今年の夏は暑かった!!! トロトロトロ・・・
日増しに暑くなる日本の夏ですが、今年も記録的な猛暑となりました。
私の住む福島県福島市も35℃を超える猛暑日が16日間、最高気温39.0℃を記録し、夏大好きの私でもさすがに悲鳴をあげました。
といいながらも、保冷剤を包んだタオルを首に巻き、桶にはった水に素足を付けながらエアコンの無い職場で図面を描いています。桶にはった水は直ぐに温まってしまいますが、濡らした足は水の蒸発に伴う気化熱により体温を下げてくれます。
それでも流れ落ちる汗は止りませんけど・・・
福島県の気候
福島県は47都道府県の中で3番目に広い面積を有し、東西に長くオーストラリア大陸の様な形をしています。太平洋に面した「浜通り」、中央の「中通り」、奥羽山脈が連なり新潟県と接している「会津地方」と3つの地域に大別され、それぞれに文化や気候に特徴があります。
「浜通り」の夏は爽やかで、冬は東北で最も温暖であり、穏やかな地域です。「会津地方」は有数の豪雪地帯で、盆地では夏は猛暑となります。「中通り」はその中間の気候と言っていいでしょう。
福島市の気候
私が住む福島市は「中通り」の北部に位置し、四方を山に囲まれた盆地の地形を成し、内陸特有の夏は蒸し暑く、冬は底冷えをする寒暖差の激しい土地です。
毎夏、館林市や熊谷市と並んで最高気温を紹介される日本きっての猛暑地です。
福島市に住めば世界中どんなところにでも住めるのではと囁かれるほどです。
かわまた「結の家」
今回紹介する、“かわまた「結の家」”は福島市の南東に隣接する伊達郡川俣町に2010年12月に竣工しました。竣工後、エアコンを使用するのは年に数回と聞いていましたが、今年の夏はさすがに使用する日が増えたとのことです。川俣町は福島市より標高も高く谷間の町ですが、福島市に住んでいたこともあるご主人曰く、夏の暑さは福島市とあまり変わらないとのことです。
さて、冬の寒さを留意しながら、高温多湿の夏を快適に暮らせる家にするにはどうしたらよいのか。いつも私が心掛けているのは、設備を軽くして、その土地にあった無理のない素直な家づくりです。土地を読むこと、必要な断熱を施すこと、通風を意識すること。また、エアコン等の高効率の設備の力を少し借ります。
「結の家」の敷地の最も大きな特徴は、西側に小高い切り立った丘を背負っていることです。設計をするうえで夏の西日の対策が重要になります。この丘はそのジリジリとした西日を遮る重要な役割を担っており、気温が上昇する午後の日射時間を減らし、建物が熱を蓄えるのを防いでくれます。冬には北西の寒風を遮る役割も果たします。借景としても庭の木立と馴染み、川俣町の中心地に近いにもかかわらず山小屋の様な錯覚さえ覚えさせます。
その丘の稜線から連なるように三角形の大屋根を架けましたが、地窓や勝手口の通風窓から取り入れた涼しい空気が、三角形の頂部に設けた高窓に向かって暖気を押し上げ、風通しの良いつくりとなっています。
また、東側に向かって建物の高さを低くしたのは、午前の日射を受ける壁面を少なくしたかったからです。東側には薪ストーブの熱を蓄える為にコンクリートの壁を立ち上げましたが、冬季以外は常に冷えた状態なので、夏季の室内の気温上昇を抑える役目を果たしています。
縁側のコンクリートデッキを大きく跳ねだして、それに伴い軒も深くし、南側の日射をコントロールしています。
断熱材
吸湿性と蓄熱性に優れている、木質繊維系の断熱材を採用しました。
蓄熱性は夏季の遮熱にも力を発揮し、高い熱容量が室内の急激な温度上昇を抑えてくれます。
かわまた「結の家」アトリエ
このアトリエは「結の家」の敷地内に建設した離れです。
御主人のアトリエであり子供達の遊び場や地域のたまり場となって、日々の生活に多様性を生み出しています。
別件の解体工事で発生した古材を利活用し、一部をご主人がセルフビルドを行い、手作り感あふれる建物となっています。屋根の杉板の木端葺きもご主人の施工によるものです。
南側に日射を受ける開口部がない事もありますが、思いもよらず杉板の木端葺きの遮熱・断熱の効果が大きいようで、常にアトリエ内は涼しく保たれているそうです。
これはとても面白い発見となりましたが、杉板の木端葺きを選択する勇気ある建て主が現れるのはこれが最初で最後かもしれません。
齋藤史博(さいとう ふみひろ)
1973年福島県福島市に生まれる
1997年に新潟大学工学部建設学科卒業後、組織事務所を経て2006年に「さいとう建築工房」を設立。
無理をしない、素直な家づくりを目指して地元福島で頑張っています。
2013年に“かわまた「結の家」”にて、第6回JIA東北住宅大賞2012「優秀賞」、第8回木の建築賞「木の建築賞」を受賞。