東京近郊~鶴川からの便り vol.2


こんにちは。中林です。東京近郊~鶴川エコヴィレッジきのかの家からの便りとして、この住宅の環境共生的な工夫の中から、特に冬に関連したことを以下に述べます。

夏編と少し重複する部分がありますが、ご容赦ください。

■高性能な外断熱

きのかの家の外壁は密度の違う2種類のロックウール、計125ミリで外断熱をして、空気層をとって焼き杉のサイディングで仕上げています。またバルコニーの床版も躯体と熱絶縁し、窓は複層ガラス、屋上は菜園なので断熱性は非常によく、一地域(北海道)の推奨基準に適合するほどです。外断熱の良さは室内をコンクリートむき出し(漆喰の直塗りや塗装でも可)にすることで非常に熱容量の大きい熱的に安定した室内環境をつくることができる点です。我家も壁、天井はすべてむき出しで、冬は昼間南からの太陽熱で壁、天井、床の一部に蓄熱して夜の熱放出で暖房を節約しています。

きのかの家~外壁断面図

きのかの家~外壁断面図

 

■太陽熱のパッシブ利用

冬季の太陽は室内深くまで届くので、南側の蓄熱床(モルタルの上にタイル仕上げ)に直接熱を蓄えますが、さらに奥に届く太陽光は反射板を利用して天井の躯体に蓄熱する工夫をしています。

(左)茶色の床タイル部分が蓄熱床 (右)反射板で太陽熱を天井RCに蓄熱

(左)茶色の床タイル部分が蓄熱床           (右)反射板で太陽熱を天井RCに蓄熱

■薪ストーブ(ペレット兼用)による暖房

我が家のペレットストーブ

我が家のペレットストーブ

ここは集合住宅ですがコーポラティブ方式の自由設計ですから、薪ストーブを設置しました。いろいろ検討したのですが、薪とペレットの両用ということで国産の「CRAFTMAN STOVE」を選びました。価格も本体20万円弱と妥当で、電気不要の自然燃焼です。ただ煙突の設置に30万円ほどかかっています。建設時に伐採した敷地内の樹木で主としてスギやシラカシなどを保存しておき、ベンチや共用の物入れなどに再利用したのですが、その余りがあったので、それをストーブの燃料として使っています。

また、5年くらいでウッドデッキを解体した住戸があってその廃材をもらって燃料にしたりしているので薪を買ったことがなく助かっています。ペレットも試しに使ってみましたがまだ価格が高くやや不経済です。薪ストーブはかなり強力で夕方2~3時間燃やせば室内側の壁天井に蓄熱して暖かさが長く持続します。翌朝は外気が0度近くでも室内は15度を下回ることはありません。
このストーブでやや不満なのは開口が小さくて薪の炎を見て楽しむ、とはいかないところでしょうか。もう一つの課題は薪の保管場所です。現在はバルコニーに置いていますが多くは置けません、集合住宅ですから仕方ないですが・・・。

 

■暖気(夜間冷気)の循環をするファンダクト

薪ストーブは強力でいいのですが、その暖気を北側まで持ってゆくにはどうするか、また冬の南側の部屋は太陽熱の直射で暖かいのですが北側の部屋の寒さをどうにかしたい、などを考えて設置したのが南北循環ファンダクトです。天井に南北に径200ミリの円筒ダクトを設置し中間にダクトファンをはめ込み、北の部屋から吸気して南に吹き出す仕組にしました。これによって南側の暖気が中央の廊下を経路にして北側に循環するようになります。暖気だけを考えれば南側から吸気をして北側に排気をする方が少し効率が高いと考えられますが、実はこのファンダクトは夏の夜には北側の外の冷気を吸引して南側に吐き出すナイトパージ(外気冷房)モードに切り替えられるように設計したので北側吸気になっているのです。

南北循環ファンダクト 夏と冬の仕組み

南北循環ファンダクト 夏と冬の仕組み

130831_nakabayashi中林 由行(なかばやし よしゆき)
1943年 熊本生れ、一級建築士。
1972年より(株)綜建築研究所 主宰。2008年に引退、現在は会長。
NPO法人 コーポラティブハウス全国推進協議会 副理事長。
一般社団法人 環境共生住宅推進協議会(kkj) 技術顧問。
現在は、コーポラティブハウス、エコハウス、高齢者のためのグループハウスなどの普及推進をはかるNPO関連で活動中。