ 福岡県出身
奈良女子大学生活経営学科卒業
Ms建築設計事務所にて木の家を学ぶ。
1996年アトリエ艸舎
2000年福岡に移住
福岡県遠賀郡岡垣町高倉1348-1
TEL093-282-7720
E-mailはこちら