寒中お見舞い申し上げます。
早いもので、平成26年度も1ヶ月が過ぎてしまいましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私が住む鹿児島市内も例年以上に寒く感じる日が多いように思います。
南国、鹿児島と言えども桜島にうっすらと雪化粧した日も数日あります。
ところで、鹿児島からの便りは弊社が平成23年度の国土交通省の補助事業である、『住宅・建築物省CO2先導事業』に「かごしまの地域型省CO2エコハウス」を踏まえて、蒸暑地の冬の住まい方について紹介していきたいと思います。
その前に、思い出しも兼ねて弊社の取組みの核としての「LCCMプロジェクト」があります。
「LCCMプロジェクト」とは住宅のライフサイクル(建設~居住~改修~維持管理~解体)全体を通じてCO2の排出をマイナスにする取組みを行いながら、住む人が快適に健康に暮らせることを目指して取組んでいます。
それでは、鹿児島の冬の気候は3年前に、鹿児島市内でもなんと25㎝もの積雪に見舞われたことがあり、今年も条件によっては大雪になるのではないかと個人的には思っています。(笑)
ここ鹿児島県は本土としては最南端であり、寒くないイメージの方が多いと思います。鹿児島の地形は日本の中でも特別な地域だと私は思っています。
というのも、中心に桜島を囲む錦江湾という内海があり、東に太平洋、西に日本海の海に囲まれながらも、日本海側からの冷気が浸入に加え、北は熊本県や宮崎県の山間部に隣接しているために南国の北海道と呼ばれる地域もあります。私は鹿児島市内でも山間部に住んでいますが、事務所のある湾岸地とは約2~3℃も温度差がある時もあります。
それでは、鹿児島県の過去30年間(1981年~2010年)の温熱環境を確認すると下記のようになります。
みなさんは表を見られて意外と寒いんだなとか、予想通りだと思われた方に分かれるかもしれませんね。
具体的に12月からの平均気温は12月:10.6℃,1月:8.5℃,2月:9.8℃,3月:12.5℃ですが、最低気温は平均から4℃程度低く、最高は4~5℃高い状態となっています。
しかし、冬日(最低気温0℃未満)が無いわけではありません、平成24年度の鹿児島空港のある溝辺町では51日もあり、県内を移動する中で朝の出発時の気温と2時間後に到着した時の気温が同じということもあります。
このような気温からの自然環境に加えて、私たち鹿児島のシンボルでもある桜島の降灰を考えた時に、高気密・高断熱仕様+遮熱対策(暖気・冷気共)やパッシブな対応も行っております。
そうした中、断熱仕様は基礎断熱の充填断熱工法を採用しながら、太陽熱(夏対応)や冷熱(冬対応)が屋根面からの浸入を防ぐために、屋根面断熱を採用しております。
また、冬型結露対策として外壁面はもちろんのこと屋根面においても通気工法を採用し、建物にとっての天敵である湿気対策も十分に考慮しております。
これらの断熱仕様によって、これまで室内の中の温度環境は一般住宅では写真左の様にエアコンは25℃で暖めても床面11℃で天井付近は17℃と温度差が6℃もあるために大変不快である上に、窓周りは結露がひどく大変です。それに対して写真右の様な高気密・高断熱+遮熱仕様ではエアコンは22℃設定にもかかわらず床面が21℃で天井面も22℃と上下の温度差も少なく快適な環境を実現することが出来ました。この様に、南国鹿児島であってもしっかりとした断熱・気密を行い、冬対策をすることは住まいに暮らす人達にとっても快適であると同時に省エネの観点からもエアコンの設定温度を3℃下げられCO2削減につながることになります。
より快適に! より省エネに! よりCO2排出量の少ない住まいであるためには、時間軸からも変化の少ないことが大切であり、温度差も無いことが更に重要だと思っています。
そこで、弊社の高気密高断熱住宅と一般賃貸住宅において温度変化を測定したデータより3つの温度差について考えてみました。
以上のように3つの温度差について比較しましたが、私たちは設計コンセプトとして「絆の家」というものを掲げ、横の広がりや上下の広がりのある家族の気配を感じながら住まう空間づくりをしています。そのためにも常に空調のみに頼ることなく、上下・水平・時間によって温度差がより少なく住まいづくりが大切であると思い、蒸暑地に冬に応じたスペックの高気密・高断熱仕様としています。
特に、脱衣室や浴室の温度差による突然死は交通事故死亡の2倍とも言われております。
今後益々、高齢化社会になる中、住宅内で全裸になる脱衣・浴室内が冷えていると血管か縮み、その後に暖かい浴槽に入り血管が膨張することにより血管が破れてしまい突然死に至るようです。ですから、より血圧の変化の少ない住環境を造るかは私たちの責任でもあると思います。
そのため私たちは、基礎断熱工法を採用し、外気の温度変化に左右されることなく、暖房をしている居室の熱によって、床下全体が冷たくない程度の環境が出来、廊下部分やトイレ・脱衣室・浴室の床面が極端に冷たくない工法を採用しています。
パッシブ的な視点から室内に太陽光を取り入れることによって、基礎断熱の効果が更に高まりると共に、暖房負荷を軽減しながら快適に過ごすことが出来ます。
これまで話をしてきた温熱環境はどのような建物の性能によるのかを具体的に単独展示場をモデルに説明すると、気密性能C値:0.5㎠/㎡,断熱性能U値:0.52W/㎡・Kなどの性能をしっかりと押さえながら、蒸暑地である鹿児島の建物はどうあるべきかを考えながらお客様にしっかりとしたものを提供できるように取組んでおります。
私達の鹿児島は観光が一年を通じて様々なところがあり、海に、山に、温泉に、新鮮な食材の黒豚・黒牛・鶏・魚を食べながら美味しい焼酎を飲むと自然に楽しい語りの場が盛上がります。今から春に向けては「きびなご」が旬を迎えますよ。
お便りを見られた方は、是非、鹿児島に遊びに来てください。
最後になりますが、「鹿児島からの便り(夏・冬編)」をまとめることにより、改めて整理することが出来たことは私自身にとっても勉強になりました。ありがとうございました。
*
「鹿児島からの便り」特派員
森勇清(山佐産業㈱ 取締役 住宅本部部長)
1968年鹿児島県垂水市生まれ。 一級建築士
2008~2010年「長期優良住宅先導的モデル事業」採択、2011年「住宅・建築物省CO2先導事業」採択、
2012年「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2012」特別優秀賞・優秀企業賞受賞
2013年 GOOD DESIGN AWARD 2013 「みずみずシーン」・「いっぽんの木」受賞