私たちのアトリエは九州・福岡の北部沿岸沿いにあり、夏は高温多湿で雨が多く、
冬は日本海側気候の影響を受け、曇天の日が多く北からの季節風が強い地域です。
1年を通して温暖なため、春は3月から初冬でも12月まで外を取り込んだ暮らしが可能です。
私たちは設計するほとんどの家に「外の間」とよぶ半屋外の空間を設けます。
「外の間」とはどんな空間なのか・・・3つの家からご紹介します。
1.我が家の「外の間」
まずは私たちのアトリエ兼住宅の「外の間」から始めます。
小学生の娘がハンモックの下にあるちゃぶ台で何か絵を描いている風景です。
向こうには中学生の息子の誕生祝に植えた欅が14年の時を経て、
枝葉を拡げて、この空間を日差しや強風から守ってくれます。
私たち家族4人がこの間を使わない日は一日だってありません。
同じ敷地の隣に住む祖父母も孫に会いに料理をもってきてくれたり、
犬の散歩に連れ出しに来てくれます。
季節の良い日は、居間の建具を開け放し一つの大きな空間になります。
ここではハンモックに揺られながら本を読んだり、テーブルを出して食事をしたり、
勉強をしたりといろんな使い方ができます。
私たちにとって「外の間」は日々、生活する上で欠かすことのできない空間です。
2.久山町の「外の間」
次は福岡市の隣町・久山にある住宅の「外の間」です。
この久山の家の凄いところは、外階段を持つ立体的な2階建ての外の間であることです。
1階は水回りを持つくつろぐための外の間であるのに対し、
2階は本棚と椅子のある思考する外の間です。
2つの機能の異なる外の間が上下に重なっているところが、小さな街のようにも思えます。
最近では施主自ら建設したカフェと渡り廊下で繋げて、
お店の特等席としても活躍しているそうです。
緑を取り込んだ、アジアを思わせる、これ以上ないほどの開放感がこの家族の日常であり、隅々まで使いこなす暮らし力は本当に素敵なことです。
3.宗像市の「外の間」
3つ目は宗像市にある彫刻家の家の外の間です。
私たちがそれまで無意識に作ってきたこの穴の開いた空間を、
初めて外に開かれた間なんだと認識し、それ以降スタンダードになった空間です。
この家の外の間の面白さは、
生活する場とモノを作る場とのあいだに人間だけでなく、風や光などの自然そのものを呼び込む力があることです。
コンクリートの土間で、背景が石垣ということもあり、
庭や周りの風景にダイレクトにつながる感じはより原初的です。
冬は奥深く太陽が差し込みぽかぽかと、雨の日でも梁に架けたブランコで遊んだりできます。
玄関を兼ねているため一日中人が往来し、たたずむ空間です。
私たちの作るこの家たちは、ほとんど皆、この外の間を中心にプランニングしています。
かつての民家にあったように軒下や土間が座敷を中心に配置されたものではなく、むしろその空間たちが主役になる、そんな暮らしがあってもよいのではないかと思っています。
それを可能にしてくれる風土が、ここ福岡にはあります。
*
福岡からの便り 特派員 アトリエ艸舎 一級建築士事務所
鈴木達郎
1964年生まれ 静岡県出身
大阪芸術大学建築学科卒業
1996年アトリエ艸舎
2000年福岡に移住
鈴木美奈
1967年生まれ 福岡県出身
奈良女子大学生活経営学科卒業
Ms建築設計事務所にて木の家を学ぶ。
1996年アトリエ艸舎
2000年福岡に移住
福岡県遠賀郡岡垣町高倉1348-1
TEL093-282-7720
E-mailはこちら