富山からの便り vol.5


皆さんこんにちは。平成29年も穏やかに明けました。
雪国である富山でも雪の無い正月を迎えました。
晴れた日には空気が澄み、どこにいても東の方向に立山連峰が聳えています。

平成29年も穏やかに明けました

平成29年も穏やかに明けました

自分の子供の頃、昭和30年代には例年12月に降った雪が根雪となり、大人達は雪の始末に大変苦労していたのを思い出します。だいぶ経ちましたが、昭和38年の38豪雪、そして56豪雪、59豪雪の時には平地でも2メートルを超える積雪があり、日常生活がマヒするなど大混乱がありました。

建物が倒壊したり、軒先や樋が壊れたりしたこと。屋根の雪下ろしなどで死者や負傷者が出たことなどから雪の克服は当時の富山県政の大きな課題でした。雪に強いまちづくりを標榜し様々な施策が講じられたものです。住宅対策では2メートルの積雪に耐えられる「載雪型住宅」や、屋根の雪を融かす「融雪型住宅」、そして「自然落雪型住宅」の3タイプの技術開発が全国に先駆けて進められ、県独自の融資制度などで普及が図られました。

ところが近年本当に雪が少なくなりました。温暖化が確実に進んでいることを実感せずにはいられません。おりしも富山気象台の統計が発表されましたが、2016年の平均気温は富山市では平年より1.1度高い15.2度であり、統計開始以来最も高かったとのことです。また、地元紙(北日本新聞)の孫引きになりますが、米海洋大気局のデータによれば世界の平均気温は20世紀の平均値と比べると2016年には0.94度上昇しているとのことです。このままいくとどうなるのかと不安な気持ちにさせられます。

 

1月中旬になり漸く雪が降りました「雪つり」がきれいです

1月中旬になり漸く雪が降りました「雪つり」がきれいです

一月の中旬を迎え、新潟県の魚沼地方などでの豪雪が報道されていますが、当地での今朝(1月14日)の積雪は10センチメートルほどです。漸く冬らしくなったような気がしています。近所の庭木の「雪つり」に雪がかかりとてもきれいなことでした。とは言うものの雪が降ると外出がとても大変です。歩くのに苦労し、自転車も使えません。自動車は危険が伴います。

一晩でこんなに積もりました(拙宅庭)

一晩でこんなに積もりました(拙宅庭)

こんなときにありがたいと思えるのが公共交通です。富山市では平成18年4月にそれまでJR西日本が運営していた富山港線を引継ぎ、第3セクターの富山ライトレール株式会社が運行するLRT(※1)が富山駅北と岩瀬浜7.6キロメートルを路面電車が走るようになりました。

※1:LRT=ライトレールトランジット/Light rail transit の略。
大部分を専用軌道として部分的に道路上(併用軌道)を1両ないし数両編成の列車が電気運転によって走行する、誰でも容易に利用できる交通システム。

「奥田中学校前」のLRT 地下水で融雪します

「奥田中学校前」のLRT 地下水で融雪します

低床式2両編成でデザインされた車両、統一された様式の停留場、樹脂固定軌道方式などの新技術で近くにに来るまで気がつかないほどの静かさ、そしてなによりも駅の増設による利便性の拡大、大幅な増便と平時でも15分間隔の運行により利用者が随分増えました。富山市の資料によれば平日の1日あたりの利用者数はJR時代(H17)の2,266人から開業後(H18)には4,893人(約2.2倍)に増加し、その後も4,800人で推移しているとのことです。

北陸新幹線が開通し更に利用者が増えたとの報道もありますが、現在富山駅を南北に通り抜けるようにする工事が進んでおり、これが繋がると更に便利になるものと期待されています。幸い富山市では旧市街地にある路面電車が存続し、近年中心市街地を循環する環状線も復活したことから数年後の接続が富山駅から北側の市民にとっては大いに待たれるところです。

新幹線駅舎に乗り入れる路面電車(南側)

新幹線駅舎に乗り入れる路面電車(南側)

富山市など地方都市では自動車利用前提の拡散型の市街地が高齢化の進捗や人口の減少を考える上で大きな課題となっています。誰もが自動車を使えなくても安心して暮らせる街に改善いくことは喫緊の課題と思われます。自動車利用者が減ることで排気ガスの発生が抑えられます。深刻化する環境対策としても効果は大きいものと思われます。

全国的に話題となった富山市のLRTですが、近くに住む者として一層の発展は嬉しくそして頼もしいものです。沿線地域の雰囲気は随分良くなりました。一昔前まで富山駅の北側は駅裏的評価だったように思います。今後一層人口が減っていく中でもこの周辺に住む人が増えることで様々な効果が期待できます。そのためは沿線の住宅・宅地の流通を活性化させる一層の工夫も必要になることでしょう。

LRT「富山駅北」駅 数年後には南側と接続される

LRT「富山駅北」駅 数年後には南側と接続される

公共交通機関の利用を通じ街がコンパクトになっていくこと。その分自動車利用が減っていくこと。そして、新しく建替えられる住宅が環境に共生するものになっていくこと。更に願わくはLRTの電源の全てが水力や風力、地熱など自然エネルギーによるものとなっていくことを心から期待したいと思っています。

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川﨑政善(かわさき まさよし)

1947年富山県生まれ。1970年芝浦工業大学建築学科卒業。日本住宅公団を経て1974年富山県庁へ。以来一貫して建築住宅行政に従事。2006年富山県住宅供給公社常務理事を経て、富山県建築設計監理協同組合相談役(2015年3月退任)。

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富山からの便り Vol.2
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