北海道からの便り vol.7


夏の北海道からお届けします。

梅雨はない、台風は来ない、残暑はない。はずなのですが、

最近、ないものがある北海道。

ちょうど、大きな台風が3つ立て続けに去っていったところでしたためています。

今回は、2年ほど前から協働させていただいている下川の「森とイエ」プロジェクトをご紹介させていただきたいと思います。

最近完成した新しいパンフレット

最近完成した新しいパンフレット

「森とイエ」は地域の工務店と建築家が協働して、これからの北海道らしい住宅を創造するプロジェクトとして、活動を始めて5年が経ちました。森林の町、下川町に高断熱住宅の普及を進める工務店グループ「下川ECOな家づくり研究会」が発足したのがきっかけです。

そもそも下川町は冬期間は氷点下30度にもなる寒冷地で、暖かく快適な住まいを普及させることは、この地域の工務店にとっても重要なことでした。研究会メンバーは 全員が北方型住宅の技術者認定資格「BIS」の資格者で、安心の断熱・気密施工を行っています。

そのような中、地域の担い手であった工務店の業務は減少し、次第に体力を失いつつあります。私たちは、地域の工務店との協力をとおして、地域で仕事を生み、そして継続して家を守るしくみを作っています。「地域を守る人を育む」ような家づくりは、森とイエプロジェクトを通して実現したい夢のひとつです。

また、建築家が協働することで「自由で安心な家づくり」を実現したいと考えています。ライフスタイルが多様化して、それぞれの暮らし方に合わせた自由な家づくりが求められています。それは、魅力的なまちを育むきっかけ作りにつながります。

最後に、森とイエでは家づくりは文化であると捉え、「地域らしい住宅の創造」に取り組んでいます。地域で生まれた素材を活かしながら、地域の産業と協働し、色々な地域で森と暮らす家づくりが育つことを願って、その実践と普及の活動を続けています。

森とイエ通信 最新号

森とイエ通信 最新号

http://ur2.link/xUib
からダウンロード可能です。
バックナンバーは
http://moritoie.net/category/tsushin/
からどうぞ。

「森とイエ」は3つのポイントを大切にしています。

・地域の工務店がつくる地域住宅であること。
厳しい自然環境の中、暖かく快適な住まいを求めて、長年にわたる研究と実践によって育まれてきた「北方型住宅」の技術を習得し、普及させていきながら、安心の高気密・高断熱住宅を実現しています。

・地域での家づくりも建築家と協働しています。
より満足度の高い住宅を提供し、より良い住まいづくりを目指して、森とイエは建築家も共に企画・運営に関わっています。軒やひさしのあるデザイン、無落雪屋根、外装木材を修繕しやすいところに採用、外部建具は木製サッシを基本とする、薪ストーブやペレットストーブの設置、外構に燻煙処理枕木を採用するなどのデザインコードを設けて魅力ある空間を創造しています。

・森と生きる家を創造しています。
暮らしは文化を合言葉に、まちの森林資源を積極的に活用しながら、環境性能の高い地域住宅を創造しながら、断熱・気密などの性能だけではない価値ある家づくりを目指しています。

7月2日に開催した「家づくりの手道具展」のフライヤー

7月2日に開催した「家づくりの手道具展」のフライヤー

そして、「工務店コース」「建築家コース」「モデルプランコース」の選べる3つのコースを用意しています。
「工務店コース」は、地域工務店が初期の打ち合わせから設計、工事まで一貫して進めるコースです。建築家は工務店のプランニング(基本設計)のサポートにあたります。面談後、担当の工務店を選定できる安心のシステムです。
「建築家コース」は、建築家の提案力をフルに発揮して、初期段階の打ち合わせから設計・監理まで、建築家がフルサポートします。施工は地域工務店が担当して、プロセスを楽しみながら最も自由な家づくりが実現します。事前見学や面談で建築家を自由に選択できる仕組みです。
「モデルプランコース」は、リーズナブルながらも豊かな空間を持ったパッケージプランで、コストや仕様を明確にしながら、性能や思想は森とイエ基準です。

このような取り組みは、森とイエHP http://moritoie.net/ で随時発信しているほか、建設現場見学会や、森とイエ通信の発行、完成見学会や森とイエプロジェクトメンバーで企画運営するイベントなどで普及活動を多なっています。HPでは、実際に「森とイエ」で住まいを建てられたクライアントの生の声が、「オーナーズヴォイス」のコーナーで見ることができます。

7月2日には「家づくりの手道具展」を開催しました。家づくりに携わる職人の方々の心意気と、技術に支えられ、一棟づつ手作りされる私達の家づくりを、古くから家づく りに使われた数々の道具達を通して知っていただいたり、実際に携わってくださる職人さんの手の素晴らしさ を体感ししていただきたいというプロジェクトメンバーの熱い思いで実演や体験会が実現しました。

プロジェクトに関わってくださっている左官職人、野田 肇介さんの道具たち

プロジェクトに関わってくださっている左官職人、野田 肇介さんの道具たち

開催した体験ワークショップ。職人さんの実演や、餅つきも楽しい体験でした。

開催した体験ワークショップ。職人さんの実演や、餅つきも楽しい体験でした。

「森とイエ」はこれからも試行錯誤しながらですが、活動を広めていきたいと考えています。
下川地域だけでなく、同じ志を持ったいろんな地域で活動が芽吹いて、そしてネットワークがつながっていくと、さらにたくさんの方々に森とイエの住まいをお届けしていけるのではないかと模索中です。
今後とも活動を見守っていただければ幸いです。

130731_sakurai櫻井 百子(さくらい ももこ)

1973年北海道旭川市生まれ。北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て2008年アトリエmomo設立。子育てしながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。

[北海道からの便り バックナンバー]
・北海道からの便り vol.1
・北海道からの便り vol.2
・北海道からの便り vol.3
・北海道からの便り vol.4
・北海道からの便り vol.5
・北海道からの便り vol.6
・北海道からの便り vol.7
・北海道からの便り vol.8