ドイツからの便り vol.2『明かりの世代交代』


地域からのたよりリレーが一周し、バトンがドイツにまわってきました。
季節は変わり、足早に走り去ってゆく秋の後姿を見とどけながら長く厳しい冬への準備が始まっています。

街を歩いていると街路樹にクリスマスのイルミネーションが取り付けられてゆく作業をよく見かけるようになりました。

ベルリンでは雨がちで寒く暗い日が多いこの時期に毎年光のフェスティバルが催され、ブランデンブルク門やテレビ塔をはじめとした観光名所が色とりどりにライトアップされます。

 (旧西ベルリンから旧東側へと架かるオーバーバウム橋には幻想的なライトアップ)

明かりが灯されるとなんだか少し暖かくなったような気になりませんか。
というわけで今回のテーマは「明かり」です。

サマータイム制度
日照時間が季節によって大幅に変化する欧米では年に2回、時計を1時間調整して太陽の出ている時間を有効に使い、省エネに繋げようというサマータイム制度が導入されています。
1916年ドイツで始まってはや90年。本当に省エネに有効なのか、体内時計との調整が難しいなどの否定派意見もきかれますが、季節の変化に改めて気付かされ、環境改善に焦点のあたる良い機会でもあります。

EU圏では10月の最終日曜日の午前3時に時計を1時間戻すことで冬時間が始まります。1時間多く眠れるこの日はこれからの寒さに耐える体へのご褒美のようです。
こうして冬時間に入ると午後3時には日が傾き始め、あっという間に真っ暗。
ふと電気のスイッチに手が伸びます。

蛍光灯と白熱電球
室内にいる時間が自然と長くなるこの季節、ドイツ人の家庭にはどのような明かりが灯されているのでしょうか。

日本をはじめ比較的暖かい地域で好まれる白い明かりに対し、寒冷な地域で好まれるのは温かみを帯びたクリーム色の明かり。
こちらの室内照明は日本人には少し暗いと感じられる間接照明がほとんどで家庭で蛍光灯がこうこうと点いていることはありません。

雰囲気の出るロウソクも人気ですが室内照明の主役は約130年昔にエジソンによって発明された白熱電球です。
しかし白熱電球の欠点は消費される電力のわずか5%が発光に、残りの95%は全て発熱に使われるというエネルギー効率の悪さです。

EUの環境対策
環境への取り組みに熱心なEUはここに着目し、2020年までに温室効果ガス排出を20%削減する計画の一環として、今年から2016年にかけて白熱電球、ハロゲン電球を段階的に廃止する策を打ち出しました。

まず今年9月1日から販売が禁止になったのは全てのつや消し電球と100Wの電球。
来年2010年9月1日には一段階ワット数の低い75Wが禁止となります。
そこで代替品として登場したのが緑の矢印が目指す先にあるSparlampe(シュパーランペ=省エネ電球)、電球の形をした蛍光灯です。

二酸化炭素の排出の多い白熱電球を廃止することで年間約3,200万トン(約2300万世帯分の電力消費に相当)の二酸化炭素排出量削減を可能にする目標です。

例えば私が最近購入した省エネ電球は7Wで従来の白熱電球30W分の電力を発揮し、寿命は一つで電球の10倍ということになるようです。
環境にだけでなく消費者にも電気代の節約というメリットがあるのです。
60Wの白熱電球10個を11Wのものに替えると1年間で90ユーロ(約13,000円)の電気代節約になる計算です。

省エネランプが市場に出た当初は蛍光灯そのものの光を発する製品(写真右)のみで、クリーム色の光に慣れているこちらの人には交換に抵抗があったようですが、開発がすすみ、白熱電球と変わらない光のもの(写真中)を選べるようになり、移行はスムーズに運びそうです。

今後さらに省エネランプより効率がよいとされているLED(発光ダイオード)電球の開発に期待がされています。
室内に限らず、屋外でもクリスマスのイルミネーションが映え、これから明かりを使うことが最も多い時期に入ります。省エネランプが本格的に導入されて初めてとなる冬に実際どれだけの効果があったのか、発表が暖かい春の到来とともに待ち遠しいものです。

※この記事は2009年にご寄稿いただいたものです。紹介している情報は2009年当時のものです。

★『ドイツからの便り』の他の記事を読む
特派員:スズキ(フランスで学生をしたり、スイスで時計店に勤めたり、気がつくとヨーロッパ10年目、現在はドイツで再び学生生活中。)
vol.1『エコロジストの正体』
vol.2『明かりの世代交代』
vol.3『寒さとのお付き合い』
vol.4 『待ちに待った春の訪れ』
vol.5『初夏を味わう』
vol.6『引越しは秋の風情』
vol.7『手作り家作り』