北海道からの便りVol.1


今回は最北の北海道からの便りをお届けします。

この時期、(6月~7月)は、日本の中で最も気持ちよく過ごせる地域と言っても良いのでは?と思うほど、初夏の北海道は清々しい日が続いています。

少し振り返ると、今年の札幌は例年にない大雪で(3月の積雪量は観測史上4位だったとか。)いつもより遅い春を今か、今かと待ちわびながら桜前線の北上を楽しみにしていました。

5月に入ってようやく訪れた待ちに待った春。北海道の春はまるで、過酷な冬を頑張って乗り越えたご褒美のような素敵な季節です。
梅も桃も桜も万を時して一斉に咲き誇ります。
道ゆく人たちの表情も、みんな笑顔に感じます。

そんな北海道のお花見は、短い春を惜しむようにみんなで焼肉をするのが定番です。
こちらでは焼肉といえばそう、ジンギスカン。
この匂いが漂いはじめると、ちょっとでも暖かい日を狙って、桜の綺麗な公園へ繰り出します。

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札幌の桜の名所 円山公園
期間限定で火器の利用が可能になります。寒くても、雨でも、老若男女が集まってきます。
そんな桜の見頃も今年は短くて、1週間ほどで過ぎ去ってしまい、
あっという間に初夏の日差しになってしまいました。
人に会うたびに、「今年の春は来るのが遅くて、あっという間にいなくなってしまったねぇ〜」という話題で持ち切りだったことを思い出します。

このように近年は、積雪量や春の様子で気候の変動を肌で感じることが多くなってきました。私が子どもの頃は10月には寝雪になり、気温ももっと低かったように感じますし、冬の間に雨が降るなんて言うこともありませんでしたが、近年では昔ほどしばれないし、クリスマスにまだ根雪でない年もあったり、1月2月は最も寒い時期なのにお正月に雨が降ったりもします。

また、春先に今までなかった梅雨のようなじめじめした天候が続いたり、(蝦夷梅雨と言ったりもするようです。)お盆を過ぎればすぐに秋の気配が漂うのが普通なのですが、昨年は9月の中旬を過ぎても真夏日が続き、これがいわゆる残暑というものか…と体感することもありました。

私たちの感覚では「夏にエアコン」が欲しいなぁ〜と思うのは7月の中頃からお盆までの1ヶ月の間にほんの数日でしたから、一般家庭にはほとんど必要なくて、扇風機で十分やり過ごせたのです。

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雪の残る羊蹄山を背景に、一斉に芽吹き出したしらかばの林。
6月初めの北海道はこの芽吹きのうつくしい若葉色につつまれます。

北海道の真ん中あたりに位置する旭川市で育った私は、札幌に来るまで「寝苦しい夜」をほとんど体験したことがありませんでした。寝るときに網戸にして寝ると、朝方には寒くて目が覚めます。慌てて窓を閉めて布団をかけて寝直す〜。真夏でもそんな感じでしたから。

北海道の中でも地域差はありますが、「厳しい冬をどう快適に過ごすか。」ということは、建築に携わる諸先輩の努力あって、手厚い断熱ときちんと気密を取ることでほとんど解決できるようになりました。

が、近年は寒冷地である北海道でも年々暑くなってきている夏をどう快適に楽しく過ごすか。ということにフォーカスしていかなくてはならないと、強く感じているところです。

130731_hokkaido004現場帰りでの倶知安町の風景
ジャガイモ畑が満開です。疲れた帰り道にはっと、心洗われます。
ジャガイモは元々食用ではなく観賞用として伝わってきたということを
聞いたことがありますが、納得の綺麗さです。

下川町は道北に位置する環境未来都市です。古くから循環型森林経営を営む森のまちです。北海道でも最も寒い地域で、冬は−30℃、夏は+30℃にもなり、60℃の気温差をいかに快適に過ごせるようにするか、そしていかに素敵なロケーションを取り込みながら、開放的にできるか挑戦しながら、地場の木材で環境負荷を最小限に押さえた設計を心がけました。

雪も、年間降雪量9m(積雪量は1.5m)と、とても多い地域ですから、雪かきしないで使える空間はとても貴重で、冬を楽しむツールにもなります。大きく張り出した庇は夏の日射を遮りながら北海道らしい力強いファサードをつくり出しています。

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今年で竣工後3年を迎える下川町環境共生型モデル住宅美桑

写真は竣工当時のもの。(撮影:KEN五島)現在は、外壁の雰囲気がより周辺環境になじんできました。ぜひ体験宿泊で体感して頂きたいと思います。(体験宿泊については 五味温泉 HP http://gomionsen.jp/mikuwa/ 環境省21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業については http://www.env.go.jp/policy/ecohouse/

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今年の春のエコハウス。
竣工後3年経ってだいぶ周囲になじんできたように思います。
お椀型の裏山の麓、わずかな水流にオタマジャクシがいっぱいでした。
周辺は、カラマツやトドマツの美しい林に囲まれて、鳥の声が響いています。
 

竣工してから通年で環境測定をして頂いていますが、測定期間中の外気温が高い2週間を取り上げて分析したところ、外気が30℃を超えても室温は25℃前後を保ち、土間のある1階はさらに2,3℃低く保たれており、夏の防暑対策として、壁の300mmのウッドファイバーと、屋根面の500mmのセルロースファイバーの断熱はもちろんのこと、屋上緑化と土間床が有効に働いていることがわかりました。朝は外気温が15℃前後と低くなっても室温はほぼ一定で、ナイトパージを適度に行えば、日中の室温はもっと低めに押さえることも可能でしょう。

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地方独立行政法人北海道立総合研究機構 建築研究本部 北方建築総合研究所と
東海大学 芸術工学部建築・環境デザイン学科の協力を得て、
2010年5月27日〜通年で温湿度測定を実施しています。

また、札幌で暮らしながら道内各地を訪れる機会が多くなってきました。産まれてからずっと北海道にいますが、仕事であちこち走り回っていると、本当に北海道はおっきいなぁ〜。と感じます。住宅の設計の依頼を受け、まずはプランニングのヒントを見つけに敷地に赴きますが、気候の違いに驚きます。

素敵なご縁を頂いて、年間累積で10m以上の降雪がある倶知安町でもお仕事させて頂いています。ここではその豪雪をいかに楽しく暮らしに取り入れられるかがテーマです。冬の風速が 20mを越える歴史深い海辺の町江差町では、その厳しく冷たい風をどのように面白く活かせるか、がテーマです。

困難を克服するのではなく、面白楽しく暮らしに取り入れることで、厳しい気候もその土地ならではの魅力として輝くはずです。今ある技術を最大限に生かしながら素晴らしい北海道の風土を楽しめる、環境に優しく人にも優しい。そんな建築をこれからも設計していきたいと思っています。倶知安と江差の事例は冬の号で改めてご報告できればと思っています。

130731_hokkaido007初夏の下川へ~。遠い山々の残雪と、道ばたのたんぽぽと。
写真に写る赤と白のシマシマ矢印は矢羽根と言って、
冬の猛吹雪でホワイトアウト状態でもここから道路だよと教えてくれる命綱。
冬の現場通いでは、何度も遭難しそうになりましたが(大げさ。笑)これに助けられるのです。

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北海道からの便り-特派員/櫻井 百子(さくらい ももこ)

1973年北海道旭川市生まれ。北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て2008年アトリエmomo設立。子育てしながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。