もうすぐ梅雨が明け、楽しい夏がやってきます。「夏だ!海だ!ビーチパーティだ!」
しかし、喜んでばかりではいられません。夏には台風もやってくるのです。
今回は、暑い暑い日差しや台風などから沖縄の住まいを守る花ブロックのお話しをしたいと思います。
この花ブロック、最近は県外でも使用されるようになりましたが、コンクリート技術同様に、米軍基地からの建築技術を見よう見まねで学び始まったと聞きます。
花ブロックの役割は・通風・日射遮蔽・防犯・プライバシー確保・防強風、飛散物からの衝突阻止等というように、多様にあります。なんといっても、わがままなお願いをたくさんきいてくれるのです。
わがままなお願い1:丈夫な壁は欲しいけど、涼しい風も欲しい。
台風がやってくると色々なものが宙を舞い、いつ何が飛んできてもおかしくない状況になります。強風時には、シェルターの中に閉じこもっていたいですね。
RC造の住宅だと、シェルターに籠るような安心感があります。ただ、コンクリートの壁に囲まれていたら、普段は熱がこもり暑い部屋になってしまいます。
強風時は丈夫な壁が必要だけど、普段はそれよりも涼風が欲しいもの。
花ブロックだと、そんなわがままなお願いも叶います。丈夫で、飛散物から守ってくれて、日常的には、風を取り込みます。さらに防犯性も備えているので、不在時や夜眠るときも、窓を開けたまま涼しい風を家の中に取り込むことができます。
また、洗濯物干し場を、花ブロックで囲んでいる住宅も少なくありません。
雨は、あまり入ってこないけど、風は入ってくる。
花ブロックで構成すると、そんな快適な半外部空間が出来上がります。
わがままなお願い2:採光は欲しいけど、日射熱は要らない。
沖縄は、日照時間が長く照明エネルギーの消費量は少ないように思われがちですが、降水量は多いため日照時間は短く、国内では消費エネルギー量が非常に多い地域です。
日照時間が短い一方で日射量は大きいので、日射遮蔽や冷房負荷軽減のためにカーテンなどを閉めて照明をつけてしまいがちです。
さらに台風対策としてシャッター等で開口部を閉じると暗くなり、結果として照明エネルギー量が大きくなってしまうと考えられます。
そういった点でも花ブロックは、光は通して日射遮蔽をする優秀な建材です。
特に西面など太陽高度の低い時間帯に直達日射が当たる部位では、花ブロックを用いると採光とのバランスのとれた日射遮蔽が行いやすくなります。
わがままなお願い3:外の景色は見たいけど、中は見せたくない。
花ブロックの美しさは、正面からより裏面に現れるのでは、と思います。
外部からの視線は遮りながらも、光や風を通すフィルターになっております。
花ブロックを透過した光は、やわらかく空間を包みます。
夜になると、今度は建物内の光が灯篭のようにやわらかく街並みを照らします。
花ブロックの景観は、もはや沖縄では欠かせないひとつになっています。
花ブロックを使った建物の紹介
現在、沖縄県ではスマートエネルギーアイランド基盤構築事業というのを行っていて、その事業のうちの一つに「亜熱帯型省エネ住宅の実証」というものがあります。
そこで、モデル住宅を選定して現在それらの建物の温熱環境の測定を行っています。そのモデル住宅のうちの一つですが、花ブロックを利用した集合住宅があります。共用階段部とバルコニーの壁を花ブロックにしています。
平面プランでも、部屋全体が一体化できるように各部屋の間仕切りは引き戸で構成しています。網戸付の玄関や、土間のあるエントランス、常時開放できる防犯性の高い建具など、工夫しています。あとは、どうやって暮らしていくかのライフスタイルにも関わってきますが、環境測定の結果が、一年後に出るのでとても楽しみです。
この花ブロックを美しく盛り込んだ集合住宅は、義空間設計工房(沖縄 一級建築士事務所)によって設計されたものですが、2012年度グッドデザイン賞・沖縄住宅建築大賞を受賞するなど高く評価されたものです。何気なく道を歩いていても、この建物の前を通るとインパクトがあり圧倒されます。
花ブロックを通して光が室内に入ってくるのはとても居心地がよさそうです。
このほかにも花ブロックを駆使した素晴らしい建物は、沖縄にはいっぱいあります。
沖縄と言ったらコレ、有名な建物である名護市庁舎(設計:象設計集団)も同様、国立劇場おきなわ(設計:高松建築設計事務所)、沖縄県立博物館(設計:石本建築事務所・二基建築設計室設計共同体)も花ブロックの良さが表れている建物です。
住宅以外でも、花ブロックの多彩な性質が生かされています。
これからの時代、もしかすると「花ブロックを制するもの、沖縄建築を制する」と言っても過言ではないのかもしれません。
ひとつ断言できることは、花ブロックをうまく使いこなすことが、沖縄での住まいの快適性、省エネ性に大きく関わるということです。
また将来的には、沖縄だけでなく、県外・国外にも広まっていくと思います。花ブロックの未来に期待が募ります。
以上、大きな可能性を秘めている花ブロックについて、沖縄からの便りでした。
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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。
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