鹿児島からの便りをお送りする村田です。夏の週末は、南薩の海で釣りを楽しんでいます。

坊津周辺には、海からしかアプローチできない砂浜がいくつもあります。

今年の夏の釣果。早朝の釣りが多いですが、カヤックでポイントを巡ると、タイ、ハマチ、ハタが釣れます。
最初に、私の家づくりの原風景、現在両親が暮らす、私の生まれ育った集落の話から始めます。

終戦直後、祖父の建てた実家です。清水が湧きだす水路の周りは、ホタルが飛び交い、羽化するオニヤンマを良く見かけました。
鹿児島中央駅より甲突川沿いに約6キロ上流にある小さな集落ですが、川を囲うシラス台地の麓、ハケには、いたるところから清水が湧き、多くの家の庭に池がありました。
夏休み、畳の上で昼寝をしていると、ヒンヤリとした心地よい風が流れ、頭の上をオニヤンマが通り過ぎたものです。
この涼しさは祖母の自慢でもあり、「ウチはクーラーはいらんね。」と笑う祖母の顔は懐かしい思い出です。

実家のある鹿児島市伊敷 飯山集落
残念ながら、現在殆どの池がアスファルトに覆われています。写真の駐車場も、私の幼い頃、ハグロトンボやオニヤンマがゆっくり飛び回る池でした。この地区の水道は、現在も湧水を利用していますが、流れが少なくなった湧水は、コンクリートの蓋が被されています。涼しい風は吹かなくなりました。このような経験もあって、周囲のランドスケープ・微地形、環境との関わりを大切にしたい。建物本体の計画だけでなく、配置検討、外構設計、敷地選択のお手伝いも大切な仕事だと考えています。
古民家のリノベも最近多くなった仕事です。古民家の建つ、先人たちが住み続けてきた鹿児島近郊の自然発生的な集落は、『限界集落』と言うレッテルを張られる地域ですが、米作りの水配分から生活用水まで、機械力を使わずに日常生活を営んできた、まさにパッシブデザインをベースにした、自然と共存する豊かな暮らしを実践できるポテンシャルを持った場所でもあります。そのポテンシャルを生かした住まいづくりを心掛けています。
<吹上永吉の家>

母屋のウッドデッキにスロープを設けました。左手の馬屋は、1階に多目的に使える、調理室付きの土間があります。近所の集会所的な場所になっていて、毎週、近所の方が先生を務める編み物教室が開かれ、車いす利用のお母様も参加されます。
定年後の家族の生活拠点を作ろうと、営農の条件となる900坪の畑を購入。その土地に付いていた築150年の朽ちかけた古民家を改修した住宅です。用地の価格は、鹿児島市から車で30分足らず、900坪の畑(古民家付)が500万です。北側の敷地境界は吹上浜にそそぐ永吉川河口の汽水池に面し、裏庭から魚釣り、カニ籠、ウナギ籠の仕掛けを投げられる敷地。通年心地よい川風が吹き、冬は、北西の季節風も吹きますが、海に近く吹上浜の広い砂地の蓄熱効果もあって、霜が降りるコトはありません。

冬の暖房は薪ストーブのみ。すべての開口部には、ハニカムサーモスクリーンを設置してあります。
この微気候も含め、温熱的にも恵まれた土地に、太陽光・太陽熱パネルを設置したゼロエネ住宅を計画しました。車椅子で生活されるお母様に対応したバリアフリーと、開放的な間取りを活かす温熱的なバリアフリー。セルロースファイバーを充填し、開口はA12のアルミサッシ。Q値2.4。この程度の性能で、内装にスギ板を多用した室内は、真冬にサッシ面の結露もありません。週末は、奥さまのお母様を囲んで、お子さん、お孫さんまで4世代が集まる、まさにファミリーのベースになっています。
<姶良西宮島の家>

180坪の敷地に34坪の平屋。家庭菜園としては広い畑と、農機具や薪、カヤックの収納を兼ねる車庫を計画。太陽光、太陽熱利用のダブルソーラー、薪ストーブを設置。
鹿児島から錦江湾に沿って北側へ車で30分程。土地価格も比較的安いこの地域は、100坪~200坪の敷地を取得して平屋を希望する方が多く、私へ計画を依頼される方の多くが、空調機にできるだけ頼らない生活を希望されています。
市街地では難しいと思いますが、真夏でも、最低気温が24℃程度まで下がる郊外であれば、徹底した日射遮蔽と蓄熱性能を上げること、通風排熱効率の良い形態を検討することで、空調機に頼らない生活が実践できています。
敷地が広ければ、南側の壁面を真南を向けることができます。夏冬両立する軒の出の検討を行い南側窓面には8月末まで、陽射しを当てません。東西の窓はルーバー雨戸で対応します。

軒の出(1500)の対応で南側窓面には、8月末まで日射は当たりません。
ウッドデッキに設けたよしずフレームと庭のイワダレ草によるグランドカバー、植栽によって、輻射熱を軽減しています。

ウッドデッキへの出入口部分にコンクリート200の蓄熱タイル。開口部には、ハニカムサーモスクリーン。ルーパー雨戸は、夜間の通風用だけでなく、外付けのブラインドとして日中閉める使い方もします。
日射は、軒の出の対応だけで窓面には当たらないのですが、天空光的な日射成分をカットするために、日中もルーバー雨戸を閉めることがあります。
よしずフレームはウッドデッキ部分を日陰にして、デッキ床面からの輻射熱を防いでいます。
<姶良平松の家>
昨年秋の竣工、初めての夏を迎えた住宅です。ご主人が空調機が苦手ということで、暖房は薪ストーブを利用。空調機は設置していません。今年の夏、7/25~27のデータです。

Q値2.01W/m2K(1.87W/m2K ハニカムロールスクリーン等を考慮)
ルーバー雨戸 終日close、内側サッシClose 7/25 7:00~16:00 7/26 7:00~19:00

じねんもくの日射遮蔽の定番、軒の出とよしずフレーム、ルーバー雨戸を設置。太陽高度の低くなる東西、北側開口部は、ルーバー雨戸、外付けシェードスクリーンで対応。
今回の測定では、夏休みで通常、学校の寮で生活している息子さんが帰って来て、在宅中は、ルーバー雨戸は閉めて、内側のサッシを開けて生活されたようです。リビングの湿度変化を見れば、窓が開放された時期が解ります。
最後に、もちろん市街地狭小地での家づくりにも取り組んでいます。狭小地での日射遮蔽の手法として、最近、可能性を感じている手法に、開口部のダブルスキン構造があります。一般住宅用サッシを使ったダブルスキン構造について、鹿児島大学の先生方にも協力頂いて研究会を立ち上げ、一般サッシを使ったモデル実験等、これから検討を進める準備を始めています。
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鹿児島からの便り 特派員
村田 義弘 (むらた よしひろ)
1958年 鹿児島県生まれ
1985年 明治大学大学院 工学研究科 博士前期課程 終了
1985年 (株)現代計画研究所 東京事務所
1993年 (株)佐藤総合計画 東京事務所
2000年 建築工房自然木開設
2002年 鹿児島大学工学部建築学科非常勤講師
2008年 (株)建築工房自然木 代表取締役





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