台風22号が去ったあたりから、一気に半袖だと肌寒くなって来ました。
ついに沖縄でも、そろそろ夏モードを切り替える時季になっています。
前回の台風は久しぶりに直撃したような気がしました。
我が家では、アパート前にあった3階建の高さまである木が倒れ込んでいました。また近所のバルコニーに設置してあった木製ルーバーが落下していました。幸いけが人もなかったのですが、木がもたらしてくれた大きな影や木漏れ日、爽やかな風を失ってしまった事はショックでした。
以前お話ししたように沖縄はRC造が既存ストックの9割を占めています。確かに台風からは守ってくれるありがたい構造ですが、実際快適性はどうなのでしょうか。また、省エネ性はどうなっているでしょうか。
平成28年9月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が公表されました。そのガイドラインを読んで「あ、沖縄だ!」と感じた箇所がありました。
地域の気候及び風土に応じた住宅に特徴付けられる要素の例の表があり、その中に伝統木造の要素に混じって「屋根通気ブロック」「花ブロック」と記載されていたからです。
少なくとも、伝統木造だけじゃなくRC造であっても沖縄らしい住宅として気候風土適応住として認定できる可能性があると思いました。
沖縄県では、今年の3月から先月の10月まで「沖縄らしい気候風土適応住宅形成事業」が行われました。
その事業では既存の住宅に関する調査や省エネ基準適合状況の調査を行ったのち、「沖縄らしい気候風土適応住宅認定基準」(案)の策定を行う内容でした。
実態調査を行えば行うほど、沖縄の一般的な住宅は外皮の基準である平均日射熱取得率の基準値達成が困難である事がわかりました。
断熱性能を示すといわれているU値、これは沖縄県の8地域だけは基準の規定はありません。
冬の断熱の重要性はそこまで感じられないので、納得できます。
もう1つの日射遮蔽性能を示すηAC値の基準は、全国で一番数値の高い3.2とされています。
数値は低いほど厳しいので全国で一番沖縄県の日射遮蔽性能基準が緩い規定となっています。ちょっと不思議です。
そして、この一番緩いはずの基準値であるはずが達成困難な状況でした。
RC造、混構造、一部現代木造含む20件の一般住宅を計算したところ、平均は5.3になり全ての住宅が未達成という結果になりました。(因みに基準はありませんがU値の平均値は2.57でした。)
この基準値は、各地域の施工技術やコストなど様々な要素を勘案しながら決めていったそうですが、もしかすると再度この根拠を掘り下げてみることも必要かもしれません。
現在、各部位のη値の計算には、日射遮蔽効果がある日射反射(白色塗料など)や通気(通気ブロック、屋根付きバルコニー)などの効果は算入されていません。
その他に屋上緑化や壁面緑化による蒸散作用、赤瓦(素焼き)の蒸散作用や屋上砂利敷きなどの効果も算入されていません。花ブロックも同様です。また隣戸や屋敷林、植栽による日射遮蔽効果も算入できません。
今後沖縄での日射遮蔽技術について、効果を数値化しひとつ1つしっかり評価していけなければならないという課題があります。
もちろん美しい赤瓦屋根の伝統木造住宅も沖縄らしい気候風土適応住宅だと思います。
しかし同様にRC造も、強い日差しにも耐え、熱を遮る工夫、台風から身を守る堅牢さ、外部の平均風速5mを生かした軒や大開口という大切な気候風土に適応した要素があります。
大型台風が来ても大きな被害には至らず、命を守ってくれる安心感、半世紀という時代を通して地元建築士が培ってきた仕様や工法は、次世代にも受け継いでいけたらと思います。
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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。一級建築士。
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