今年も暑い夏がはじまりましたね!
NASAの気象学者ギャビン・シュミット博士は5月14日、「4月の観測結果からすると、99%の確率で2016年は観測史上最高になる」とTwitterで指摘したそうですが、どうなるでしょうか。
今年の沖縄(那覇)は、7月中旬の時点で、真夏日は44日平均気温が30度以上の日は14日、最低気温が25℃以上だった日は、49日になります。でも、まだ猛暑日にはなったことありません。平均気温は高いけど、実際日影ならば立っていられない暑さではなく、汗が風にあたり心地よい空間になります。
日本列島の猛暑日を記録したニュースを見るたびに、沖縄は、案外涼しい方になってしまうかもしれませんね。
さて、暑い夏の日、高断熱の家はどうなっているでしょうか。エアコンをつければ、きっと少ない電力で効果を発揮して快適かもしれません。
では、エアコンをつけなかったらどうでしょうか。エアコンありきの生活になってしまうのではないかと心配しております。
沖縄県の生活所得は低く、その割に電気代は決して安くないので、なるべくエアコンをつけない生活をしようと心がけている家庭も少なくないと思います。
本来エアコンや暖房がなくても暮らしていける生活が、エアコンありきの生活になるというのは、環境的にはどうなのだろうと考えてしまいます。
沖縄では、高断熱だけど大きな開口があって熱の排出がしやすく風を取り込みやすい家、それが理想でしょうか。
「エアコンをつけたいときはすぐ効いて、窓を開けて風を通せば、すぐ熱を排出する。」
一見簡単そうに見えることですが、実際は、壁厚を薄くして熱容量を減らしたいけど、断熱するためには厚くする必要があります。
また、大きな開口から効率よく通風をもたらしたいけど、閉めたときに窓自体を高性能の断熱遮熱性を備えさせるというのは難しい事なのです。
というのも、沖縄県ではRC造が主体である以上、サッシは打設後測定してオリジナル発注するシステムなので、ただでさえ開口部には多額なコストがかかります。それに加えてガラスも、別発注して県外の工場で生産させて、となると、一般家庭には購入は大変難しい状況となります。
そんな沖縄では、やはり断熱よりも遮熱に力を入れる事が重要だとこれまでも書いてきましたが、今回はある遮熱材料のご紹介をしたいと思います。
高性能遮熱ブロック「サンガード・ホワイト」(伊是名ブロック工業)です。
コンクリート製の遮熱ブロックの表層部分に、炭酸カルシウムペレットとホワイトセメントに酸化チタンを混合し、約10mmの厚さで圧着した製品です。
ブロック表面の色が艶消しの淡色ホワイトなので、表面もコンクリート面に比べ熱くならず、光沢が少ないため、まぶしさも抑えられています。また、曲げ強度が強く、耐候性に優れているため、ブロック表面の経年劣化による遮熱性能の低下が抑えられます。
面白いと思うことは、ブロックの表面に塗布している炭酸カルシウムペレットです。
沖縄の中南部は、サンゴ礁のはたらきで形成された琉球石灰層からなるため、その河川や地下水では、カルシウム成分が増え、硬度の高い水となります。
いくつかの浄水場では、硬度低減化施設を導入し、カルシウムを取り除いています。その副産物を利用しているのです。
この遮熱ブロックは、当法人が設計協力をした宮古島エコハウスの市街地型で使用し、芝生の上ですら暑くて歩けないのに、素足で歩いてもひんやり冷たいコンクリートブロックに驚きを隠せませんでした。
この遮熱ブロックは、敷いたあとの中の空気層の動きがないと、そこで蓄熱してしまうのではないかと議論をされたりもしました。(現在その通気について色々な方法で実験中です。詳しくは、(株)伊是名ブロック工業のブログをご覧ください。
(遮熱ブロックの可能性:http://izenabc.ti-da.net/)
遮熱ブロックA:50mmの断熱材と平板ブロックの上に遮熱ブロックを施工
遮熱ブロックB:そのまま設置(7年経過)
遮熱ブロックC:ブロックとブロックの間隔をあけてブロック内の通風を期待。
結果は以下の通り。
またブロックを敷くということで、既存住宅には構造耐力上設置は難しいのではないかとの指摘もあります。
ただ私は個人的に、沖縄の珊瑚が暑さから救ってくれることに大変期待を抱いています。
以上 沖縄からの便りをお送りしました。
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「沖縄からの便り」特派員
松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
1977年沖縄県那覇市生まれ。2000年武蔵工業大学工学部建築学科卒業。卒業後、沖縄県内設計事務所および東京都内の設計事務所、デベロッパー勤務。2010年より特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事に就任。現在特定非営利活動法人蒸暑地域住まいの研究会理事長。
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