皆様はじめまして。新日本建設株式会社の村上と申します。今回は愛媛県松山市からお届けいたします。
弊社は昨年、国土交通省の補助事業であります「住宅・建築物省CO2先導事業」の採択をうけました。プロジェクト名は「えひめの風土と生きる家~次世代につなぐ地域連携型LCCM住宅※~」です。その弊社の提案内容をメインに夏と冬2回に分けてお伝えしようと思います。
※LCCM住宅(ライフ サイクル カーボン マイナス住宅)住宅の建設時から運用時、廃棄時においてのCO2収支をマイナスにしようとする住宅のこと。
まず、弊社の活動内容ですが、愛媛県全域で木造住宅の新築を主に行っています。年間の新築戸数は40~50戸程度。その特徴は自然素材にこだわった家づくりです。
今回の省CO2先導事業の提案の中でいちばん二酸化炭素削減効果が高いのが木材の自然乾燥です。自社保有林で伐採した木は枝葉を残したまま山で寝かしておく「葉枯らし自然乾燥」を行っています。約半年かけて枝葉から徐々に水分が抜けていきます。その後枝葉を落とした丸太は製材所に運ばれ、さらに半年置かれた後製材します。一つ一つの工程でゆっくり乾燥させることで、木の養分が残り、それが強度につながっています。
日本木材総合情報センターによりますと、人工乾燥製材の場合の製造時炭素放出量は100kg/㎥、それに比べ天然乾燥製材の場合は16kg/㎥となっており、自然乾燥を行うことは人工乾燥するよりはるかに省CO2効果があることがわかります。仮に家一軒で使われる構造木材が40㎥とすると、約3.3tの二酸化炭素排出量を抑制できます。
こういった自然乾燥をはじめて約5年になります。これまでは構造材だけでしたが、今回の提案では造作材や建具・家具といったところまで自然乾燥の木材を使用しています。
また、地元の木を使うことは運搬面での二酸化炭素排出量の削減にもつながっています。海外からの輸入する場合は海洋輸送が多く、特に日本は輸入量と輸送距離を掛け合わせたウッドマイレージが諸外国に比べて圧倒的に高くなっています。
愛媛県は杉や桧の原木生産量が多いため、地元の木を使って家を建てることが容易にできる環境にあります。しかし山にはまだまだ放置林が多く、山の担い手も少なくなっている現状があります。川下である住宅建築において地域材の利用が多くなれば、川上の林業に活気が戻るものと思います。そういった意味においても地産地消の家づくりを今後とも推し進めてまいりたいと思います。
話を戻しまして、次に建物の省エネ措置についてお話しようと思いますが、その前に愛媛の気候特性について少し説明させていただきます。愛媛県は降水量が少なく穏やかな日が多い特徴があります。冬は北風の季節風、夏は南東の季節風が卓越しますが、風上側に中国山地や四国山地があるため、山陰や南四国で雨や雪が落ちます。そのため晴天日数(全国2位)や日射量が多いという特徴があります。
そういった気候風土にあわせた省エネ措置の住宅を提案しております。まず創エネ設備として、太陽光発電システムを5kw、太陽熱利用給湯システム(ハイブリット型)を設置し、晴天日数が多いという気候特性を最大限利用します。その他の設備としまして、HEMS(エネルギーの見える化)、高効率エアコン、ペレットストーブ、LED照明、節湯機器、電気自動車用コンセント、雨水貯留タンク、コンポスターなどを設置します。
こういった設備に加え、パッシブデザインによる住空間の提案を含めております。具体的には、風圧差を利用して効果的に卓越風を取り込むための窓配置計画であったり、ルーバーやスクリーン、庇による日射遮蔽措置を行います。気候特性上、中間期は穏やかな日が多いので、できるだけ機器に頼らない住空間を提案しています。
断熱性能についてはQ値1.9相当(天井断熱材:高性能グラスウール16K155mm、壁断熱材:高性能グラスウール16K100mm、床下断熱材:フェノールフォーム保温板63mm)として高断熱仕様になっています。
最後にCASBEE(建築物総合環境性能評価システム)のランクですが、「S」ランクとし、ライフサイクルCO2は緑4星以上としています。LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅を目指し、建設段階からの二酸化炭素排出量削減に取り組んでいます。
CASBEE評価シート
今回の「住宅・建築物省CO2先導事業」の弊社の提案でもうひとつ大きな柱としまして、地域連携の取り組みがあります。これに関してはまた次回の冬編でお送りしたいと思います。
愛媛からの便り-特派員
村上敦(新日本建設株式会社勤務)
1975年愛媛県東温市生まれ
一級建築士、一級建築施工管理技士