能代からの便りVol.3 『東北日本海側北部の寒冷住宅の夏は窓の日射遮蔽』


■高断熱・高気密住宅は夏に暑いという誤解

夏の高断熱・高気密住宅は暑いとされているがそんな事はない。暑いのは中途半端な高断熱・高気密住宅である。

昨年の「地域からの便り」夏は「東北日本海側北部の夏をすごす」をテーマに、夏を過ごしやすくする地域的手法を総花的に紹介した。その中でも窓の日射遮蔽は長い庇や簾やグリーンカーテンや外付ブラインド・窓内蔵ブラインドや日射遮蔽ガラスなどで行うことが重要である。

他に屋根の芝置屋根の潜熱利用と日射遮蔽、基礎断熱の床下の冷地熱の利用、外壁の板張りと通気層での日射遮蔽、通風などである。

今回は超高性能(Q値が1.0W/m2K前後)な高断熱・高気密住宅の夏を過ごしやすくする大きな割合の窓の日射遮蔽を主に紹介する。

■超高性能(Q値が1.0W/m2K前後= U A値=0.37W/m2K前後)住宅の夏の過ごし方

Q1住宅とはNPO新木造住宅技術研究協議会が、国の25年省エネルギー基準の暖房消費エネルギーの1/3以上の高性能住宅をいう。このクラスになると冬の暖かさ以上に、夏の暑さ涼しさ対策を考えないと欠陥住宅になる。最も効果的なのは窓からの日射を遮蔽する事である。

日射遮蔽の工夫がないと南側の大きな開口群からの日射熱は極めて大きく、私のアトリエは日射透過率45%の日射遮蔽ガラスを使っているが、日射が少ない冬の30分ほどの日射でもオーバーヒートしてしまう。南側の窓には外付ブラインドを設置(資料1)し涼しく快適な夏を過ごしている。夏を凌ぎやすくするには窓の日射遮蔽が重要である。

資料1:南側の窓に設置したは外付ブラインド

資料1:南側の窓に設置した外付ブラインド

窓の日射遮蔽は、基本的には長い庇で日射遮蔽を行うが、敷地や予算の問題や建物の東西の振れにより庇が有効でない場合には庇を設けない事がある。しかし窓の日射遮蔽は不可欠で、低廉簡易な簾・ゴーヤや朝顔等のグリーンカーテンや外付ブラインドや外付けシェードで行う。

ここでは、長い庇で窓の日射遮蔽するタイプのQ1住宅刈和野と庇が短く外付ブラインドや外付けシェードで窓の日射遮蔽をするタイプのQ1住宅秋田旭川の典型的な2タイプを紹介する。

■Q1住宅刈和野の場合

資料2:長い庇で窓の日射遮蔽するタイプのQ1住宅刈和野

資料2:Q1住宅刈和野外観:長い庇で窓の日射を遮蔽するタイプ

性能仕様
・場所:秋田県大仙市刈和野 3地域(旧Ⅱ地域)U A値=0.56W/m2K(Q値=1.9W/m2K)
・性能:U A値=0.37W/m2K(Q値=0.91W/m2K)
・暖房負荷:26.3kWh/m2 冷房負荷(冷房必須期間):6.05kWh/m2
・天井:桁上断熱グラスウールブローイング厚400mm
・壁:高性能16Kグラスウール220mm(付加断熱120mm+充填断熱100mm)
・基礎:基礎立上り部分は断熱防蟻EPS厚100mm、底盤下部分は同厚150mm
・窓:PVCサッシArLow-Eトリプルガラス(南側は高透過ガラス、東西は遮熱ガラス)
・換気:熱交換換気システム

南側の2階は屋根の長い庇で、南側の1階はバルコニーで窓の日射遮蔽を行っている。東西は庇が無いが窓を小さくしかも遮熱ガラスを使っている。

資料4

資料4:Q1住宅刈和野の庇による夏至の12:00時の影

資料4のように南側の夏至の前後は長い庇とバルコニーで効果的に日射遮蔽が行われている。
その結果はDD27℃の冷房負荷(冷房必須期間):6.05kWh/m2と極めて少ない。冷房費は一夏で6,000円程度である。
家庭生活の実際では通風等で多少の暑さや時間は我慢をするので冷房は必要ない。
資料5のように春分や秋分には窓面積の半分強ほどの日射が入るが、この時期はカーテンや通風等で対応が出来る。冬は資料6のように長い庇でも日射は良く入る。

資料5

資料5:Q1住宅刈和野の春分・秋分の12:00時の影

資料6

資料6:Q1住宅刈和野の冬至の12:00時の影

■  Q1住宅秋田旭川の場合

資料3:庇が短く外付ブラインドや外付けシェードで窓の日射遮蔽をするタイプのQ1住宅秋田旭川

資料3:庇が短く外付ブラインドや外付けシェードで窓の日射遮蔽をするタイプのQ1住宅秋田旭川

性能仕様
・場所:秋田県秋田市 4地域(旧Ⅲ地域)U A値=0.75W/m2K(Q値=2.4W/m2K)
・性能:U A値=0.38W/m2K(Q値=1.07W/m2K)
・暖房負荷:22.4kWh/m2
・冷房負荷(冷房必須期間):外付ブラインド等有り= 7.54kWh/m2
・外付ブラインド等無し=11.49kWh/m2
・天井:桁上断熱グラスウールブローイング厚400mm
・壁:高性能24Kグラスウール200mm(付加断熱100mm+充填断熱100mm)
・基礎:基礎立上り部分は断熱防蟻EPS厚60mm、底盤下部分は同厚60mm
・窓:南側は木製サッシ高透過ペアガラス、他は木製サッシArLow-Eトリプルガラス
・南東・南西部分は外付ブラインドかシェードの設置
・換気:熱交換換気システム

敷地一杯に建物が建ち、落雪空間を確保するために庇を短くしているので庇では窓の日射遮蔽が出来ない。また庇が南北方向はほぼ45度振れているので、低高度の朝日や夕日が窓を直撃する。こうした場合の南東と南西の窓の日射遮蔽は外付ブラインドや外付シェードが有効である。

その結果はDD27℃の冷房負荷(冷房必須期間):7.54kWh/m2(1260.3kWh/m2)と極めて少ない。冷房費は一夏で8,000円程度である。この場合も家庭生活の実際では通風等で多少の暑さや時間は我慢をするので冷房は必要ない。

■  外付ブラインドの有効性

アトリエの窓の外付ブラインドと日射遮蔽ガラス等の有効性を日射強度計測器で計って見た(資料7・8)。

資料7

資料7:日射強度計測の様子

資料8:計測機

資料8:各種の計測機

結果が資料9である。
外付ブラインドとガラスが無い場合の0.40%に減ずるので非常に効果が大きい。

資料9:計測結果(クリックすると別ウィンドウで大きな表を見ることができます。)

資料9:計測結果(クリックすると別ウィンドウで大きな表を見ることができます。)

また、外付ブラインドが無い場合の窓の日射遮熱ガラスの室内側表面温度は約34.1℃であり、外付ブラインドがある場合の表面温度は約31.3℃である。南面の外壁の室内側表面温度は30.7℃なので窓からの輻射との温度差は0.6℃しかなく極めて少なく快適である。

南面で外付ブラインドが無いペアガラスの日射強度は453W/m2Kなのだが外付ブラインドで日射遮蔽を行うと日射強度が14.0W/m2Kまで少なくなり、差は439W/m2Kになる。巾1間のテラス戸は約3.5m2のガラス面があるので、1箇所当たりのテラス戸の日射強度の差が約1500W/m2Kになる。これが2箇所あると3,000W/m2Kの日射強度が室内に入る。これを0にするには木造の12帖のエアコン並みの冷房能力が必要になり、夏を涼しくするに如何に外付ブラインドが有効なのかが知れる。

私のアトリエはQ値が1.5kWh/m2でQ1住宅ほどの性能は無いが、写真のように南面に外付ブラインドを設置し12畳用のエアコン1台で41.5坪の空間を涼しくしている。

130828nisikata西方里見(にしかた さとみ)

1951年秋田県能代市生まれ。1975年室蘭工業大学工学部建築工学科卒業後、青野環境設計研究所を経て、1983年西方設計工房開設。
2004年設計チーム木(協)代表理事。
2013年 建築知識700号記念「日本の住宅を変えた50人+α」に選定。
著書は「最高の断熱・エコ住宅をつくる方法」「「外断熱」が危ない」「プロとして恥をかかないためのゼロエネルギーのつくり方」等がある。

◇能代からの便り バックナンバー
Vol.1 東北日本海側北部の夏をすごす
Vol.2 東北日本海側北部の冬をすごす