平成27年の新春を迎えました。当地富山の今冬は12月上旬から周期的に冬型の気圧配置となり雪が降っています。
元旦も雪の中でしたが、富山市内では40センチメートルほど、山間地ではもっと積もっていることと思われます。
冬には天気予報のたびに「西高東低」の等圧線を目にします。大陸に高気圧があり、千島列島あたりに低気圧があります。日本海を越えて北西の風が吹き付けるわけです。
先日、氷見海岸から富山湾を眺める機会がありました。雪模様の中、海面からゆげが湧きたっています。「ケアラシ」と呼びますが、感動の風景でした。大陸の乾燥した冷気が日本海を渡る間にこうして雪雲が発達するのかと実感したものです。
当地では例年、1月下旬が一番の積雪を記録するので、この原稿が皆様の目に触れるころにはもっと多いかもしれません。
雪が降ると朝起きてまっ先にやらなければならないのは雪かきです。玄関周りや車の出入り口などは最低頑張らなくてはなりません。近くに小川などがあればそこに落としますが、捨てる場所がないと邪魔にならない所に山積みにするなど本当に大変です。
道路は主要な道は県や市で除雪車を出し車は通れますが、脇によけられた雪の山は近くの者で始末しなければなりません。歩道が問題で誰かが歩くと踏み跡ができ、ここを辿ることになります。
子供たちが通学の時間までにこの踏み跡が大きくなっていれば良いのですが、もっと積もると、やむを得ず車の通る道路の脇を通るしかなくなります。とても危険なので心配になります。
そんなことから、当地では道路上の融雪装置が普及しています。市街地の主要道路の混雑が想定される場所などに設置されています。井戸を掘り、地下水を汲み上げ、道路に散水するのです。これで降った雪を溶かします。横断歩道など周辺はびしょびしょになりますが交通の安全には相当効果があります。
生活道路、地域の細街路にも融雪設備が普及しています。富山市では設置に際し二分の一の助成制度があります。この制度を活用して地域で融雪組合を組織し、消雪装置を整備しているのです。設備工事費や管理費、電気料等で各戸の負担はありますが、このおかげで、相当に助かっています。
歩道にも設置できるので、歩く人にも大助かりです。設置されている地域とそうでない場所では天国と地獄かと思われるほどです。
ただ問題もあり、地下水を大量に汲み上げるのでこれが大変心配なことでもあります。
雪国の暮らしでは、1メートルを超える程の積雪になると、屋根雪おろしを心配しなければなりません。山間地では一冬数回も雪おろしをする必要に迫られます。幸い近年平野部の積雪はそんなに積もらなくなっていることと併せ、2メートルの雪にも耐えられる構造の「載雪型住宅」が普及していることから、とても助かっています。
一方、屋内の暮らしで一番困るのは洗濯物です。近年浴室に乾燥設備を備える例も聞きますが、そんなに普及しているとも思われません。居間のストーブの前で乾かすなど大変苦労するところです。
少し飛びますが70年代、公営住宅は「標準設計」と呼ばれる仕様で建設されていました。最低居住水準をクリアーするもので当時の公団などが開発した基準で一律にきめられていたものです。
狭いのでやむを得ず洗濯機をバルコニーに置くなどしていました。冬は寒いし、物干しも風雪に晒されるし、各自が樹脂製の波板などでバルコニーを囲っていました。それぞれが勝手に行なうのでそれは見るに耐えない外観となっていたものです。
昭和50年ごろだったか、これを何とかしたいということで、富山県型「標準設計」を作るにあたり、地元メーカーであるYKK(現YKK・AP)の技術陣の協力を得てバルコニーの一部に「サンルーム」を新たに設置しました。雪害防除の「特例加算」ということで国の支援の対象にもしていただきました。当時、全国で始めての試みだったと記憶しています。
それから30年余りが経過し、今では民間マンションをはじめ当地では集合住宅にはサンルームが当たり前となったほどです。地域の気候に合った集合住宅のスタイルが広く普及してきたことは本当に心嬉しいことです。
仕事柄市町村役場を訪ねることがあります。先日県東部の町役場に行く機会がありました。玄関を入るとふわっと温かく感じます。見ると人だまりのロビー空間にペレットストーブが備えてあります。近年の間伐材の活用促進などから行政が盛んに進めているものです。地球温暖化対策など環境面からの効果も大いに期待されています。
私事になりますが拙宅でも薪ストーブを使っています。30年ほど前からの実践です。知り合いなどを通じ山で木を貰いうけることから始まります。チェーンソーで輪切りにします。場所にもよりますが、斧で割るところまで山でやった方がとても気持ちが良いのです。自宅まで運び込み、これを野積みにし乾燥させなければなりません。2~3年経ったものが燃料となります。よく乾いてない薪をストーブにくべても水気が出るばかりで、そんなに熱く燃えないのです。そんなことで、順繰りに備蓄しながら薪を使用していくわけです。
ストーブは11月下旬ごろから3月までがシーズンです。当初は鋳物製の暖炉を使いましたが、炎はもちろん薪のはぜる音や煙の匂いがなんとも心地良いものです。ただ、欠点があって薪の消費量が半端ではありません。どんどん薪をくべないと温かくならず、とても燃費が悪いのです。
今使っている二代目はアメリカ製で、いわゆる薪ストーブと呼ばれるものです。欧米ではストーブにも排気ガス規制があるとのことで、技術開発が進み、密閉した炉の中で空気量を調整し、二次燃焼室もあります。燃費も良好です。
ガラス越しになり、薪の音も聞こえませんが、輻射熱の温かさはなんとも気持ちが良いものです。結露はないし、干し物はたちまち乾いてくれます。炎を眺めていると誠に心持がよく、自前で調達した薪であるからなおさらなのです。
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川﨑政善(かわさき まさよし)
1947年富山県生まれ。1970年芝浦工業大学建築学科卒業。日本住宅公団を経て1974年富山県庁へ。以来一貫して建築住宅行政に従事。2006年富山県住宅供給公社常務理事を経て、現在富山県建築設計監理協同組合相談役。
バックナンバー
・富山からの便り Vol.1