年が明け、愛媛でも寒い日が続いております。
四国山地の山は高く、特に石鎚山(いしづちさん)は1,982mと西日本最高峰の山となっています。
そのためよく雪化粧している石鎚山を道後平野から見ることができます。
それでは夏編から引き続き、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」の弊社のプロジェクトについてお話しします。
前回は木材の自然乾燥による省エネ効果や建物の省エネ措置の概要についてお話しましたが、今回は地域の生産者や組合などと連携した省エネ対策についてお話します。
①廃石材を利用したねこ土台
愛媛県今治市の大島石は「伊予の銘石」と呼ばれています。主に墓石に使われており、石目、石肌ともに美しいといわれています。その墓石の加工段階で発生する廃石材をカットしてねこ土台(基礎と土台の間に敷く通気パッキン)にしました。廃材を利用することで環境保全に役立つと考えます。
②薪窯で焼かれた洗面ボール
愛媛県砥部町は「砥部焼(とべやき)」という焼き物で有名な町です。窯元もたくさんあるのですが、今回その中から薪窯(まきがま)のある窯元と協力して洗面ボールや手洗い器を作っていただきました。電気窯やガス窯を使わず、木材加工段階で発生した廃木材を窯元に運び、薪窯に使用します。バイオマスエネルギーを積極的に活用することで二酸化炭素の発生を抑えます。
③ペレットストーブの活用
暖房設備としてペレットストーブを設置します。弊社は家づくりにおいて「自然循環・地産地消」を実現するため自社で森林を保有し、グループ会社協力のもと伐採、葉枯らし乾燥、運搬、製材、天然乾燥、加工と一貫体制を構築しています。その過程で発生した廃木材の一部を県内のペレット製造工場に運び、ペレットにします。それをストーブに使うことで、バイオマス資源を活用しています。
④久万高原ラティス耐震パネル
愛媛県の山間部に久万高原町という町があります。町の産業は主に林業です。この町が「久万材の家づくり推進協議会」を立ち上げ、地元材を使った家づくりに関する研究や開発を行っています。今回開発されたのは「久万高原ラティス耐震パネル」というもので、接着剤を使わず杉の間伐材を使用して製作された耐震パネルです。壁倍率は2.7倍~4.2倍となっています。ちなみに耐力壁として構造用合板がよく使われますが、(財)日本木材総合情報センターによると、合板の製造時炭素放出量は156kg/㎥ですが、天然乾燥製材であれば16kg/㎥と約10分の1程度となっています。
⑤伊予森林組合によるオフセット・クレジット
伊予森林組合は間伐促進型森林吸収プロジェクトとして、大規模な間伐を推進し森林整備を行ってきました。間伐による森林のCO2吸収量をクレジット化し、今後の持続可能な森林整備に活用していく計画です。弊社としては1棟につき4tのオフセット・クレジットをお施主様と折半で購入することにしました。オフセット・クレジットの認知が少しでも広がり、地域に貢献できればと思います。
前回夏編でお話しした木材の自然乾燥や、上記5つの地域連携を実現することによって、建設段階の二酸化炭素排出量を抑制しています。LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)を建設するにあたり、居住段階の省エネ措置はもちろんのこと、建設段階の省CO2を実現しなくてはなりません。今回のプロジェクトでは、上記の団体のほかにも様々な人たちと協力して家づくりを進めております。
日野商事株式会社(森林管理・保全、伐採・搬出、製材、廃材リサイクル)
有限会社かどや木材(木材の製品、加工)
独立行政法人森林総合研究所(植林)
久万材の家づくり推進協議会(間伐材を使った耐震ラティスパネルの提供)
有限会社内藤鋼業(木質ペレットの製造)
株式会社青山石工房(廃石材を利用したねこ土台の製作)
砥部焼作家龍泉窯(薪窯による陶器の製作)
伊予森林組合(間伐によるオフセット・クレジットの購入)
一般社団法人JBN環境委員会(普及・波及活動)
一般社団法人愛媛県中小建築業協会(普及・波及活動)
この場を借りましてお礼申し上げます。また、「住宅・建築物省CO2先導事業」に応募するにあたり、一般社団法人JBNの環境委員会にご指導、ご協力をいただきました。ありがとうございました。
夏編と冬編に分けて「住宅・建築物省CO2先導事業」の弊社のプロジェクトについてお話しさせていただきました。拙文ながら最後までお読みくださりありがとうございました。
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愛媛からの便り-特派員
村上敦(新日本建設株式会社勤務)
1975年愛媛県東温市生まれ
一級建築士、一級建築施工管理技士